ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

11月19日(2000年)付けの朝日新聞にスノーボードで二十歳前後の女性が外陰部(注:オソソのこと、以下オソソ)を怪我する事故が多発しているとの記事が出ていた。これは、信州大学医学部の産婦人科の先生が調査したもので、長野県の4つの病院で過去3年間で65件あり一昨年には17件、昨シーズンには倍増の35件あったということだ。

原因は、転んだときにバインディングのハイバックの上に尻餅をついてオソソに血腫(血豆)や裂傷を負うという事で、これまでは恥ずかしい部分であるので表面化していなかったと書いてある。

特に初心者がリフトを降りる時にボードが流れておこることが多く、怪我をした人のうち8割が入院し、7割が傷口を縫っているらしい。これが本当なら大変だ。彼女といいことしようとしてスノーボードに誘っても、オソソが使い物にならなくなっては本末転倒である。「ちょっと多めに縫っといてください」などとリクエストしている場合でもないだろう。

なぜ女性に多いかだが、記事には「男性より女性に多い。転び方に差があるのかも知れない。女性は話題にしにくいため、事故が目立たなかったようだ」と書いてありこれだけではよくわからない。まあ女性の受傷者数は正確なんだろうけれども、男性はどうやって調べたのか不明だ。それに35件といってもそれが多いのか少ないのかも判断が難しいところで、他の事故に比べてどうなのかも触れていない。「男性は話題にしても、どおって言うことないので男性が多いと思われていたが、実は女性にも多かった」とか、具体的に「女性はこういう転び方をするので事故につながり易い」とかであれば、わかるんだけれどもそういう事でもなさそうだ。

まさかヘンタイの彼氏が無理矢理ハイバックを押しつけてきたとか、別のことで羽目をはずしてオソソを痛めて、言い訳としてスノーボードで転んで怪我したと言っているなんてことはないだろうし、不思議だ。

まあ、女性の方が初心者比率が高いし、特にセット物なんかのチープなブーツやバインディングとか、ノーブランドのレンタル物なんかを使っている人は足首のホールドが十分ではなくて、結果的にそういう具合に転びやすいのかもしれないし、男性のほうが転び方が派手なので大丈夫なのかも知れない。など推測はいくらでも出来るんだけれども記事にするには情報量が少なすぎるのではないだろうか。

またなぜ急に倍増したかも記事からは読みとれない。スノーボードがブームになって初心者が増えて死亡事故をふくめ事故が急増したのは2,3年前だ。昨シーズンは、以前ほど初心者人口は伸びていないし、結果死亡事故も減っている。受傷者は初心者が多いとあるのは嘘ではないだろうが、数字を見るだけでは初心者=オソソの事故と必ずイコールで結びつけられない。むしろ倍増とはいうものの総数が少なすぎるためにたまたま倍になっただけのようにも思える。極端な話、たとえばある年に1人だけ事故を起こして次の年それが3人なら3倍に増えたことになるが、別の言い方では2人増えただけと言うことだ。

実際たとえば手元にある資料で、スノーボード産業振興会が3年間に渡って行った調査ハガキの分析があるが、この資料では6296通のうち、なんらかの怪我をしたという人が878名いるが、オソソの事故はその中でわずか1件しか報告がない。特に朝日新聞の報道ということで重大事故が激増しているかのようなイメージになっているが、朝日新聞といえども過去に珊瑚礁に自分で落書きして記事にしたり、従軍慰安婦や南京虐殺問題にしても信憑性の薄い証言を使って記事を書いたとして物議をかもしたりしているので、まるっきり鵜呑みにするのもよくないだろう。本当に何か原因があって急増しているのか、水面下の事故はどれぐらいあるのかなど、まだまだ調査しなければ簡単に結論付けられないように思う。

ところで、この記事を受けて自分のところにも某テレビ局から取材を受けた。スノーボード業界でオソソ事情に詳しいということなんだろうか?なぜご指名を受けたのかはわからないが、そのときは対策を聞かれたので、「これからは生理じゃなくても厚手のナプキンをつけて滑るようにすればいいんじゃないですか」と答えたが、しっかり無視されてしまった。実際は、やはり後ろ足をリリースしているときはハイバックを倒す事を心がけるしかないだろう。

お茶の間ボーディング(Transworld Snowboarding誌00'03月号)掲載