ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

最近、日本のトップクラスのライダー達がハゲの脅威にさらされている。

脱色やパーマで普段から髪の毛を痛めているのも一因だが、何よりも高度の高い山に何日も泊まり込むために通常の数倍の放射線を浴びているのが最大の原因らしい。旅客機のパイロットにハゲが多いのと同じ理由だ。

無作為に抽出した男性ライダー30人にアンケートを採ったところ、実にその80%の人が、「以前より生え際が後退した」、「頭皮がなんか固くなってきた」、「髪の毛が以前より細い」、「抜け毛が多くなった」などの症状に悩んでいる事がわかった。ひどい例になると、たとえばS君なんかは抜け毛を防ぐ為に髪の毛を短く坊主にしたら、次の日枕にその短い3ミリぐらいの髪の毛がびっちり抜けて枕に刺さっていたそうだ。

ま、最近はロゲインを初めとして期待できる毛はえ薬もあるが、これも愛用しているライダーの証言では、髪の毛はいっこうに生えてこないが、指のつめの伸びる早さは異常に早くなったとの話もあるから、まだ完璧に効くとは言えないだろう。やはりかくなる上はヅラしかないのだが、実はここだけの話だけれども、有名プロスノーボーダーの中にも確かにヅラはいる。

ところで宮本は小さい頃からオヤジの膝の上で一緒にテレビを見ながら、
「ヨシヒコ、見てみぃ、この俳優は(カツラを)かぶっとるでぇ」
「へぇー。お父ちゃんわかるのん」
「当たり前や、ほらここの耳の後ろんとこ見てみい・・」などとヅラの判別については英才教育を受けてきたのでほぼ100%見破る自信がある。

しかしその某プロの場合はそんなに微妙な判別を要するものでは無かった。聞き込み調査によれば「○段階増毛法」という類の、自然に増やして行くタイプだったらしいが、何せたまにしか逢わないんだから自然もくそもない、逢ったらいきなりボーン!である。どう見たってバレバレなんだけれども、この時は本人は自然だと思っていたらしく涼しい顔をしていた。

でも次に会って滑りに行った時は、やけにまわりの反応を気にしていて、どこかの女の子が何か話をして、笑いながら偶然こちらを見たときに突然怒り始めて、「俺を見て笑った!」と言ったり、また聞いた話によれば、キャンプで一緒だった女性プロのNちゃんが寝癖を見つけて、「髪の毛ハネてるよ」と教えてあげたら「そんなこと大きい声でいうな!わかってる!」とえらい剣幕で怒り出したそうだ。そのときNちゃんは何で大きな声を出しているんだろうと思っていたが、後でどうやら「ハネ」と「ハゲ」を聞き間違えたのではと言うことに気がついたと言っていた。それまでは、ただの気のいい禿げだったのに、最近はまるで逃亡者のように何かに怯えるような感じで、いつもビクビクしているような印象だ。結局ヅラにして失ったものも大きいと言うことか。

まあ、自分のことを棚に上げてここまで書いてきたが、宮本もすでに禿げにリーチがかかっている。もともと癖っ毛で小学校の頃から「おまえ、将来禿げるわ!」などと言われて来たので、ここまで保てば本望ではあるが、でも「ちょっと見て、ほら俺禿げてるでしょ」などと宣言できるほど人間が出来ていないので、そろそろ人生最大の選択の時期に来ている。

つまり一つは前出の某プロのようにズラをかぶって偽りの人生を歩むか。この場合もさらに中野浩一や衣笠祥雄のように人に言われる前に公言してしまういわゆる確信犯と、神○川俊郎や神○正輝のようにあくまでシラをきり通して裏街道を歩むかに道が分かれる。そしてもう一つの方法は、ブルース・ウイルスや掛布雅之のように男らしく短くする方法だ。本当はこれが一番いいことはわかっているが、なかなか踏ん切りがつかないのも事実だ。人間とはかくも弱い生き物なのだ。事実、学生時代に「俺は、禿げてきたら絶対ユルブリンナーみたいに剃るんや」などと言っていた奴に限って、ずるずると分け目がサイドに偏ってきているのが多い。そうこうして気がついたときにはスダレ頭になってしまうというのが、世間一般のケースなんだろう。

なんにせよ、スノーボードをしていたらサイドから上げていた髪の毛が垂れておでこに張り付いたり、滑っていてヅラを飛ばしたりという無様な事だけはしたくないものだ。

お茶の間ボーディング(Transworld Snowboarding誌00'01月号)掲載