ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

不正誘致で何かと話題のIOC(国際オリンピック委員会)やけど、会議でドーピングに関して細かい取り決めが見直され、ローザンヌ宣言なるもんが採択されたそうだ。

ドーピング検査と言えば長野オリンピックのスノーボードアルペン競技でも大麻成分が検出されたとか言って、もめとったなぁと思いだしたので今回のテーマは麻薬です。

「コカインとマリファナ(大麻)をパンツの中に入れていたんだな?」

机と椅子の他は小さな窓が一つきりしかない殺風景な部屋。一人の男が取り調べを受けている。

「なんでパンツの中に隠したのか、今でも分からないんだ。今後は同様の事件を起こさないよう、パンツをはかないようにする」

被疑者である男は、じろりと取調官を一瞥した。貫禄とでも言うのだろうか?どちらが取り調べを受けているのかわからない雰囲気になっている。一瞬どきっとし、噴き出した汗を拭いながら、取調官の質問はつづく。

「多くの人に迷惑をかけているんだぞ」

「確かに今度のことでは多くの人に迷惑をかけたが、楽しんだ人も多いだろう。新聞、テレビ、雑誌は商売になった」

「今回は不法所持と密輸で立件と言うことになるが…」

「持っていたのは事実だ。申し訳ない。しかし密輸というのはちょっと…。飛行機の中で貰ったんだ」

「いったい誰に貰ったんだ?」

「ぐっふっふっ…、そうだなぁ、関西弁をしゃべってたような、中国人だったような気もするなぁ…」

取調官は思わず口走った。

「関西弁で中国人って…、それってゼンジー北京じゃないか(笑)」

ご存じ勝新の麻薬事件だ。普通ならこんな発言をすれば「不謹慎な!」と眉をひそめられる所やが、「まぁ勝新だししょうがないね」で済んでしまった所がすごかった。さらに第6回の公判では、「コカインは歯医者の麻酔で痺れたようで、効かないと思った。クラックはやった途端にもどした。シャブはシンガポールでやったが心臓が苦しくなって合わなかった。大麻を使うと食事がうまくなり、殴ってやろうと思う奴でも、目の前に来れば一杯やろうと言えるような気持ちになる」と、発言している。

事の是非はともかく(と言うより悪いけど)さすが勝新としか言いようがない。人徳と言うべきか?他の芸能人が事件を起こした後色あせていく事が多い中で、さらに存在感をアピールしプラス?に転化している。

さて、スノーボード界の勝新と言えばロス・レバグリアティやが、おぼえてるやろか?長野五輪のドーピング検査で大麻事件をおこして一度は金メダルを剥奪された彼や。あのときは結局1年以上前の4月からは吸ってないと主張したことと、検出された大麻がドーピング検査の禁止薬物と明記されていなかったことからCAS(スポーツ調停裁判所)の裁定によりメダル復活となった(注1)。一転勝訴となったわけやが、最初に剥奪が決まったIOCの理事会でも実は、剥奪支持が3,反対2、棄権2と言うようにだいぶ意見が割れていたそうや。

というのも大麻に関しては各国でその扱いが違っていて、日本のように麻薬の一種として厳しく規制している国もあれば、アメリカの幾つかの州やオランダ、デンマーク、スペイン等のように販売目的に多量に持っている事を除いて、大麻の使用を解禁している国もあるからや。またインドも規制が無くて、先日行った友人はなんと空港の免税店のとなりで売っているのを見たとも言っていた(注2)。

この事件を起こしたのが日本の芸能人やスポーツ選手ならマスコミが飛びついて糾弾するところなんやろうが、このときは世論もそんなには騒がなかったように記憶している。警察の調べで国内では吸っていなかった事がわかった事もあるが、カナダのしかもスノーボードとくれば、「別にやってんでしょ」みたいな感じもあったのでは無いやろうか(注3)。

しかし今にして思えばあのとき、なぜ国によって見解が違うのかとか、どんな議論がなされているのかなんかを、もっとマスコミが取り上げてもよかったのではなかったか。

たとえば現在はどういった議論がされているか見てみると、まず「大麻は麻薬。絶対やったらあかん」派の人の意見は、「煙に含まれるタール等により気管支や肺が傷む。食欲が増進する。成分がまだ十分に分析されていないので身体に悪い成分があるかもしれない」と言うことだ。また他の犯罪を誘発したり、精神的に依存症になるケースもある。さらに大麻を取り締まらなければより強力なコカインなんかに手を染めるようになるので、たとえ他の麻薬に比べて害が少ないとしても、エスカレートする前にそこで取り締まって行くべきだと言う。

反対に「大麻は麻薬とは区別すべきや」派は、大麻はキマっている時も品のいい酔っぱらい程度でハッピーになるだけなので効果としてはアルコールと同じ。コカインやヘロイン、覚醒剤と同列に扱うのはおかしいとの意見だ。そう言えば麻薬の大家である勝新も食事がうまくなり寛容な気分になるぐらいと言っている。

また数年前に行われたアメリカ政府の諮問機関の依頼による調査でも、大麻には中毒性は無く、タールは多いもののニコチンも無いとの結論が出た。これならタバコや酒のほうがよっぽど悪そうだ。

どうも、話を総合すると、大麻は他のコカインやヘロイン、覚醒剤を使用した場合の害に比べていまいちはっきり悪いと言い切れてない印象を持った。

水際論についても確かに勝新のように色々なものに手を出す人もいることは事実やが、けれどもタバコでもマイルドセブンエキストラライトを吸っていた人がやがてマイルドセブンスーパーライトになり、マイルドセブンライトになりマイルドセブンになり最終的には両切りのピースになるとか言った話は聞いたことがない。コカインに手を出させないために大麻を禁ずるという理論もちょっと強引やと思う。

こういった議論はこれからもっとして欲しいと思う。まあ、しかし今の日本では禁止されているので、やる奴はアホやろ。犯罪の費用対効果の点でも、どうせ踏むならもっとでかい山のほうがコストパフォーマンスがええ。法律を犯してまでやっても品のいい酔っぱらい程度なら、じゃぶじゃぶ酒を飲んで品の悪いいつもの酔っぱらいほうがええと思うがどうやろか?

注1
ちなみにその後、カナダで行われた別の大会でも検査が行われたが、長野の時以上に大麻成分が出たため、「お前は常習者ちゃうんか?」ということになったらしい。でも結局うやむやに終わっているようだ。

注2
「所変われば品変わる」とよく言うが、私はドイツの某国際空港で免税店の並びで大人のオモチャ屋を発見した。誰が使うんだろうと思うような60センチもある巨大ディルドゥ(模造ポコチン)とかSEXドラッグやエロ本を売っていた。フランスやイタリア、スイスなど様々な国の人に聞いた話を総合するとドイツ人がスケベ度ではヨーロッパで一番らしい。ただしむっつりスケベ系との事で、フランスは変態系、イギリスが浮気とか3P系、イタリアはナンパ系らしい。

注3
失礼な話だがスノーボーダーやサーファーには大麻とかマジックマッシュルームとかそう言うのが似合うと見られているようや。大麻とかの気持ちよくなる成分はTHCと呼ばれ、動物では唯一ガマガエルの毒線から出るらしい。刺身で食べると飛んでしまうんやろうか?

GTM(SNOWing誌99'04月号)掲載