福岡県飯塚市の練習場でジャンプの確認をする鬼塚雅2018年平昌冬季五輪スノーボードでの活躍が期待される15歳の逸材が、熊本にいる。

4月初旬に北海道で行われた全日本選手権で、熊本・ルーテル学院高1年の鬼塚雅(バートン)が、初めて実施されたスロープスタイルの初代女王に輝いた。

昨季はソチ冬季五輪を目指して、昨年12月に米国コロラド州で行われたワールドカップ(W杯)に出場したが予選落ち。悔しさを胸に秘め、鬼塚は五輪金メダルの目標に向かって突き進んでいる。
■専属コーチなし

いよくジャンプ台から飛び出し、華麗に空を舞う。「国内では勝つことが最低条件」。15歳の鬼塚は全日本選手権の初代女王に輝いても喜びを見せない。世界で勝つという夢があるからだ。

スノーボードを始めたのは5歳。両親と遊びに行った福岡市の室内練習場で初めて体験し、週4回ほど熊本市の自宅から片道約2時間かけて同練習場に通った。両親が運転する乗用車の中で宿題をこなす生活も、苦にならなかった。

練習場にコーチはおらず「大人がやっているのを見て、教えてもらっていた」。1年後の清水小1年から自宅で腹筋100回など筋力トレーニングを始めた。障害物をクリアする技を競う「ジブ」の15歳以下の国内大会で準優勝し、翌年には優勝。8歳でスノーボード用品最大手のバートンと契約した。その時、やはり同社と契約した同学年のボーダーがいた。後のソチ冬季五輪ハーフパイプ(HP)男子銀メダリストの平野歩夢だった。

昨年はスロープスタイルが正式種目となったソチ冬季五輪を見据え、米国コロラド州で5度の合宿を重ね、大会でも実績を積んだ。ただスロープスタイルの場合、五輪につながるW杯の出場には15歳以上という制限があり、14歳だった鬼塚は10月の誕生日を過ぎなければ出られなかった。鬼塚は五輪前に唯一出場でき、優勝すればソチ行きの可能性もあった昨年12月のW杯に懸けた。だが大会4日前に左手首を骨折した影響などで予選落ち。悔し涙を流した。

それでも1月にスイスであった大会で、五輪出場選手を抑えて堂々の2位。強さを証明した。ソチはテレビ観戦。「何でここ(自宅)にいるんだろう」と寂しくなったという。さらに平野がHPで銀メダルを獲得し「(平野より)上を目指したい」と刺激を受けた。4月の米国での大会では再び五輪出場選手に割って入り4位。「トータルで考えたら、ソチに出た選手と互角に争え、ちょっとプラスのシーズンだった」と気を取り直した。

■大技1年で習得

4月、熊本市のルーテル学院高に入学。数々の強豪校から誘いを受けたが「ちゃんと勉強もしたいし、何より熊本が大好き」と地元に残った。4月から7月上旬は、福岡県飯塚市の練習場「福岡キングス」や長野県で練習を重ねる。現在も専属コーチは置かず、長野県在住の日本トップクラスのプロボーダー佐藤康弘氏(39)から、中学時代と変わらず大会前にアドバイスを受ける。空中で2回転半する大技「キャブナイン」も1年足らずでマスター。佐藤氏は「気持ちが強く、滑りのバランスやジャンプの高さ、空中での姿勢に優れ、世界のトップ5に入る選手」と目を細める。

「新しい技を一つか二つ身に付けたい。トレーニングも増やし、海外選手に負けない体格になりたい」。19歳で迎える平昌五輪での夢「金メダル」を見据えて羽ばたく。

(西日本スポーツ)