ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

「運のつき(アンラッキー)」
さて、巷では新製品のスノーボードが並び、そろそろ気分も「滑り」モードに入ってきたけど、スノーボード用品のメーカーではすでに来年の新製品開発が最終段階に入ったり、再来年の商品開発が始まったりしている。そこでミヤモトも開発ミーティングのためアメリカ、韓国、中国と立て続けに訪問してきた訳だが・・・。

最近なにかとついていない。

先月サンディエゴで行われたASRと言うアクションスポーツのショーに行った時なんかは、
ホテルがとれなくてメキシコのティファナ(注1)に泊まったんやけど、メキシコの警官に逮捕されて危うく監獄行きになるところやった。

メキシコは道路や公共の場所での飲酒は禁止されているんやが、リカーショップのオヤジに聞いてみたら「セニョール、心配ないよ。袋にいれてラベルを隠したら大丈夫さ!」と陽気な声で言うので、紙袋にビールを入れてチビチビやっていた。

そして目抜き通りのレボルューションストリートを歩きながら、お土産屋で堂々と売られているローレックスや、
オークレーの偽物ウォッチ(注2)を見ていたら、運悪く警官がやってきて飲んでいるのがバレてしまったんである。

当初事態を甘くみて、「悪かった、知らなかった」と言って立ち去ろうとしたらポリスステーションに連れてゆくと言う。「そんなもの、偽もんのローレックス売るほうが問題やんけ」などと言ってゴネていたら無線で応援を呼ばれてしまった。現れた二人はなんと防弾チョッキに小銃を下げた完全武装や。3人に取り囲まれて「おまえは監獄に入らなければならない」とか言っている。

メキシコの監獄・・・聞くだけでディープである。まさかフィリピンで捕まった何とかさんの様にマリファナをポケットに入れられて、犯罪をでっち上げられたりするんやろうか? その場合何年ぐらいくらいこむんやろ? 出てくる頃にはスペイン語が少しはできるようになってるやろか? ホモに襲われたらどうしよう?などの思いが頭を駆けめぐる。

まあ、結果は賄賂を払って許してもらったんやが(注3)、結局1ドルのビールが41ドルもかかってしまった。

さて、何とかメキシコを脱出したが、帰国してすぐにまたやらかしてしまった。

カムイ龍ヶ崎の屋内スロープに滑りに行ったら、最後の最後に回しそこねてテーブルトップの角っこに腰をぶつけてしまったのである。あんまり痛いので、次の日医者に行ったら腰椎を2ヶ所骨折していた。全治3ヶ月・・・トホホ。幸い手術する必要はなかったけど、これでは自慢の腰も当分使えそうにない。
とりあえず酒は飲めそうなので、気分転換に飲みに行こうと思って知りあいのおネエちゃんに電話をかけたが、誰もつきあってくれない。おネエちゃん達がミヤモトに何を求めていたかよーくわかった。腰の使えない男は不要っちゅうわけである。

しょうがないので飲みに行くのを諦めて、スポーツジムに行った。腰以外の筋肉の衰えを防ごうという作戦だったんやが、結局無理しすぎてますます腰が痛くなってしまった。人間ついてない時にあせるとロクなことはない。

そうこうして一週間がすぎた頃、突然韓国のプサンと中国のチンタオに出張に行くことになってしまった。まだ骨はくっついていなかったが、やむおえない。痛む腰を引きずりながら出かけた。そしてそこでもまた不幸が襲いかかろうとはもちろん予想もしていなかった。

プサンではミーティングの後で、一人でロッテホテル近くの繁華街や国際マーケット(注4)の方まで足を伸ばして夜の町を散策した。腰の痛みよりも好奇心のほうがどうしても優先してしまう。悲しい性である。

若者が集まる通りがあって、ちょうど渋谷センター街のようなところやったが、金髪ドレッドの若者(注5)がゲーセンにたむろしているのは日本と大差ない。
ひと通り見たあとで、英語も日本語もまったく通じない安食堂で、恐る恐るハングル文字を指差して適当に注文して、近所のオヤジとオリンピックの野球を見ながら盛りあがった。このオヤジは野球通で英語を少し話せて、日本のプロ野球選手もよく知っていた。ただ○○○や○○など有名選手はみんなコリアン・ジャパニーズじゃないかと言っていたのには笑った。運動能力は韓民族の方が高いと言いたいらしい。まあしかし、気分よく楽しい時間をすごして何事もなく一日が過ぎ去るかにみえた。

が、やはり不運はつきまとう。ホテルの近くでアジュマ(おばさんの事)に呼びとめられるまま、屋台に入ってメッチュー(ビールの事)を飲んだんやが、なんせ片言の日本語しか話せないのでコミュニケーションがとれない。つまらないので、さっさと飲んでおあいそしたんやが、そのアジュマが銀杏を食えと執拗に勧める。要らないと言っても「私が食べたい」と言うのでめんどくさくなって、頼んだら4万ウォン(約4000円)も請求された。「ふざけんな、おまえが食いたいと言うから無理に頼んだのになんじゃそれは!」と言ったが、韓国語で何か言うばかりである。結局3万ウォンに値切ったが、後味が悪い。金額ではなくて何かまたしてもカモにされたのが悔しいかぎりである。

さてプサンからは中国のチンタオに渡った。ここには靴の工場がいくつかあって、あのナイキの工場もある。有名なブランドのスノーボードブーツで、ここで作られているものも多い。

ここでは韓国の会社の社長と一緒に来たので、夜は韓国風のカラオケボックスに連れてこられた。

韓国風というのは、まぁ韓国のカラオケボックスがすべてそうでは無いんやろうけど、一部の店は顔見せでホステスを選んで、その子をはべらせながら歌うのである。働いているのは21歳から25歳までの韓国系の中国人である。みんな若くて女優顔負けの美人や。

ミヤモトの横にいる子なんて浜崎あゆみに激似である。しかし残念な事に英語も日本語も話せないので、コミュニケーションがとれず目が逢うとひたすらフルーツをフォークに刺して口元にもってこられて閉口してしまった。間を持たせるための「恐怖のフルーツ食え」攻撃である。

また緊張の為か、少しツーンとした感じで場の雰囲気もよくない。韓国の社長に通訳してもらったら、「日本人はおとなしいのでつまらない」みたいな事を言っているという。ここで引き下がっては日本男児に恥である。靖国神社に眠る英霊に対しても申し訳がたたない。さっそく「人間ポンプ(金魚とか飲んでまた出すあれ)」、「人間花火(陰毛ファイアーとも言います)」、「試し割(おしりで割り箸とか折るやつ)」など日本伝統の宴会芸を披露した。おそらくこんなにも完成度の高い芸を間近でみるのは始めてだったんやろう。涙を流して喜んでいた。そしてその後は、すっかりうちとけていい感じである。

しかし、その後はこっちが驚かされる番やった。何やらアップビートな曲をかけたかと思うと、その子がいきなりスッポンポンになって、そしておもむろにテーブルに上がってビンビールを取り出し、胸からビールを流して股間でコップに受け止めて「さあ、飲め」とばかりに差し出すんである。さすがにちょっと飲むのは抵抗あるなーと思っていたら、同時にこぼれたビールがテーブルを流れてきて、ミヤモトのスーツがべちゃべちゃになってしまった。

「お前もべちゃべちゃにしたろか!」などとおやじギャグをかましている場合ではない。拭くには拭いたが最悪に気持ち悪い。

早くホテルに戻りたかったので「もう帰る」と言うと、「ミヤモトさん、彼女は連れてゆきますか?」みたいな事を聞かれた。よく聞いてみると、この手の店はいわゆるデートクラブみたいなもので、ホステスは約1万円ぐらいでホテルに来てくれるのだそうだ。浜崎あゆみクラスがなんと1万円!

風俗嫌いで知られるミヤモトではあるが、「あぁ・・このおネエちゃんとなら・・・」と、みだらな想像をしていた。やっと運が向いてきたかに見えたそのとき、いきなり腰に激痛が走った。「し、しまった!骨折してたんや!!」(注6

あぁ、神よ・・・やっぱり最近ついていない。

注1
サンディエゴとティファナは車で20分ぐらいと、かなり近い。ビザを用意しないでも72時間以内なら入国できるが、歩いて国境を越える時なんか入国のときにスタンプも押さなければパスポートを見もしないで、何時間入国しているか実際にはわからない。建物の脇の通路みたいなところを鉄の回転ドアを押して入るだけである。物価が安いので、アメリカから普通にショッピングに来るのだそうだ。

注2
韓国や台湾あたりでも偽物は売ってはいるが、ここまであけっぴろげに山積みされているのは見た事が無い。価格的には自動巻きで5000円ぐらいなので特に安いと言うことはなかった。

注3
押し問答していても、なかなかポリスステーションに連れて行く気配が無いので、「ははーん、これはひょっとして」と思って財布を出したら、「こら、こんなところで出すんじゃない」と言われ路地裏の売春宿みたいなところに連れてゆかれた。金を渡すと「こっちを振り向かず、まっすぐ通りを渡って行け」と言われた。まるで、ベタな映画のワンシーンである。やはり日本人と言うことで目を付けられていたのだと思う。

注4
国際マーケットは朝鮮戦争のときの物資補給の露天から発展したそうだ。各通りによって洋服だとか、食材、靴、家具など分かれている。雰囲気的には上野のアメ横を5倍ぐらいにした感じだ。

注5
韓国は日本以上に学歴社会なので、インテリっぽい風貌のほうが女の子にもてるらしい。だから度の入っていない伊達めがねをかけたりするのだそうだ。逆に茶髪、ロン毛、ピアスなどの男性の絶対数は少ない。また理由は不明だが、女の子同士が腕を組んで歩いているのをよく見かけた。香港もそうだったけれどもなんでやろ?

注6
この後、しかたが無いのでホテルに帰ってマッサージを呼んだ。その人に絵を書いてここの骨が折れていると言ったら、なんと右手の甲の小指と薬指の間と、人差し指と中指の間のツボを思いっきり押された。すると不思議な事に、それまで立つときが辛かったのにスッと立てて、おまけに腰の回転までできた。おそるべし中国3000年である。ちなみに中国はマッサージも安くて、足裏マッサージなんか、肩とかまでマッサージしてくれて最後は新品の靴下をもらって、1時間600円ぐらいである。

GTM(SNOWing誌 掲載時期不明)