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<ルールも形式も「決まってない」>

東京五輪へ、スケートボードが新しい歴史を運んでくる。サーフィンとともに「若者へのアピール」を目指して追加種目候補となったが、関係者は一様に複雑な表情。これまで世界選手権もなく、日本代表を編成したこともない競技は、初体験に戸惑う。遊びから発展した新しいスポーツには「遊び」もたっぷり。「五輪競技」となるために、越えなければならないハードルは高い。
<ローラースポーツ連盟も実態見えず>

追加種目候補となって3カ月、スケートボード界にはまだ、東京五輪が見えていない。決まっているのは「ストリート」「パーク」の男女計4種目が行われるということだけ。会場はもちろん、試合形式やルールも不透明なまま。「本当に何も決まっていない。分からないまま」。日本スケートボード協会(AJSA)の横山純事務局長(51)も困惑を隠さない。

大会組織委員会の発表を受けて、9月に会見したのは日本ローラースポーツ連盟(JRSF)。五輪のために、スケートボード委員会を5月に設置したという説明だった。AJSAと協力して準備をするが、いまだに委員会の実態は見えてこない。JRSFのホームページにも、スケートボードの項目はないままだ。

<「ボードカルチャー破壊」残る反対論>

もともと、五輪とは相いれない部分がある。同じ追加種目候補の野球・ソフトボールは元五輪実施競技。空手とスポーツクライミングは、五輪不参加競技の国際大会であるワールドゲームズで行われている。バドミントンやトライアスロンのように、五輪「昇格」を目指してきた。サーフィンにも世界選手権がある。

スケートボードにはXゲームやストリートリーグなどビッグゲームはあるが、国際的な統一ルールで「世界一を決める」という考え方がない。「日本代表」を編成したこともない。そもそも、国を代表するという概念がない。9月の会見で選手たちは好きな選手の名を挙げた。「どこの国の選手ですか?」という記者の質問に即答できなかった。世界中のスケートボーダーは、みな個人の資格で大会に参加しているからだ。

五輪競技となれば、統一されたルールやコースが必要になる。「遊び」から発展した競技は、さまざまなコース、多様なルールのもとで自由にボードに乗るのが特徴だ。もし、すべてを統一してシステマチックにしたら、最大の魅力である「遊び」が減ってしまう。「ボードカルチャーが破壊される」と五輪入りに反対する声も、いまだにある。

東京五輪まで4年7カ月、決して時間は多くない。会場やルール、組織作りも必要。それ以上に五輪競技となるための「覚悟」が必要かもしれない。17年にはバルセロナで初の世界選手権が予定され、代表選考のための日本選手権を来年10月に開催するプランもある。しかし、ともに詳細未定。IOCの熱望で五輪入りするスケートボードだが、東京大会まで「滑るように」とはいきそうにない。

<利権と未来かけて必死の攻防続く>

東京五輪に向けて舞台裏は騒がしい。スケートボードはIOC承認団体の国際ローラースポーツ連盟(FIRS)の1種目として追加提案される予定だが、ここにきて未承認だった国際スケートボード連盟(ISF)が巻き返し。主導権争いが激化してきた。

スケートボードは昨年、南京ユース五輪で公開競技として行われた。仕切ったのはISF。将来的な五輪入りを目指してだった。しかし、IOCが追加種目として運営を託したのはFIRS。ISFがIOCの未承認団体だったからだ。

これにISFがかみついた。「我々は承認団体となるべくIOCと協議している」と表明。IOCのコーツ副会長が「近くスケートボードの国際団体が加盟するだろう」と話して混乱が広がった。FIRSは不快感を示し「IOCの指導で長年やってきた」と正当な権利を主張した。

FIRSは今年2月にスケートボード委員会を立ち上げたばかり。ISFも複数ある国際団体の1つで、国際陸上連盟や国際サッカー連盟のように大きな組織ではない。どちらが主導権を握るかでルールが変わる可能性まである。巨大な利権と団体の未来を考え、どちらも必死だ。

JRSFは「上(国際競技団体)がどうでも、スケートボードを統括する」と話すが、仮にFIRSが脱落すればスケートボードを管轄する必要もなくなる。選手には関係のない「上」の争い。ここが落ち着かないと、前には進めない。

<スノーボードも独自文化に苦戦>

今や冬季五輪に欠かせない種目となったスノーボードだが、初採用された98年長野五輪前にはスケートボードと同じ騒動があった。IOCが運営を託したのは承認団体の国際スキー連盟(FIS)で、スキーの1種目として行われた。当時あった国際スノーボード連盟(ISF)が未承認だったからだが、これによって両者の対立が激化。選手の囲い込みなどに発展した。

スノーボードもスケートボードと同じく独自の「文化」を持っている。五輪に染まることを危惧する選手たちは採用に反対し、複数のトップ選手は出場を拒否した。それでも、FISの管轄下で5大会を経て、五輪競技としての地位を築いた。24年大会以降もスケートボードが実施されれば、同じような道を歩むことになるかもしれない。

日刊スポーツ
http://www.nikkansports.com/olympic/column/edition/news/1602161.html



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