あの大手術を乗り越えたクリス・クルーグが銅メダルを獲得したぞ。
(2/17日刊スポーツより)
死の恐怖を乗り越えた男が今、金にも勝る銅メダルを手にした。スノーボード・男子パラレル大回転で、
19カ月前に肝臓移植を受けたクリストファー・クルーグ(29=米国)が3位に食い込んだ。

Chris Klung.

ドナー(臓器提供者)は銃で頭を撃たれた13歳の少年。
「人生最高の日だ」と喜んだクルーグは、少年とその家族に感謝の言葉をささげた。
生きようと懸命に努力する姿勢は、移植を待つ人たちに勇気と希望をもたらした。
 「1年半前は死ぬかと思っていた。それなのにメダルを取れるなんて…」。
感動のドラマがパークシティー・スキー場を舞台に、展開された。
予選を11位で通過したクルーグは、決勝トーナメント1回戦をわずか0・05秒差の辛勝。
準々決勝、3位決定戦とも、1回目は相手にリードされた。しかし、決してあきらめずに逆転。
自身の生き方そのもののレースだった。「奇跡だ」。この言葉を何度も口にした。  00年7月末、コロラド州アスペンにある病院の手術室で、死の恐怖と闘っていた。
98年長野五輪大回転で6位入賞。そのころから、病魔に襲われていた。
硬化性胆管炎、1万人に1人という深刻な肝臓病。
00年5月、症状が悪化し、移植リストに名を連ねた。なかなか順番が回ってこない。焦燥感が募る。
ようやく順番がきたのは2カ月あまり、たってからだった。  クルーグを救ったのはデンバーに住む13歳の少年だった。銃で頭を撃たれ、脳死状態になった。
少年の両親がドナーになることを承諾。手術は成功し、絶望のふちからよみがえった。
「臓器を提供していただいた家族に感謝します」。その冬からW杯に復帰。
今季序盤は不調で、五輪代表の座が危ぶまれたが、少年の死をむだにはできない。
「何度もあきらめかけた。でも、まだ終わっていない」と気持ちを奮い立たせた。  移植を待っている人たちは8万人を超えるという。「彼らに生きる希望を与えられたと思う」。