前回、第7回 「大会で勝つためのチューニング (その1)」からのつづき。

ケバを落とし新しい滑走面を露出させるサンディング

サンディングマシンにより滑走面を研磨しているところ
▲サンディングマシンにより滑走面を研磨しているところ

サンディングとは、幅の広いベルト状の紙ヤスリを仕込んだましんで滑走面を削ることにより、滑走面のケバや、細かい傷をさらうチューンナップのこと。新しい滑走面を露出させることで滑走性能を高めたり、滑走面の歪みを取ってフラットだしするという意味をもっている。

とはいえキチンとした滑走面のフラットだしはストラクチャーマシンでおこなうのが基本で、サンディングマシンではある程度の精度が限界。ショップ等にお願いする際は、そこを確認してからにしよう。

基本的に、滑走面に酸化したケバが出て滑りが悪くなった場合の対処法がサンディングだが、チューンナップの行程全体からみれば、途中の作業ともいえる。サンディングで表面を削り、その後にストラクチャーマシンなどで仕上げ行程へ移っていくのが手順。

雪質に合ったストラクチャーを入れる

ストーングラインディングによりストラクチャーを入れているところ
▲ストーングラインディングによりストラクチャーを入れているところ

スノーボードが雪面を滑る際に起こる摩擦によって、溶けた雪からは水がしみ出す。特に春先の水気の多い雪では、大量の水が滑走面と雪面との間に発生する。そこで滑走面に水路となる溝を施すことで、その水滴をスムースに滑走面のサイドへと押し流し、水膜で滑走面と雪面が吸い付くのを防止するのがストラクチャーの原理。

それでは、どんな雪でもストラクチャーが必要かというと、それは間違い。例えば、極寒地に降るパウダーなどでは、摩擦によって水滴が生じたとしても、それはごく微量。そのような寒冷地の乾燥雪の結晶は滑走面に刺さることから、ストラクチャーの溝はかえって抵抗となってしまう。

一般的に言うと、春先などの水気の多い雪では、溝の深いストラクチャーが効果的とされ、反対にミッドシーズンの乾いたパウダースノーなどでは、溝の浅い、細かいストラクチャーが合うとされる。また、一言にストラクチャーと言っても、深さやパターンは無数にある。

そのうえで大切なのは、雪質、雪温を考えたストラクチャーを施すこと。厳密に言えば、ひとつのパターンのストラクチャーで全ての雪に対応するのは無理がある。競技会等でのパフォーマンスを求めるなら、開催時期や会場の雪質を想定して、その度ごとに入れ直すのが理想。

滑走面のフラットだし

ストラクチャーを入れることによるもうひとつの利点は、マシンで加工するする同じ過程で、滑走面のフラットだしができるということ。円筒形の砥石に規則的に刻まれたダイヤモンドによってストラクチャーは刻まれるが、この砥石で研磨する際に、滑走面はおのずとフラットに仕上げられる訳だ。

自分のボードがフラットかどうかは、30cm定規を滑走面のエッジからエッジにかけてわたしてみればチェックできる。極端に真ん中付近が凹んでいたり、反対に盛り上がっていたりするのは問題だ。また、各部をチューンするにも、滑走面がフラットでなければ、何を基準に乗り心地を突き詰めていったらいいのか分からないだろう。

特にエッジの角度づけは、滑走面がフラットでなければ正確な作業ができない。ゆえに、計測してみて滑走面がかなり歪んでいるような場合には、ショップ等にフラットだし兼ストラクチャー加工を依頼することを勧める。

ただし、既にサンディングし過ぎて滑走面のP-texが薄くなったような板や、滑走面のわん曲があまりにひどいものは不可能な場合もある。

zu04-1.jpg

エッジだけが接し中央部が浮くコンケイブ。エッジの効きはいいが、コンケイブが強すぎるとターンが難しくなる

zu04-2.jpg

中央部が突出して雪面と接するコンベックス。回転性はいいが、強すぎるとエッジングが難しくなる

zu04-3.jpg

回転性とエッジングのバランスを考えて、基本となるフラットな滑走面。チューンの基準となるニュートラルを定めるうえでも、滑走面はフラットが理想

参考/「クリプトン」の各種チューンナップメニューと価格

●フルチューニング

傷や酸化等で劣化した滑走面を削り、蘇らせる。エッジの錆を取り除き、錆止め&ワックスがけ/¥9,000

●ストーンフィニッシュ・フルチューン

ストーンマシンによるストラクチャー加工+上記のフルチューン行程/¥12,000

●ハイレベルチューン

ストーンフィニッシュフルチューン+エッジの角度調整。主に協議対象のチューン/¥15,000

●サンディング

ソールクリーニング+ベルトサンディング/¥4,000

●ストーンサンディング(フラット出しも含む)

ストーンストラクチャーサンディング/¥6,000

●エッジビベリング

ベース面とサイド面のエッジ調整/¥8,000

●ワクシング

ベースワックス+滑走ワックス/¥3,000

大会当日のテクニック

ワックスの保ちを計算する

ワックスというのは、せっかく塗り込んでも滑れば滑るほどなくなっていく。競技会当日の本番前には、ウォームアップのためのフリーランや公開練習も当然あり、その辺を考えないでガンガン滑ってしまうと、本番でワックスぎれになってしまう。

要するに、本番直前にワックスの効果がもっとも現れるようにするのがポイント。ケースにもよるが、具体的にはワックスのスクレービングは公開練習までは軽く剥がすまでにとどめ、公開練習の最後の1本目の直前ぐらいに完璧に剥がすのがいいだろう。

スタートワックスなどの本番用ワックスを施すなら、この時に同時にやるといい。

どこでいちばんスピードが欲しいのか?

たとえばボーダークロスでの場合、そのコース全体を見渡してイメージしてみると、自分がどこでいちばんスピードが欲しいのかが見えてくるはず。通常、急なところはどの板も走るが、緩やかなところは失速しがち。

そこで板を走らせたいと思うのなら、平たんなセクションの雪にあったスタートワックスを選ぶことがポイントだ。

ハーフパイプで言えば、フロントとバックサイドの壁で、コンディションがまったく異なるような場合も珍しくない。かたや陽が当たってシャバシャバだが、かたや日陰でカチコチというハーフパイプに手を焼いた読者も多いと思う。

こんな場合も自分のルーティンを思い描けば、どっちの壁でどっちのエッジや滑走面をだいたい使うか、分かると思う。例えば滑走面を両サイドに分けて別々のワックスを塗るなど、イメージしたルーティンに合わせたワクシングをするのが戦略のひとつだ。

スタートワックスなどの本番用ワックスを施すなら、この時に同時にやるといい。

切り札となるスタートワックス

スタートワックスとは、その雪において、出だしの初速がもっとも得られるワックスのこと。初速を得ることに全て費やされるスタートワックスは、ハーフパイプでいうなら1本滑りきらないうちに使い果たしてしまう性格のものだ。

使用するタイミングの例としては、公開練習の最後の1本の直前。最終的にスクレービング、ブラッシングまで全て完了した滑走面にスタートワックスを施し、公開練習の最後の1本で、ワックスの効果をチェックするとともに、加速を体で覚える。その後、本番に備えてのワクシングに入るのが一般的だ。

スタートワックスとしてよく使われるフッ素含有率の高いパウダーやペーストワックスは、非常に高価。しかしその効果は確実なものがあり、フッ素パウダーなどは「魔法の粉」と呼ばれたりする。限られたアプローチでファーストウォールに入らなければならないハーフパイプはもちろん、レース展開に有利なホールショットを序盤で奪うボーダークロスなどでも効果が期待できる。

以下、スタートワックスとしてポピュラーなパウダータイプを例に挙げ、その使い方を見ていこう。

DO IT YOURSELF! パウダーワックスの使い方

マツモトワックス

マツモトワックス/Start Wax
100%フッ素パウダーのスタートワックス。20〜0℃までの温度帯に対応。これ以下の温度では、Start Wax -を使う。

行程(1)

PHOTO

滑走ワックスを完全に剥がし、ブラッシングまで終了した後にパウダーを振りかける。スタートワックスを少しでももたせたいなら、パウダーを振る前にペーストワックスで下地をつくるのが効果的

行程(2)

PHOTO

付属のフェルトなどがある場合には、それを使って滑走面にまんべんなく延ばしていく

行程(3)

PHOTO

滑走面全体に延ばしたら、コルクを使ってパウダーを滑走面に擦り付けていく

行程(4)

PHOTO

次に、馬毛ブラシでごく軽くブラッシング

行程(5)

PHOTO

最後に付属のフィニッシング・クロス等で、軽く拭き上げる。終わってみて表面がツルっとした状態ならOK。効果の持続は1本の滑走で消えるので、ヒートごとにこの作業を繰り返す

行程(6)

PHOTO

フィニッシュした滑走面に水を垂らしてみると、水滴を球状にはじくのが見て取れる

ブラッシングの意外なる効用

ハーフパイプやボーダークロスなど、あらゆる競技に仕様されているライン用のカラースプレー。しかしこの成分が滑走面に付着すると、抵抗の原因となる。

ゆえにラインマーキングがあちこちにあるようなコースを走ったときは、そのつどブラッシングを丹念にかけ、取りきれない分はキッチンペーパーなどで拭くようにしよう。これだけでも、滑走性能に違いが出る。