ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

スクープ!!今世紀最大の真実が発覚!1999/2000年のISFランキング1位の上島しのぶプロ(注1)と、同じPSAアジアに所属する韓国のトップレーサー キム・ドクヨン プロ(注2) 国も年齢も性別さえも違うはずのこの二人の間にまことしやかな噂が流れている。それは、上島しのぶプロとキム・ドクヨンプロが同一人物であるというものだ!!

事の発端は編集部に持ち込まれた韓国の雑誌やった。その雑誌には韓国で撮影されたと思われる上島プロのスノーボードの写真が掲載されていた。ところが写真のテロップにはキム ドクヨンと名前が書かれている。

「あれ、これどう見ても上島プロだよね」
「んー、でも名前が違うな。あ、これはキム・ドクヨンじゃねえか?」
「えー、ドクヨンって男やろ(笑)。間違えたなんて言うたら怒られるで」
「ははは、でもまんま上島さんだね。本当は二人は同一人物だったりして・・・」

はじめは「そんなバカなことあるわけ無いやん」などと言っていたSNOWING編集部であったが、「そう言えば上島プロとドクヨンプロが話したり、同じ場所にいたりしたのを見たことがないなぁ」という話や、「あるパーティでは、上島プロがトイレに行っているときにドクヨンプロが現れ、ドクヨンプロが居るときは決まって上島プロがいなくなっていた」という話も出てきて、笑って済ませられなくなってきた。

そして極めつけは1999/2000年のISF ASIAとPSA ASIAが制作したPRO SNOWBOARDERS FILEである。これの13ページと19ページに乗っている二人の顔写真を見比べてみると疑惑は確信に変わった。上島プロの顔にあご髭を書くとまんまドクヨンプロやないか!

裏付けを取るために我々は早速調査に乗り出した。そして上島ウォッチャーとして知られるあるスノーボード業界通から「あくまで噂だが・・・」としたうえで、以下のような話を聞き出した。

「私自身、本当は信じられないところもあるんですが、ドクヨンは実は上島の変装だと言うんです。上島はよく男子トイレから出てくるところを目撃されていますが、それも実は上島←→ドクヨンと変装するためだったらしいんです。あと上島はレギュラーなんですが、ドクヨンに変装するときはフォームの癖から正体がばれないようにあえてグーフィースタンスにしているそうです。一時期上島がスイッチスタンスにこだわって練習していたのも実はドクヨンに化けるためだと言われています」

また、上島プロが所属するチームのある女性スタッフからは、

「以前、偶然に上島さんのバッグの中を見ちゃったんですが、男物の下着やひげ剃りなんかが入ってました。彼氏のってわけでもなさそうだし、そのときは何となく上島さんってすごいなぁと思っただけでしたが・・・」という証言が得られた。

しかし、我々が驚いたのは、そういう聞き込みをしても誰一人として同一人物説を否定したり、冗談ですます人がいなかったことだ。彼女の周囲の人間は、証拠は無いが薄々は感づいていたような印象がある。

さらに取材をつづける我々の元に韓国から情報が飛び込んできた。韓国の有名ゲレンデMUJUに撮影に行っていた別の編集者が、ゲレンデのスタッフに聞いたものだか、MUJUといえばドクヨンプロのホームゲレンデと言われているところや。

「大会があった後に、同僚がロッカーを掃除してたら、ドクヨンさんの顔を形取ったシリコンゴム製の仮面や化粧道具が出てきたそうです。私も見せてもらいましたが、仮面はそれは精巧に出来ていましたよ。その仮面はどこにあるかって? その日の夜に黒ずくめの男が二人やって来て、どこかに持っていってしまったと言ってました。その同僚もそれっきり姿を見ないし、逆に何か知ってたら教えてくださいよ・・・」

我々はさらに詳しく内容確認をするように指示を出した。しかし不思議なことにその話をしてくれたスタッフも次の日にはいなくなっていて、ゲレンデの支配人や他のスタッフに聞いてもそんな社員はうちにはいないの一点張りやったという。

実は、この事がある少し前から我々の取材は壁にあたるというか、目に見えない圧力を感じはじめていた。最初はただの同一人物説の裏付けを取るだけであったのが、なにか大規模な国際的事件の匂いすら感じていた。

そして次に我々は韓国のスノーボード関係者との接触を試みたが、取材の趣旨を伝えると一様に態度を硬変させ、とうとうアポイントすら取れない状況となった。しかし諦めようかと思った矢先、韓国の広告代理店の元社員と名乗る男が重い口を開いてくれた。

彼は首のまわりが垢で薄汚れた、よれよれスーツを着て、酒臭い息を吐きながら現れた。1ヶ月ほど前に理由もなく突然会社を解雇され、以来ほかの仕事に就こうとしてもなんらかの圧力がかかって雇ってもらえないと語った。1ヶ月前と言えばちょうど我々の調査が本格化したころや。

「事の発端は、韓国で今ひとつ盛り上がらないスノーボードの人気を盛り上げようと、韓国のスノーボード関係者と、広告代理店が計画したものでスミダ。今はそれ以上言えない・・・。えっ、JSBAとの金銭的なやりとり?それは言えない。いや・・知らない。本当に知らない。そんなこと言えないハセヨ。この件には国家安全企画部(注3)も絡んでいる。言ったら消されちゃうスミダ・・・。」

彼は取材の礼金をひったくるようにポケットにねじ込むと、挨拶も無しに南大門(注4)の雑踏の中へと消えていった。

なんとお膝元である日本のJSBA(注5)の黒い疑惑に突き当たってしまった。

そしてここに至って、残念ながらこれ以上の取材は不可能となった。SNOWing山田編集長から突然取材の中止とすべての資料を破棄するように 命令が来たのや。実際は編集長のはるか上からの圧力らしい。

一緒に取材を進めていた岡崎さんも一昨日から連絡が取れなくなっている。残念だがこれ以上の取材は断念せざるをえない。

しかし私は、これらの状況証拠から上島しのぶプロがキム・ドクヨンプロであると断言する。


注1
昨年度のISFアジアの女性アルペン部門で第1位。押しも押されもせぬ国内トップライダーである。その男勝りのライディングから「付いているのでは?」との噂も絶えない。スポンサー シムス、ムラサキ、ライケル他多数。

注2
Kim Deck Yong。今期プロ2年目をむかえる韓国を代表する選手。プロフィールなど多くは謎に包まれている。スポンサー ロシニュール。

注3
韓国の情報機関。元韓国中央情報部KCIAと呼ばれ、昭和四十八年に東京で起きた現大統領である金大中氏拉致(らち)事件にも関与していたとされる。

注4
韓国ソウルにある市場。あやしいパチもんのローレックスやヴィトンも買える。いろいろな物が安く、たとえば眼鏡なんかも度つきのものが500円から3000円ぐらいでその場でつくってもらえる。

注5
言わずと知れた日本スノーボード協会。会員数2万6千人を越えさらに増えている。余談だが、メーカーがJSBAの公式用品の認定を受けるには入会金や年会費の他に100万円から500万円の高額の寄付金が必要となるのだ。

GTM(SNOWing誌 掲載時期不明)