「水戸黄門」
先日TVをつけたらTBS系で、また「水戸黄門」が始まっておった。なんと足かけ30年、27回目を迎えたらしい。この30年間で歩いた距離は延べにすると地球を2周半もするということだ。鬼籍に入った出演者も多く(注1) 、最初から通して出演しているのは風車の矢七こと中谷一郎だけとか(注2) 。今回は最高視聴率43.7%も取ったことがあるこの国民的人気番組と、スノーボードについて話を進めたいと思う。「40歳を境にして、その上と下では価値観が大きく違う」という「40歳断層説」なるもんがある。そしてこの断層を作ったんが、実はテレビでは無いかと言われている。
家庭にテレビが普及してきたのがちょうど40年ぐらい前やそうで、つまり今の40歳未満はテレビ、それも民放の娯楽番組に脳味噌をやられてしまった世代らしい(注3) 。
今の社会が軽薄で、だれでも簡単にエッチもできるし、凶悪犯罪も横行するし、シリアスなこともすぐ茶化して笑いの対象にしてしまうのもすべてテレビの悪影響と言うわけだ。
しかしテレビはそんな悪影響ばかりかというと、そんなことはない。その一例が今回の表題にもなっている「水戸黄門」に代表される時代劇。現代の日本人は時代劇を通じて勧善懲悪の正義感や、階級社会の構造、歴史への興味や、葵の御紋のありがたさを知る。
そんな訳で恐らく10年ぶりぐらいに見た「水戸黄門」やったが、いつの頃からか知らないが、画像がやけに鮮明になっていて逆に嘘臭くなっている点が気に掛かった。以前は画面全体に紗がかかったようになっていて、臨場感があったのだが…。好みの問題かも知れないが、なんかNHKの大河ドラマみたいになっていて、感情移入出来なかった。
ただ、ストーリーや展開はほとんど同じで、その点では安心して見れた。
さて、ここからが、このGTMコラムの難しいところだが、なんとかスノーボードと結びつけなければならない。そこで、「もし、水戸黄門にスノーボードが登場するとすればこんな感じだ」というのを、時間軸に沿ってシュミレーションしてみたい。
例によって諸国漫遊の旅に出た越後の縮緬問屋の隠居「光右衛門」事、水戸の御老公(佐野浅夫)。今回のお題は「助の恋もからまわり・ご禁制の武器密売にご老公の怒りが爆発!・飯田」
8時04分。宿場に近い峠を歩くご一行。いつものように八兵衛がお腹を空かしている。
「ご隠居、飯田といえば五平餅。早く宿を見つけて、五平餅を食べに行きましょう」
「おい八!お前はいつも食い物の事ばかり。ほかの話はできないのか」
格さん(伊吹五郎)にたしなめられたりしながら、わいわいと旅をつづける。
さて、そうこうしているうちに宿場に着いた黄門一行。
8時10分。町はずれの採石場跡地に秘密工場がある。ここでは、かつて武田信玄が上杉領に攻め入るために開発し、その後、秀吉によって「今後、いっさい作ることまかりならぬ」とされた雪の上を移動する道具「雪馬(せつば)」が、密かに作られていた。そして若いが腕のいい宮大工、太助(宮川一郎太)が捕らわれ、働かされていた。
8時13分。太助に目をかけている宮大工の頭領(名古屋章)とひょんな事から知り合った黄門は、さまざまなトラブルを目撃し事件の真相究明に乗り出す。
8時18分。かげろうのお銀(由美かおる)、柘植の飛猿(野村将希)の2人が、失意のあまり自害しようとしていた若者の恋人(とよた真帆)を偶然救い、そののち黄門と合流する。
8時20分頃、風車の矢七の働きで、老中(穂積隆信)が悪徳商人(柳生博)と組んでご禁制の「雪馬」の生産と他国へ販売するという悪巧みをしていることが分かる。しかし黄門は、「お城に乗り込みましょう」と進言する助さん(あおい輝彦)の言葉を無視して、「もう少し様子を見ましょう」などとのんきに構え、事態を確実に悪化の方向へ導く。
8時28分。料亭で「山吹色が5000両」、「お主も悪よのう…」などと密談する老中の元に芸者に変装したお銀が近づき、事件のウラをとる。時間が来ると(8時30分少し前)突然お風呂に入り、悪玉の老中が「わしもそっちへ参るぞ」と言って、スケベ顔で風呂場を覗くと水柱とともに消える(注4) 。また、若者の恋人も悪徳商人の慰みものになる寸前に矢七の機転で救われる。
8時45分。最初から印籠を出せば済むものを、とりあえずは大暴れをする黄門ご一行。特に悪人とは知らず、ただ自分の主人の命令に従っただけなのに無駄に命を落とす家臣には涙を禁じ得ない。黄門や助さん格さんは峰打ちや素手でやっつけているが、お銀や矢七はお構いなしに切りまくっているし、峰打ちとはいえ頭を割られたら何人かは死んじまうだろう。
8時48分。まあとにかく、ひと暴れしたところで、格さんが印籠を見せ(注5) 、恐れ入る悪人ども。
8時51分。お世話になった太助たちが、町はずれのお地蔵様の所で頭を下げ黄門を見送る。太助がご禁制の「雪馬」の試作品を取り出し、火にくべる。
「もうこんなもの作るのも見るのも嫌です」
「俺たち、めおとになる事にしたんです」横では恋人が恥ずかしげに頬を染める。
「えっ?そんな〜」密かに好意を寄せていた助さんが露骨にがっかりする。
「か〜っ、は〜っ、は〜っ、はっ」高笑いする黄門。
その後ろではスノーボードにそっくりな、いやそのものである「雪馬」が燃えている(注6) 。
「さあ、ご一緒に参りましょうか」
ナレーション。「見事、老中の野望をうち砕いた水戸老公。若い夫婦の幸せを祈り、心も晴れやかに、早春の上越路を急ぐのであった…」なんてね。めでたしめでたし。