ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

ハロー ガイズ! ディスタイムは、クールでリトゥビット メロウなストーリーだ。エッブリバディは、ユア イヤーをクリーンにしてパーフゥエクトにリッスンしてくれ。
これでユーもファインなセンスのスノーボーダーになれるかもね。もたもたしないでレッツ スターテット!

「渡辺有祐がランディングの際に埋まることを承知の上で、ウインドリップに果敢にアタックする。…ウインドリップの向こうは超スティープなパフパフバーン。…体調を崩すわけにもいかないので、呼吸を整えるだけで早速ドロップを開始した。そしてウォーミングアップをかねたファーストランを、オープンバーンでこなし…」

この文章はSNOWING誌の7月号の82ページから抜粋したものやけど、この一文を見てわかるように、スノーボーダーは異常に横文字が好きや。すでにスノーボードにどっぷり浸かっている人にとっては、別に違和感もなく意味も理解できるだろうが、初心者の読者もいると思うので翻訳してみよう。

「渡辺有祐が着地の際に埋まることを承知の上で、風でできた雪溜まりの縁に果敢に挑戦する。…雪溜まりの縁の向こうは超急勾配の新雪斜面。…体調を崩すわけにもいかないので、呼吸を整えるだけで早速滑走を開始した。そして身体を暖めるためにも一本目を、開けた斜面でこなし…」と言うことになる。

確かに、英語のカタカナ表記のほうが簡単で意味も的確な場合もあるけど、あまり常用句でない横文字を連発するのは冷静に考えるとやっぱり変だ。

これは別にSNOWING誌に限ってとか言うことではなくて、他のスノーボード専門誌を開いても同じで、「スピン系のベーシックなトリックをクールにメイクして、かつファーストランのルーティンを忠実リプレイしたライダーがウイナーとなった。彼はローカルでもっともスタイリッシなライダーだ (回転系の基本的な技を格好良く成功して、かつ一回目の滑走の手順を忠実再生した選手が勝者となった。彼は地元でもっとも粋な選手だ)」とか、

「まずはオフピステのエリアをエンジョイした。スノーコンディションはドライなパウダー。ピークまでハイクして一気にバックカントリーのフリーランをエンジョイした (まずは滑走斜面以外の場所を楽しんだ。雪質は乾いた新雪。頂上まで歩いて一気に裏山の滑走を満喫した)」などいっぱい出てくる。

スノーボードをしない人が読めば頭くらくらになって、「なーに、スノーボードする人ってみんなルー大柴みたいなの?」と誤解される危険すらある。

このように横文字を使い、かつ業界特有の言い回しを得意げにするのは、他にバスフィッシング業界などがある。もし君がバサー(注1) ならこちらも違和感は無いと思うが、もしそうでなければ下記の文章を読んでどれだけ理解できるか試してみてほしい。

「彼は、シャローフラットの沖にあるマンメイドストラクチャーのアウトサイドにボートをステイさせた。サーフェイスはチョッピーで、水はマッディ。30mほど先にベイトフィッシュのライズを発見したので、すかさずルアーをキャスト。軽いロッドアクションを加えると、いきなりのバイト。タックルごと持って行かれそうな強烈なタグだったが無事にランディング。プリスポーニングのまずまずのグッドサイズだ」

バスフィッシングをやらない人には恐らく意味の半分もわからないのではないやろか?

これを翻訳すると、
「彼は、平坦な浅瀬の沖にある人工建造物の外側に船を停止させた。水面は三角波が立ち、水は濁っている。30mほど先に餌となる魚が跳ねているのを発見したので、すかさず疑似餌を投げ込む。軽く竿を動かすと、いきなり食った。釣り道具ごと持って行かれそうな強烈な引きだったが無事に釣り上げた。産卵を控えたまずまずのいい大きさだ」と言うことになる。

誇張して書いているんじゃないかと思われるかも知れないが、別にそんなわけではない。実際彼らは、深場はディープエリアと言うし、釣り針とは呼ばないでフック、釣り糸はライン、糸を巻き上げるのはリトリーブと言うのである。
スノーボーダーとバサーとは、アメリカ生まれの遊びと言うことや、急激に参加人口が増えている点、芸能界に愛好者が多い事(注2) 。マナーが悪いとか、じゃまであると言う理由から旧勢力(注3) のいじめにあっている。などの共通点も多い。

たとえば専門雑誌の横文字の使用比率から言えば、バスフィッシングのほうがいっちゃってる印象が強いが、最近スノーボード専門誌も巻き返しに出ているように思う。

共通した言葉づかいを使うことは、集団の一員ということを自覚するとともにそれ以外の人たちとの間に垣根をわざと作って他を排除するような心理が働いているのではないかと思う。CB無線愛好者が独特の節回しや略語で会話する事や、ワイン教室(注4) で生徒が臆面も無くくさい台詞を言い合ったり、関西人がどこにいっても関西弁を崩さない(注5) のと同じで、逆の言い方をすれば、そうすることによって無意識のうちに自分たちと違う人を排除し帰属意識を確認しているように思われる。

特にその世界に入りたての初級者のほうが、その世界に入れたことがうれしくてしょうがないので、特別な表現方法を使う事に喜びを感じる傾向にあるように思うがどうやろ?

まあ何にせよ、そういうことも含めてカルチャーと呼ばれるようになるんやろうけど、なるべくなら一般市民から後ろ指をさされて笑われない程度にしたいもんや。

注1
アメリカから移植されたブラックバスという魚を専門で釣る釣り人のこと。他にアングラー、バスフィッシャーマンと自らを呼び、生き餌のほうが釣れるとわかっていても頑なにルアーと呼ばれる疑似餌を使い、また釣った魚はリリース(逃がす)するなどの制約を課し他の釣り人と一線を画している

注2
おまけに芸能界ではこの二つの趣味を合わせてやっている人も多い。キムタク、反町隆史、江口洋介なんかが有名

注3
スノーボーダーの場合は一部のスキーヤーやスキー場から敵視されているが、バサーは、へら師と呼ばれるへらブナ釣りの人や鯉釣り師、或いはアユやワカサギを捕っている漁師さんとの確執がある。バスは肉食魚でワカサギとかを食べるので害魚であるとか、生態系を乱すと言われたりしている。そんなことを言えばワカサギだって他から持ってきたんじゃないかとか、卵を食い散らかす鯉のほうが問題だとか論争は絶えない

注4
情報によると、ワイン教室は20代後半から30代の少し小金を持っているOLのお姉さんがいっぱい来ているらしい。最初は「まるで子犬を連れて森の中を散歩しているような芳醇な味わいです」などと言っているようだが、時間がたつとみんな酔っぱらってただの宴会状態になることも珍しくないとの事。彼女を捜している男性はお見合いパーティより確実にゲットできると思う

注5
正確には関西を捨てて標準語を取り入れる裏切り者と、頑なに関西弁で通すタイプに2分される。関西でも京都、滋賀あたりは裏切り者が多く、反対に頑ななタイプは大阪でも河内や堺などディープな場所ほど多いと思われる

GTM(SNOWing誌99'09月号)掲載