富山県と長野県を結ぶ「立山黒部アルペンルート」が先月半ばに全線開通して、雪壁がそそり立つ「雪の大谷」や銀世界の室堂平を見ようと、観光客が訪れるようになった。が、ここはまだ厳冬期に近い。

5月中旬、午前9時の平均気温は5度。6月までは雪崩やホワイトアウトなど天候の急変による遭難事故の危険があるため、この周辺で登山やスキーやスノーボードをする場合、入山届の提出が必要だ。
来月公開される木村大作監督の映画「春を背負って」は、この時期の「雪の大谷」を冒頭に登場させ、観客を一気に立山に導いて、大自然の妥協のない厳しさも、雄大な美しさも描ききった傑作。

木村監督といえば、剱岳を舞台にした新田次郎原作の「剱岳 点の記」が印象深かった。5年前の作品だが、その後も山岳を舞台にしたハードな撮影にこだわり続け、ついにこの作品に結実したという。

物語は、東京で働く長嶺亨(松山ケンイチ)が、山小屋を営む父の死を契機に、田舎に戻って山小屋を受け継ぎ、経営者として生きていくというもの。小屋のスタッフ高澤愛(蒼井優)や、多田悟郎(豊川悦司)らとともに繰り広げるホームドラマだ。

舞台となったのは大汝山の稜線にある大汝休憩所で、菫小屋の名で登場。5月の小屋明け準備から、11月の小屋閉めまで描かれる。東に鹿島槍、北に剱岳、西に奥大日岳、南に槍ヶ岳。その山々が彼らを祝福する。
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