ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

今回は“HEAVY SNOWker”の原稿を書き下ろしでどうぞ。

出張中で、京阪線という関西ローカルな電車のなかでしこしことキーを打っているんですが、向かいに座っている神田川俊郎によく似たのサラリーマンのおっちゃんが、気になって仕方ありません。

小さな手鏡でいっしょうけんめいヘアータイルをチェックして、左右、上下、一通り終わって鏡をポケットしまったかとおもうと、またすぐに取り出して入念にチェックをはじめています。

「そんなことしないでも、カツラってバレバレでっせ!」

と、ついぶっちゃけて声をかけたくなってしまいます(笑)。

この手の顔には、ハゲが多いんでしょうか? また、さらにそれをカツラでカバーしようとする体質を持ち合わせているんでしょうか・・・? なんてことが気になったので、今回は「ハゲ」の話をしたいと思います。

先のアテネオリンピックの中継で、取材のパスでは入っちゃいけないとこまで入ったとか、入らないとかで東スポに記事がでていたフリーアナウンサーの小倉智昭ですが、以前にも朝のワイドショーのオープニング時にカツラが落ちたというような内容(の画像)がネットに流れたということで東スポの一面を飾っていました。

自分もその画像を見たことがありますが、そこには奇しくも、痴漢行為で逮捕されたミラーマンこと経済評論家の植草元教授も元気な姿で登場していてダブルで笑えます。

欧米ではハゲの人は、「ちょっとヘアースタイルのバリエーションが減る」くらいの感覚で特に周りから笑われたりすることは無いと言われますが、どういう訳か日本においては残念なことに遠慮なく笑われて、場合によっては人間扱いしてもらえません。

以前、ビートたけしが本にも書いていましたが、笑いというのは突き詰めてゆくと弱者を笑うというのが根本です。その弱者というところが身体的なハンディであった場合、あからさまに出してしまうと嫌悪感を生んでしまい、笑いとしては成立しなくなってしまうんですが、なぜか不思議なことに、はげとデブと粗チン(包茎?)だけはおおっぴらに出して笑っていいことになっているようです。

笑うまで行かなくても、ちょっと話題にしただけでも差別だとか言われる日本社会において、こんな事がまかり通るのは誠に不思議としか言いようがありません。

たぶん、政府の高官が中心になって、「国がなんでも規制すると国民の不満や反感を煽ることになるので、ガス抜きの意味でこの三つはオッケーにしましょう」などと画策しているとしか思えません。

小泉さんとか、細川さん、橋本さんなどハゲていない総理のときはハゲを笑いものにする風潮が強くて、中曽根さん、福田さんのようにハゲが総理のときはその風潮が弱まることからも想像がつきます。

今後、何かの間違いで、大日本ハゲ連合だとか、憂国デブ道塾、粗チン研究会なんていう圧力団体ができて、街宣車でうるさく抗議でもしないとこの風潮がなくなることは無理だと思います。

そういえば、差別で思い出しましたが、ハリウッド映画なんかではトーキング・ブラックと言って、登場人物にアフリカ系アメリカ人(通称:黒人)のいい人役を必ず入れて、人種差別問題を扱う団体から攻撃されないようにしていると聞きます。

言われてみれば、リーサルウエポンにしろ、ロッキー3にしろ、ダイハードにしろ、そういった役どころに黒人が起用されていますし、ジムキャリーのブルース・オールマイティでは、黒人が神様役までやっていました。トロイのように史実があって配役が難しそうな映画以外は、トーキング・ブラックでない映画を探すほうが難しいようです。

日本でも、さっき言ったようなハゲの圧力団体ができれば、日本映画にも必ずハゲの役どころを使わなければならなくなるでしょう。

そうなると、竹中直人、杉浦直樹、西村雅彦、神○正○は引っ張りだこということになります。一時期の、「どの映画みてもサミュエル・L・ジャクソンが出てるよ」というのと同じようになるでしょう。

話をもどします。

そもそもハゲやカツラの話題を出すと言うのは、シニカルで自傷的な感じがします。なぜかというと、たいてい男は自分がいつハゲるかもしれないという潜在的な恐怖心を持っているからです。

ある日突然、非難される側に立たされるかもしれない・・・。

男同士で「将来ハゲたらどうする?」というような会話をすることはしばしばあります(その中にすでにハゲがいないことが前提)が、大概は「俺は薄くなってはげてきたら、きっぱり剃ってスキンヘッドにする」とか「短く刈る」という意見が多いようです。

中には、ホクロにはしっかりした無駄毛が生えやすいことに着目して、頭を日焼けさせて、シミやホクロをいっぱい作って、そこから増毛させるなどの作戦を立てたものもいますが、本人が、まだハゲていないため実証されていません。

そして当然、「へへへ、俺は絶対にヅラにするでー。それも高級で自然な奴を買う」とか、「柳生博とか、軍事評論家の江○なんとかとかみたいに横から髪の毛をもってくる」なんていう奴はまずいません。

例えるなら、サウナに行って、粗チンでもタオルで隠さずにどうどうと洗い場を闊歩するのがカッコいいと思うのと同じ感覚でしょうか(笑)。

しかし、栗本慎一朗(ヅラ)と枡添要一(ハゲ)のどっちが、どっちでもいいように、ハゲてない第三者から見れば100%どうでもいいことだと言えるのもまた事実です。

また余談になりますが、暴力団関係者に秘書給与を肩代わりさせていた松浪健四郎ですが、「潔さもスポーツマンシップなら、ネバーギブアップもまたスポーツマンシップ」などと言って、なかなか辞職せずに自慢のちょんまげを切って謝罪としていました。たしかに中世ならそれは出家を意味しますし、武士の魂を投げ出す勇気が要ったと思いますが、別にさっぱりしただけじゃないですか?

だいいちあのヘアースタイルは長髪を後ろで束ねているだけであって、ちょんまげとは違うものではないでしょうか。ちょんまげはちゃんと月代を剃って束ねた髪の毛を前に持ってきて「、」のかたちになったものを言います。あるいは月代は剃らないまでもお相撲さんのヘアースタイルをもってちょんまげというならわかりますが・・・。

たとえば以前にキムタクが同じようなヘアースタイルをしていたことがありましたが、誰もそのとき「キムタクのちょんまげ」とは呼んでいなかったはずです。

なぜ、あの人だけちょんまげなんでしょうか? まあ、いずれにせよハゲにはまねのできないことではあります。

このままだと、スノーボードの文字が一回も出てこないコラムになりそうなので、最後に知り合いの元プロスノーボーダーが就職したある会社の話。

その会社では、上司の影響で会議なんかでも、「じゃあデザインを“ずらー”っと並べてみて・・」とか、「人気の“薄い”のから“抜いてゆく”・・」とか、「“かぶっている”アイテムは削除して・・」などの単語はNGワードとなっていると言っていました。その地雷を踏むと、優秀な社員といえども左遷されるというのです。

じつに恐ろしいですが、ありそうな話であります。

HEAVY SNOWker(ハロルド・ミヤモトコラム集04'12月号)掲載