福井新聞

膝上まで積もった雪の中、警察官らが横一列に並び、細長い棒を雪に差し込みながらゆっくりと進む。「要救助者発見」「意識あり」―。警察、消防、関係機関が合同で行った雪崩に巻き込まれた遭難者を捜索する訓練を体験した。要救助者役も経験し、雪に埋もれ身動きが取れず、雪の恐ろしさを実感した。
訓練は、スキー場のコース外の手付かずの「バックカントリー」をスキーやスノーボードで滑走中、5人が雪崩に巻き込まれたと想定。大野署が18日、福井県大野市の九頭竜スキー場で開き、同署のほか福井県警、大野市消防本部、福井県スキー連盟などの約50人が参加した。バックカントリーはパウダースノーを滑り、独特の浮遊感が味わえることから人気が高まっている。一方で、必要な装備や道具を持たず山に入り、遭難する人が全国で後を絶たない。

「行動開始」の掛け声で訓練開始。圧雪車や雪上車で現場に向かった警察官や消防署員は、位置情報を把握する手のひらサイズの機器「ビーコン」で要救助者が埋まっている位置に近づいた。1、2メートルまで接近すると長さ約3メートルの金属製の「ゾンデ棒」を雪に差し込み、その感覚を頼りに要救助者の居場所を突き止めた。

「名前は」「動かしづらいところはないですか」などと要救助者に次々質問。軽い凍傷やねんざなどの軽傷者は署員が体を支え、雪上車などで搬出。骨折などの重傷者は、スノーボートに載せて運び、県警ヘリ「くずりゅう」で引き上げた。

記者は、ゾンデ棒での捜索を体験。横一列になって深さ約50センチの新雪に足を取られながら、棒で開けた穴に足を重ねるようにして傾斜30度ほどの地面をゆっくり進んだ。「棒は垂直に入れて。その先が要救助者の目かもしれないので、力を入れずにそっと」と県警地域課の山岳遭難救助準技能指導官、小野田靖典警部補。すると、棒の先が何か軟らかいものに当たった。「遭難した人かもしれない」―。足元の雪を必死でかき分け、要救助者役の署員を助け出した。

「雪に埋まってから救い出すまでのタイムリミットは約15分。それ以降は生存率がぐんと下がる」(小野田警部補)。要救助者が、ビーコンなど位置情報を発信する機器を携帯していなければ、広い雪山をゾンデ棒だけで探し回ることになる。大野署の高橋剛志警備課長は「バックカントリーは圧雪していないため雪崩が起きやすい。危険な場所だということを知ってほしい」と訴える。

記者は、要救助者役も体験。横になり、足先から肩までが雪に埋まると、15センチほどの深さでもまったく身動きが取れなかった。天候が悪く、すぐに救助に向かえなかったら、もし要救助者がビーコンを持っていなかったら―。雪山の怖さを思い知った。

小野田警部補は「九頭竜スキー場までは県警ヘリで約20分、大野署から車で約40分かかり、到着した時点でタイムリミットの15分を超えてしまう。バックカントリーには、知識と装備のある同伴者と必ず2人以上で入って」と話した。

(写真:ゾンデ棒を雪に差し込み、遭難者(手前)の捜索を体験する記者(左から2人目)=1月18日、福井県大野市の九頭竜スキー場)

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