ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

景気が上向いてきているなんて言われている割には失業率が最高(最低?)を記録して、空前の就職難らしい。筆者のところにも「どうすればスノーボード業界で働けますか」なんて問い合わせを最近よくもらう。

これだけ失業率が高いと、きっとあぶれた女の子が風俗に流れるので風俗のレベルが上がるのではないか?などと不謹慎な想像をしている場合やない(注1) 。

最近しもネタが多かったので、今回は心を入れ替えて就職活動のポイントにまじめに迫りたいと思う。

「社会に出るということは、君たちが思っているほど甘いもんじゃない!」

壇上の男がよく透る声を張り上げた。会社説明会に来ている学生にも一瞬緊張が走る。

「今は能力ある人間、そして努力できる人間のみが評価される時代になってきました。ある意味厳しい時代であるといえるかもしれませんが、逆にやる気のある人間にとってはとてもよい時代になったと思います。若い人の中には俺のことを皆わかってくれない、本当の俺はこんなもんじゃ無いんだ。という人がいます。実際穏当にすごい才能を持っている人なのかもしれません。でもそういう言い方をする人の99%は他力本願な甘ったれだと思います。人に認められたければ、人よりいい暮らしがしたければ、人よりほんの少しでも努力する人でなければだめです」

100人程度入れる会場はほぼ満席の状態だ。

それが水をうったような静寂につつまれている。みな真剣なまなざしだ。どこかで咳ばらいがひとつ聞こえ、それがやけに大きく響いた。

「もちろん人の価値観はそれぞれです。特にお金なんていうものはいくらあってもそれ自体なんの価値もありません。最低限食えればあとは好きなサーフィンでもして暮らすのが夢だという人もいるでしょう。それも結構です。でもそんな価値観の方は当社では必要ありません。今すぐ出て行ってください。もっと泥臭く給料が一円でも他人より低かったら悔しくて夜も寝れない。それぐらいでなければ当社で働く資格はありません」

壇上の男はコップに用意されている水をグイッと飲むと、さすような視線で会場をぐるりと見渡した。額に汗がにじんでいる。学生たちも真剣なら、こちらも真剣な様子である。最前列の女の子と視線が合い、女の子が緊張して一瞬身を硬くした。

男の唇に一瞬笑みのようなものが浮かんだがすぐに消えた。

しかしこの壇上の男、言っていることはまともだが、服装といえば半ズボンにTシャツというラフな格好だし、茶髪にピアスといった風貌。おまけに花粉症ではれぼったい目をしている。

まさか来ている学生のみんなも、SNOWING誌上でちんこがどうしたとか、お○んこが滑ったとかいっている奴だとは気づくまいが。

そう、何を隠そうこれはハロルドのもうひとつの顔なんである(注2) 。

本当は「なんや、今回はあんまりかわいい娘おらへんなぁ。おっ!前に座っている子はちょっと好みかも・・・」ぐらいな事しか思ってないのやが、一応しゃべりのほうは、もっともらしいことを言わなければならないのである。冷静に考えてみればこんな男にまじめに勉強して就職しようとしている人の人生が左右されるのであるから怖い話である。

でもま、世の中そんなもんである。で、今回はスノーボードの仕事に携わりたい人必見!採用する側から見た就職活動のポイントについて伝授したい。

まず、ここぞという会社を見つけたら採用情報を手に入れて、次に履歴書を送るわけやが、最近は履歴書にアピール資料が添えられていることが多い。いわく、手書きのコラム風自己紹介だったり、写真を切り張りしたものや、直筆の絵(コピーなんかじゃなくて)、牛革の焼印みたいなので書いたりと、とにかくあの手この手で目を引こうとしている。書かれている内容も、マニュアルどおりというか、一応どれも採用する側をくすぐる内容になっている。

ただ残念なことに履歴書に張ってある写真にまで気を使っている人が少ない。もちろん顔で仕事ができるかどうかわからない。特別な客商売以外では、別に男前や美人でなければいけないことはないが、写真から読み取れることが多いのも事実や(注3) 。

適当に昔の写真を使っていたり、スナップの切り抜きなんかでは「やる気あるのかいな?」と思ってしまうし、たとえばファッション性の強い商品(スノーボードなんてまさにそう)を扱う会社を受けるのに服装センスが悪いと「どうかな?」と思ってしまう。そんなに具体的じゃなくても暗そうな顔であったり貧相に写っている写真も、特に他に際立った点がなければ無意識のレベルで不採用のほうに分類してしまうこともあるやろう。

田中角栄は総理のころ選挙前になると自民党が推薦する候補者の選挙ポスターを集めて、その場でこれはいい、これは作り直せと支持を出していた。「選挙ポスターはいわばお客様に対する顔だ。相手を見下したようではだめだし、正面から見ていないとか、目線をそらしていてもだめ、不真面目なものもだめ」というような事を言っていたらしいが、ほんまその通りである。

またスノーボード業界の場合、写真がそれなりにボーダーっぽいというのは逆に格好から入っていると見られれことがあるので、ポイントは低いということも覚えておこう。

むしろライディングの写真や、大会に出ているならリザルトをつけるのもいい。ただリザルトがよすぎる人は「こいつ就職しても仕事は二の次で滑りにばかり行きそうだ」とか、採用の担当者が競技をやる場合、その人より成績がよくて反感を買う恐れもあるので注意していただきたい。

書類選考が終わると次は会社説明会に出かけたり、面接や試験を受けることになるのやが、ここで一つ言えることは「人と同じ事をしていてはだめだ」と言うこと。

「人の行かないところに道がある」ということわざがあるが、それと同じである。もし周りのレベルに比べて自分が高い学歴や成績を持っているなら、その事がすでに人と同じではないのでどうどうと正攻法でゆけばいいが、そういった事に何のとりえもないようなら、このご時世普通にしていて選ばれる可能性は低いと思わなければならない。特にスポーツ業界は、業界自体景気が悪いくせにスポーツ好きという人がわりと多いので、募集すれば山のように履歴書が送られてくるのが常である。たもんで企業は、業績はよくないが、人は採りたい。でもいっぱい応募してくるので選びようが無いという情況に陥る。

するとどういう基準で決めるかというと、まず予算的に多くの人を採用できないので少ない人数になる。それでも会社に新風を吹き込むというか、会社の業績を一発逆転で盛り上げてくれる可能性ある人を選ぶ事になる。自然と地味よりは派手、普通でまじめっぽいよりは多少変わっていても可能性を秘めた人が有利というわけや(注4) 。

もちろん会社によって採用基準は違うが、業界各社の採用を聞いても概ねこういう傾向にあることは間違いない。業績が悪くて会社が暗いので一人で明るくしてくれて、うまくゆけば仕事もできるような人という大穴狙いできているとも言える。で、人と同じではダメっちゅうことやが、残念ながらここで紙面が尽きたので肝心なところは次号にまわすとしよう。

注1
ヘルスで有名な名古屋では18歳から30歳までの女性の人口と風俗で働く人口を単純に比率で見ると、実に20%。5人に1人が風俗で就業していることになる。もちろん風俗店に掛け持ちで登録している人や、地方からも来ている人も多いので実際はこんなに高くは無いが、それにしてもすごい数字である。

注2
ハロルドはスノーボード業界屈指(というよりは数えるほどしか人がいない)のコラムニストという顔のほかスノーボードを扱う会社の社員でもあるのだ。また他に駐車場経営、スノーボード関係団体の理事、結婚式の司会、専門学校講師でもある。こうして書いてみるとなんだか怪しい人みたいだ。

注3
某有名広告代理店に行くとお茶を出してくれる女性がみんなかわいくて驚く。この会社ではお茶を出す女性というのは、いわゆる観葉植物と同じで、見栄えがよければいいと割り切っているのだそうだ。もちろんこんな事を公に言えばセクハラになりかねないが、事実ここはこういう考え方で採用している。少なくともハロルドみたいな人間には効果があることは間違いない。

注4
もっとも採用する職種によって違う。経理の人を採用するのに別に一発逆転は狙わないのである。

GTM(SNOWing誌00'06月号)掲載