ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

スノーボード界の自称黒服が超大物ライダー電撃移籍問題から岸部シローの手形の割引?まで一刀両断。情報量はすでにジャーナリストの落合信彦氏を超えた!真実の扉に鍵を掛ける事は何人たりとも出来ないのかっ!!

と、言うわけで今回は契約ライダーを目指すアマチュア君への売り込みポイントをアドバイス。ライダーへの道3部作の第一回目は、ビデオでの売り込みだ。

「あのさぁ、結局俺ってカッコわりい事出来ないみたいなタイプだし、…つうか何やってもイケちゃうんだよね。女も別に(ナンパしなくても)来るジャンむこうから。…(女性からも)ワイルド入ってるとか言われんだけど。むかしちょっと遊んでたかんね」

冒頭からバファリンの要りそうな話で恐縮。これは先日行った新橋の飲み屋さんで、隣にすわったカップルの男の発言ですわ。顔は酢を水で100倍ぐらいに薄めて、サバにぶっかけたようなしまらない野郎や。お似合いのガングロ女が「やっぱソーよね。そんな感じ」なんて言うとったが、日本中でそんな尻子玉を抜かれたようなナルシスト野郎が増えておるらしい。わしはスノーボード関係のメーカーで働いておるが、最近ライダー志望の若者の中にも毒素にやられて、脳味噌スポンジになってしもうたような兄ちゃんが増えておる。

折角なんで、ちょっとここでライダー志望について話させてもらうが、たとえばもし君がスノーボードに気合い入れとって「次のオリンピックでイワしたろか」なんて考えとったら、まずは練習せなあかん。練習するにはまっとうな仕事になんかついとったらいかんで。滑る時間なくなるやろ。また学生さんは学生さんで金ないわな。家が金持ちで、おやっさんがスポンサーになってくれる以外は、自分でスポンサー探さないかん。

一般的には大会で優秀な成績を残してスカウトされるか、ゲレンデでのバイト仲間にコネをつけてもらうとか、行きつけのショップからの紹介が多いんとちゃうかな。

それらに該当しない場合はメーカーの選考会に出たり、直接メーカーに掛け合うしか無いわけやけど最近はいきなり自分の滑りのビデオテープを送ってくる輩も多い。

問題はこれや、ほとんどのビデオははっきり言ってつらい。かなりナルシストしとる。見ている方が恥ずかしくなる。ビデオのナルシスト度、ナル指数はこんな感じや。

●ナル指数1)映像のバックに選曲した曲を入れ編集する。滑りのうまいへた以前に「俺の趣味はこうなんだぜ」みたいな主張を押しつけられる感じで、見ているほうは無口になる。

●ナル指数2)編集でスローやストロボを多用する。しかしプロを撮った市販ビデオと違いほとんどが低空、短距離ジャンプなので、グラブも通常のスピードでの再生なら瞬きしている間に見逃してしまうものがほとんど。同じシーンをしつこく何度も入れているのもこの手。

●ナル指数3)滑りだけではなく冒頭にインタビュー形式(たぶん友人がシナリオを見て聞いている)で、自己紹介や将来の夢なんかを語るシーンが挿入されている。エロビデオの見すぎか?しかしエロビデオでも早送りするシーンでもある。

●ナル指数4)バックに音楽を入れる点はナル指数1と同じやが、ナル指数4になるとそれが自作の曲をバンド仲間とで演奏している。「テイクオフ!風にぃぃなるぅぅぅ」なんて歌われてもなあ…。

●ナル指数5)自分のライディングの間に有名ライダーの滑りを挿入(複数の市販ビデオから抜粋)、音楽も入れて本格ビデオ風にしてある。自分の滑りのシーンに自分の名前をクレジットして入れるなど「君は何様や!」と突っ込みたくなる。見ているほうは耳まで真っ赤や。他にもパイプのシーンに「おーっと!540゜、今度はトゥフエイキー!」とか自分でナレーションを入れてくるのもおるが、こっちも商売やから分かるっちゅうねん。だいたいが540゜回っとらんぞ。

わしが思うに男のナルシスト化現象の発端はキムタクではないやろか。ほんの数年前までは吉田栄作や真木蔵人を茶化して、ナルシストを完全否定していた日本国民も木村拓也以降は、YOSHIKIも小室哲也も河村隆一もIZAMUもぜーんぶまとめて、OKにしてしまいよった。今となっては結果論やが、キムタクのところで歯止めをかけておくべきやった。

まあもうそう言う世の中になってしもうた以上しゃあないので、ここで正しい売り込みビデオの作り方について教せたる。ここまで読んだ君は、滑りに徹したプレーンなビデオがええのんちゃうかと思うやろ。それでは60点や。こうなってしもうた以上はとことん自己陶酔するのが正解や。中途半端はいかんで。

まずいきなり滑りのシーンはいかん。ちゃんとストーリーやシナリオを考えて、そこに滑りを入れるんや。たとえばこんなんはどうや。

香港の港に浮かぶ帆船の上で、目を閉じて厳しい表情で座っている男(君や!)の回想シーンからまず始まる。回想シーンでは山でスノーボードの修行をしている所と、ならず者に妹を殺されるシーンが織り込まれる。さる機関から麻薬犯罪の潜入捜査を依頼された君は、香港沖に浮かぶ島で行われるハーフパイプ大会の会場へ向かう。悪者(植木等に似ている)は大会の主催者や。

こいつは妹殺しの黒幕でもある。さて回想シーンも終わり、大会で妹を殺した実行犯とハーフパイプで勝負する事になった君は、劇的な逆転勝利を収める(ここが君の滑りの見せ所)。そして負けた腹いせに凶器攻撃に出る相手にオーリーを当て込んで首をへし折る。勝ったのに泣きそうな表情で叫ぶ君「アチョォォォォーッ!」。アングルはやや下の方から上半身に向けて、もちろんスローモーションや。ここは見せ場やからな。

その他にも婚約者がいるのに、船の中で絵描きの卵と浮気したおネエちゃんが船の沈没後救出されてスノーボードに目覚めるストーリーをババアの昔話形式でやるのとか、チベットの山奥にスノーボードしに行って悟りを開くなんてのもオーケーや。
いいビデオが出来たら送ってくれ。

宛先は編集部ハロルドのライダー募集係まで。
ナルな時代は君が主役や。

GTM(SNOWing誌98'09月号)掲載