ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

さて先日、某ラジオ番組に“海外でのスノーボードの事情通”と言うことで出演した。別に宮本は特にたくさんの海外ゲレンデに行っているわけでもないが、それでも構わないと言うことだった。これで、「ミッキー安川のアメリカ事情通」や、「英国王室事情通の梨本勝」、「お受験の事情通、藤崎かおり」と並ぶうさんくさい事情通の仲間入りである。

で、折角なのでこのHEAVY SNOWKERでも事情通ぶりを発揮したい。読者の中には海外に行ってスノーボードをした人も多いと思う。でもほとんどの人はカナダのウイスラー、ブラッコムやオレゴンのマウント・フッド、ニュージーランドのカドローナなど有名なところに集中しているのではないだろうか? こういう有名ゲレンデの情報はいろいろな専門誌に「トラベルのコーナー」などがあるので、こちらではマイナーなゲレンデでの事情についてレポートしたい。

まずマイナーゲレンデで困るのはロープ・トー(リフトではなく、ロープに捕まりながら引っ張り上げられる装置。ロープ塔だと思っている人も多いが、ROPE TOWが正解)が多いことだ。これは有名なスキー場にも一部あるが、ヨーロッパには山全部がロープ・トーなんていう凄いところもある。日本に比べて死ぬほど長くて、めちゃめちゃ急な斜面まで登らされてしまう。もともとスキー用に作られた物なのでスノーボードのポジションでは乗りづらく、さらに片斜面やギャップもある。ニュージーランドのブロークン・リバーというゲレンデにあるロープ・トーはさらにやばくて、まずウインドサーフインで使うようなハーネスを腰につけて、それをロープについている金属のワッカのような物に引っかける。このロープ・トーは死ぬほど長くて片斜面も多く、以前雑誌の取材でこのゲレンデを訪れた平住慎一プロがうっかり途中で転んでしまい、「しんぱいない! 大丈夫だよ!」とか言いながら引きつった笑顔で、上まで引きずられて行った話は業界で有名である。

ロープ・トーを利用する場合は、必ず雪質に合ったワックスを事前にかけて、ソールの摩擦抵抗を低くしておく事、ステップインバインディングの場合は後ろ足も装着したほうが安全である。また、ぼんやりしていると逆エッジになって転倒する可能性があるので、常に重心を低くしてしっかりと膝を入れておく必要もある。滑っているときよりも疲れることこの上ない。

またヨーロッパのマイナーゲレンデでは、まともなレンタルをやっているところが少ないことも悩みの種だ。たいがいのレンタルショップはスキーレンタルといっしょにやっているため、アルペンボードにスキーブーツで滑らせるところも多く、しかもサイズが大きいために25センチや26センチなら女性用のボードとの組み合わせしか無いなんてケースもある。

むしろ街にスノーボードの専門店があってレンタルもサービスしているなら、そこで借りてゆくのが正解だろう。あとバインディングの調整もアバウトな場合が多く、事前に十分チェックする必要がある。オーストリアのインスブルック近郊のゲレンデに行ったときは村に一件しかないレンタル屋で借りたら、この時はハード用しかなかったんだけれども、それがロープウエーで頂上に上がって滑って降りようとしたら、ちょっとしたギャップでバインディングがバカバカっと両足いっぺんに外れて、基本姿勢のまま身体だけすっ飛んで行ったことがあった。その後もターンのたびにバカバカ外れて、2時間近くかけてほうほうの体で下まで降りて、レンタル屋にクレームに行ったら「はっはっはっ!それは大変だったな」の一言で済まされそうになったので、怒り爆発してしまったことがあった。日本とか北米の有名ゲレンデの感覚でいたら、えらい目にあってしまう。

最後にこれは、スノーボードとは直接関係ないが、食事の事について。ヨーロッパのゲレンデに行ったら特に夕食には注意しなければならない。あっちはスノーボードやスキーと言えば、たっぷりある休暇を利用し長期滞在してリゾートを満喫しているケースが一般的だ。夕食も時間をかけてゆっくり会話を楽しみながらとる。日本や北米のようにハンバーガーで済ませたり、レストランで一品だけ頼むなんて言うのは「食文化をバカにしているのか!」と怒られてしまう。

まず食前酒を飲み(この場合もビールよりチンザノ等のベルモットを頼んだ方がそれっぽくていい)、オードブルやスープを飲んでからメインディッシュを食べる。最後にも、コーヒーやデザート、チーズを頼まなければならない。「こっちが金を出しているのに、何をどう食っても俺の勝手だろう」というのも一見正論だが、これは子供の理屈だ。お葬式に行くのに、派手なジャンボ尾崎みたいな格好をしていかないのと同じぐらい常識なので注意してもらいたい。

つづく・・・

お茶の間ボーディング(Transworld Snowboarding誌00'02月号, re-editing HEAVY SNOWker)掲載