ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

4月1日付けでいよいよ改正版男女雇用機会均等法が施行され、その21条によって「事業者はセクハラの防止に配慮」しなければならなくなった。

かくいうミヤモトは、このあいだ勤めている会社の役員室に呼ばれ、監査役や総務部長らから直々に「セクハラこれはアウト、これはセーフ」と言うマニュアル本を手渡された。

うちの会社の「セクハラ防止の配慮」とは私にこの本を渡す事だったらしい。どないやねん!

さて今月のSNOWINGはレディース特集らしいので、スノーボード界を例にとって男女問題にメスをいれようと思う。

見出しの所にも書いたが、先日私は会社からまるで「セクハラ上司は君だ」と言わんばかりの扱いを受け、ハウツゥビデオまで見せられた。彼らが全然分かってないのは、女性とのコミュニケーションを取ることにかけては天才的なミヤモトにはセクハラはあり得ないと言うことだ(注1) 。

こういう場合はむしろ、女性とコミュニケーションを取るのが苦手なオヤジなんかが、うっかりしたことでセクハラだと言われてしまうケースが多いのと違うやろか?

ここは会社の応接間。と言っても雑居ビルの事務所の一角を、パーテーションで区切っただけの簡素なものだ。スノーボードの輸入をしている社員20人程度のその会社では、先ほどからサポートライダーを志願している一人の女性を面接していた。

「ほんまの事言うと、うちは女の子はあんまり取らんのよ。…カスミちゃん。だっけ?プロになって何年なの?」小林薫にそっくりの社長が話しかけた。

「えー、プロ登録してからは3年です。あと、これが昨年のリザルトになってます」やや緊張した面もちで答える。サーフブランドのピンクのTシャツがよく似合う、葉月里緒菜に似た美人タイプだ。

「ふーん、ボーダークロスにも出てるんや。男勝りやねぇ。でも最近 BXもレベルがあがつてきとるし、そんなに細い体格じゃこれからは勝てないんちゃうの? 」

「…」上からなめ回すような視線を感じて、ぞくっと鳥肌が立つ。

「えっと、彼氏いるの?…あっそー彼氏もライダーなの。いっそ女らしく彼氏と結婚でもすれば。はっはっはっ」

「いえ、それは考えていません。来年はもっと大会中心に活動しようと思ってます。それでここのブランドのボードに乗りたいんです」かなりムッとしたものの、気を取り直して交渉を続ける。

「おっと、こんな時間か。じゃあ続きは二人で焼き肉注2) でも食いながら話さんか?」

「いえ、折角なんですが時間が無いので」

「愛想なしやねぇ。…ところで、なんぼや?

「はっ?」

ねぇちゃんは、なんぼやと聞いとるんや」彼女の顔が見る見る紅潮する。

「もういい加減にしてください!さっきから聞いてれば、セクハラ発言ばっかりですよ。もう、失礼します!」カスミさん。ついにぶちきれると、ドアを乱暴に開けて出ていった。

「えっ?」

「社長、どうなさったんですか?」今田耕治似の社員が心配そうに尋ねた。

「いや、けったいな奴や。契約金いくら欲しいか聞いたら出ていきよった」

まあ、こんな話はないやろうけど、ここで下線を引いている所の発言はセクハラ発言と取られる可能性がある。

少し検証してみると、たとえば冒頭の「女の子」とか、「○○ちゃん」と言う呼び方は何気なく使ってしまうが、女性を一段低く見ておると見なされるのでだめだ。ただ例外として芸能関係の人のように男女の区別無くみんな「ちゃんづけ」をしている分にはOKらしい(注3) 。

また、さるパーティで上島しのぶさんに「あれ〜、しのぶ痩せたね」と某国産有名メーカーの社長が話しているのを目撃したが、この「痩せたね」とか「細い」も危険な発言。「別に太ったねと言っているんじゃないから、いいじゃないか」と思われる方もいると思うが、身体的特徴を云々するのは不快感を抱かせる可能性があるのだ(注4) 。

よかれと思って使う言葉も時としてセクハラと取られるので注意が必要と言うことや。もっとも、たとえば藤原紀香に「ナイスボディですね」なんて言うのは、そこまで行けば世間の一般常識だから問題は無いと思う(注5) 。

さらに彼氏や結婚などのプライベートな事に触れるのも言うまでもなくまずいが、男勝りとか、女なんだからと言った発言も注意が必要。能力が男性より劣っている事を前提とした発言と見なされるからだ。大会のMCなんかで、うっかり「おーっとロディオ!メイクした!!女子の大会とは思えない!」などと言ったらすぐに後ろに手が回る。つくづく難しい時代に生きている気がする。

ただ、時代はボーダーレス化に向かっているので、この次は男に対する女性のセクハラとか、男女の区別の曖昧な人が登場して、どんどんセクハラも変化していくんではないやろか。

たとえば、上司が、女装で会社に来ている男子社員のスカートの中に手を入れるとどうなるのかとか、あとニューハーフの部下にいきなり「ほれ」なんて言ってポコチンを見せればセクハラなんだろうか? それともただの変態で済んでしまうんだろうか?

或いは、オフィースラブをしている部下の女性に、クリントン大統領よろしく口でエッチな事をして貰って、その時におもむろにホモ雑誌を取り出して見るというのはセクハラだろうか??…いろんな疑問が生まれてくる。

結局、男と女はセックスが成立するから、思っても見ないことでもおかしな問題になってしまうのだろう。もっと世の中が進んで男と男や、女と女も普通にセックスするようなご時世になれば少なくともセクハラと言う言葉は意味を成さなくなるんじゃないかと思うが、いかがやろう? 別にそんな時代になって欲しくはないけれど…。

注1
むしろ「すべての女性は私にセクシャルなことをして貰いたいのではないだろうか?」と、言っておこう。

注2
昔から「焼き肉を食べに行く男女は、すでに肉体関係がある」などとよく言われるが本当かな? 焼き肉ぐらいみんな関係無しにばんばん食べに行っているだろう。牛丼屋で牛皿にビールとか、酒屋で立ち飲みのカップルぐらいならそうなのかも知れないが…。

注3
しかしこの場合、業界かぶれ、ホモっぽいと指摘を受けそう。また「由里っぺ」の「○○っぺ」や、ゴリポンの「○○ポン」、チューヤンの「○○やん」などはセクハラ的にはセーフだそうです。

注4
むかし友人の玉置君が池袋のソープであき竹城似のソープ嬢に「うわーっ!でけーチンコ。いただきます」と言われてサービスを受けたらしいが、理屈的に言えばこれもセクハラ。しかし本人はご満悦だったようだ。

注5
もっとも藤原紀香に会って声をかけると言うシチュエーションになる可能性は天文学的に低いので、一般的には身体的なことには触れない方が無難。

GTM(SNOWing誌99'08月号)掲載