ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

「戦後も早や53年目」なんて言われても戦争を知らないので実感なし。おまけに終戦記念日言うても敗戦を記念してどうすんねんと思う。

さてそうは言いながらお盆も終わり、今年もスノーボードシーズンを前に何かと話題がいっぱい。反面まだまだ危険なスポーツとか偏見を持たれている部分も多いんちゃうやろか? 今回はスノーボーダーと若者文化についての考察や。

スノーボードが生まれたのは1960年代アメリカのミシガン州とされていますが、ほぼ現在の形になったのは1970年代にシャーマンポッペンによって発明された「スナーファー」からやそうです。そう考えるとまだ歴史の浅いスポーツですけど、これがあと20年ぐらい以前に誕生してたら加山雄三主演の「パイプの若大将」とか、石原裕次郎の「太陽に滑れ!」、植木等の「無責任ボーダー」なんて言う映画が必ず誕生しとったはずです。

リフト下の滑走禁止区域を滑ったり、スキーヤーに嫌がらせをしたりするスノーボーダーで金持ちのドラ息子、青大将こと田中邦衛と、大学のスキー部部長の若大将(もちろん加山雄三)は事あるごとに衝突する。ある時ささいな事(注1) で、喧嘩をした若大将とヒロイン(星由里子、当然二人は惹かれあっているがまだ恋人同士では無い)の二人。当てつけで、これ見よがしに青大将と遊びに行く彼女に若大将は内心面白くない。しかしちょっと若大将に焼きもちを焼かせるつもりが、青大将に襲われ犯されそうになる(抜きどころだ)。あわやのところで駆けつけた若大将に止められ腕力でかなわないと見るや、青大将はスノーボード対スキーのハーフパイプでの勝負を提案する。

いよいよヒロインを賭けて戦う二人(注2) 。しかし若大将のスキーのバインディングには、青大将によって細工がされていた。最初のトリックで片足のスキーが外れる若大将。ピンチ! しかし、若大将はワンフットで奇跡の大逆転を勝ち取る。抱き合う若大将とヒロイン。口を歪め、くちびるを突き出しながら悔しがる青大将(注3) 、ラストに一言「ぼかぁ、しあわせだなぁ」めでたしめでたしである。

現在のウインタースポーツ界を見ると、何者かの手によって引かれた「スキーヤー=優等生」、「スノーボーダー=不良」の図式が見え隠れする。若者の風俗、カルチャーと言ったものは、先端であればあるほど社会の迫害を受ける。これは、古いとこで昭和30年代だとマンボスタイル、太陽族になるらしい。

当時を知る人に話を聞いてみたけど、そのころはマンボズボン(注4) に代表されるマンボスタイルと言えば若者のあこがれでもあり、反面不良の代名詞のようにも扱われとったそうです。当時の不良少年たちは派手なシャツに裾を絞ったマンボパンツを履いて、手にマラカスを持ちながら「兄ちゃん金貸してくれや、ウッ!マンボ!!」なんて言うて喝あげしとったんやろか?

このマンボ、太陽族の流れはその後昭和40年代に入ってGS(グループサウンズ)からヒッピー、第一次サーフィンブームへと移っていくらしい。今でこそ「あの懐かしの…」なんて言うキャッチがぴったりのこれらの言葉も、当時はネガティブな感じでなんか、反社会的と言うかそういう風に見られとったらしい。若者文化と言うだけで、身に覚えの無い濡れ衣を着せらるという点で現代のスノーボードに通じていると思う。

ゲレンデによってはまだスノーボードが出来ないとか、時代に逆行してスノーボードを規制しようという動きすらあるようや。そう言えばこの前の長野オリンピックでもドーピングとは関係ない大麻やマリファナなんかのチェックもされたりとか、どうも社会から色眼鏡で見られている気がする。いわく「マナーが悪い」、「コース外を滑った」、「リフトから飛び降りた」、「スキーパトロールを殴った」等々、どれも個人のモラルの問題でスノーボードには関係ないはずや。たまたまそう言う奴がスノーボーダーだっただけで取りざたされて、同様の事をスキーヤーがしてもスキー全体でとやかく言われる事は無いやろうに。

お役人がやるように何でも規制すれば解決するように思っているのは、本質が見えてへんからとちゃうやろか。

ついでに言うと、もう一つステレオタイプと言われる考え方がある。一度イメージが付いてしまうと、何をしてもそのイメージでしか判断しなくなる。例えばだいぶ前の事になるけど、貴乃花が高校生を殴ったとか、殴ってないとか言うことがあって、大事件か?と思うたら、お咎め無し。逆に同情の声が大きい。別に貴乃花はとんでもない奴と言うてるんではなくて、これが内田裕也や木村一八、やしきたかじんでは社会の反応は違うだろうと言うこと。しかも日本においては一度イメージがつくと変えるのはなかなか難しい。巨人の桑田なんかいい例で、なかなかダーティなイメージが払拭出来ずに30過ぎて「自分は若手」発言をしてすべったりしている(注5) 。

貴乃花は国技である相撲を担うヒーローであったから批判が少なかったと言うのは言い過ぎやろか?。でも彼がスノーボーダーだったとしたら、今頃無茶苦茶言われているだろうと言うのは想像に難くない。
(次号に続く)

注1
ここで言う些細な事とは、�@他の女の子に鼻の下を伸ばしている所を見つかった。�A悪友に誘われ行ったエッチなお店の前で、ばったり会った。�B折角良いムードになったのに気が付かず鈍感な所を見せた。のどれかである。

注2
今なら女性を賭けてなどと言おうものなら、その筋の団体から「女性を蔑視している」などとクレーム必至。古き良き時代か?

注3
「北の国から」といっしょだ。そう言えば田中邦衛は何を演じていても田中邦衛。「食べる前に飲む」の胃腸薬のCMもやっぱり田中邦衛以外の何者でもなかった。

注4
マンボパンツはピチピチに絞って足のくるぶしぐらいの短さのズボン。以前、これまた田中邦衛が日本アカデミー賞で、タキシードのパンツを絞って履いてて話題になっていたがこれはマンボの流れ。

注5
別にイメージチェンジの為の発言では無いかも知れないが、「僕は体が槇原さんや斉藤さんに比べて小さいから若手のつもりで…」というのは笑点のオチより苦しいと思う。

GTM(SNOWing誌98'11月号)掲載