ハロルド・ミヤモト氏ハロルド・ミヤモトのスノーボードコラム集

さて、すでにあなたが買うボードを決めていたとしてもいきなりお店の人に「あっ、これください」ではなんとも味気ないものだ。華道や茶道があるように、物を買う場合もいわゆる『買い物道』みたいなものが、実は存在する。スノーボードの正しい選び方の3回目は、ボードを買うときの作法についてである。じっくりと買うまでのプロセスも楽しんでもらいたい。

まずボードを選ぶ際には、事前準備として「SNOWBOARDER’S BIBLEスノーボード大辞典」に代表されるカタログ雑誌を熟読すべしだ。ここでは、気に入ったブランドだけ見るのではなく、「あっ、このメーカーのデザインは去年のバートンのグラフィックにそっくりだ。パクッたな」とか、「『○○年より歴史のある』とか、『ヨーロッパで生まれた!』とか、必要以上書いてあるブランドは、わざわざ書かなければ誰も知らないぐらい知名度が低いのか」とか、「このブランドのこのボードと、こっちのブランドのボードはスペックもシェイプも全く同じだ。きっと同じ工場で、同じ金型を使って生産されているんだ」などと深読みもしたい。

また、カタログを出しているメーカーがあればそれも手に入れて、カタログに使われている紙の質やページ数、また日本語に翻訳されているかもチェックしたい。必ずしもいいカタログだからいいブランドとは限らないが、センスの悪いカタログを平気で出すようなところはボードの品質やグラフィックもよくなかったりするものだ。

さて、カタログであたりをつけたら実際にお店に行ってボードを見るわけだけれども、ここではいきなりボードを手に持つのではなく、まずは2mぐらい距離を置いてじっくりと眺める。ボードのどこに何のステッカーを貼ればカッコいいかとか、バインディングを取り付けたときにグラフィックが変に隠れておかしくならないかもチェックポイント。またそのボードに自分が乗ってパイプやワンメイク、或いはパウダーランをしているシーンを想像してニンマリすることも忘れてはいけない。

さてじっくり眺めて想像力を掻き立てたら、今度はゆっくりとボードを手にしよう。まずはソールがフラットかとか、特にエッジの周辺に剥離が無いかなど基本的な部分をチェックする。もしパッケージを開けて直に触れる事ができるならソールのケバ立ちやベースワックスの有無、エッジのダリングはされているかもポイントだ。メーカーによっては出荷時にエッジを完璧に立てていない場合もあるので、買うお店でどこまで調整して渡して貰えるかも聞いておこう。

品質チェックが終われば、いよいよボードを押してフレックスを確かめるわけだけれども、ここでも注意が必要。よくボードの真ん中あたりを押して硬いの柔らかいのと言っている人を見かけるが、これでは素人丸出しだ。ボードのフレックスは場所によって均一ではないので、色々な場所を押してみて確認する必要がある。最初に前後のバインディングを取り付けるあたりを押してみよう。ボードは、バインディングを取り付ける位置から加重がボード全体に伝わると考えてよい。まずは、ここを押して硬さや、返ってくる反発を確認する。

次に雪面の変化を吸収したり、サスペンションの役割をはたすトップとテール部分のフレックスを確認する。最後は裏側から真ん中を押して、反発力や返りの早さを見る。これが玄人の確認方法だ。

さて一通り済んだら、今度はバインディングも選んでおこう。ボードの上に置いてボードのデザインとのマッチングも考慮したい。しかし、デザインばかりではなく性能や脱着性も見ておきたい。本当はブーツがあればブーツにバインディングを付けてみてマッチングや快適性、踵が浮かないかまでやれれば完璧だ。ボードだけでなくバインディングにもこだわってこそ本物。

最後にいよいよ交渉に入るわけだけれども、ここでいきなり「いくら引いてくれるんだ」とか、「あっちの店では○○%の値引きをしていた」とか言ってプライスにばかり固執していてはいい買い物はできない。別にお店の肩を持つわけではないが、値段にこだわりすぎて安いお店を探して何軒も回ったり、チラシやなんかに惑わされるのは真の『買い物道』からははずれた行為だ。

ここでのポイントは値引きプラスどんなメリットがあるのか、そのメリットは自分にとってどれだけの価値なのかを含めて分析すること。たとえば保証はどうなっているかとか、チューンナップはすぐして貰えるのかとか、スクールはあるのか、友達は作れそうか、今後も相談に乗ってくれそうかとかを見て、総合的に判断すべきだ。

『買い物道』の神髄は欲しいものを買うのではなくて、必要なものを買う事だ。価格優先だと、ついついお買い得感のあるものや不必要なものまで買ってしまったりする。

今月の格言「いい物を適切な価格で買ってこそ豊かな消費生活」買い物は楽しむものだと思います。

お茶の間ボーディング(Transworld Snowboarding誌99'10月号)掲載