頂上を目指し、富士山の9.5合目付近を登る登山者たち=2014年5月17日、静岡県富士宮市(早坂洋祐撮影)昨年(2013年)夏には31万人が登山に訪れるなど、世界文化遺産登録で注目を集める富士山(3776メートル)。

初夏に入り雪の残る富士山でも、登山客やスキーヤー、スノーボーダーでにぎわっている。しかし、大型連休以降、遭難が相次ぎ死者行方不明者は3人にも。救助関係者は過熱気味の人気に複雑な表情だ。
2月の大雪が今も5合目付近まで残る富士山。例年、山開きは7月1日だが、週末の富士宮口5合目には午前6時ごろには40台ほどの車が並び、登山者は冬用のジャケットを着込み続々と出発した。

スキーを背負って7合目付近の斜面を登る登山者雪の斜面にはガイドや経験者を先頭に、ピッケルやアイゼンを装備した登山者が列を作り、ざっと数えただけでも150人ほどを確認。夏の登山道は雪の下に隠れてしまうが斜面をまっすぐ登ることも可能で、頂上へは夏登山とあまり変わらない6時間ほどで到着していた。

頂上の剣ケ峰で記念写真を撮っていた西野朝子さんは、25年以上富士山を登っているが最近は毎年5、6月ごろに富士山に登るという。「夏のような渋滞もなく、残雪の美しい景色が見られる」とこの時期の登山の魅力を話す。

≪スキー・スノボ目当ても 滑落に注意≫

都心から近く初夏までたっぷり雪が残る雪山として、富士山にスキーやスノーボードを担いで登る人も少なくない。都内から友人とスキーに来た30代の男性は「最近、スキー場のゲレンデ外を滑る山岳スキーに行くことが増え、ぜひ日本の最高峰からも滑ってみたかった」と話した。しかし、スキーに向いた滑りやすい山ではない。静岡県警で山岳遭難救助を担当する地域課の奥田交治次席は「頂上直下では45度近い急勾配になり、氷った急斜面をスキーで滑るのはかなり難しい」と話す。

スノーボードで斜面を下る登山者。滑落停止のため、手にはピッケルを握って滑っていた=2014年5月17日、静岡県富士宮市(早坂洋祐撮影)ガイドや経験者らは、9合目からスタートしたり氷が溶ける正午以降に滑るなどしていた。また、スキーより滑落停止がしづらいスノーボーダーは、ピッケルを手に滑っていた。それでも、5月4日には山頂の剣ケ峰付近でスノーボードをしていた千葉県船橋市の自衛官(23)が火口に滑落して死亡する事故が起きた。

2012年の夏山期間(7〜9月上旬)以外の遭難事故数は10年前の倍にあたる27件に増加していて、県警では入山者数自体も増えていると見る。さきほどのスキーヤーもスキー歴が10年を超えるが、「登山靴やピッケルを使った本格的な登山は初めて」と話すように、登山技術のない初心者の入山も増えている。過去にはスニーカーで登り、途中で動けなくなって警察に保護される遭難事件も起きている。

静岡、山梨両県などで作る「適正利用推進協議会」では、夏季以外は十分な装備や経験がない人の登山を禁止しているが、法的拘束力はない。奥田次席は「凍った斜面で転倒すると数百メートル滑落することもある。登山計画書を出し十分な装備、技術、体力で臨んでほしい」と話している。
(産経新聞)