ちょうど、この第40回の下書きをはじめた矢先、自称作曲家・佐村河内守によるゴーストライター問題がマスコミで報じられた(かつて考古学の分野でも自称考古学者・Fによる石器捏造事件があった/第7回参照)。

この問題が今後どう推移するかは不明だが、音楽関係者のみならず、人は誰もが「勝ち馬に乗る」傾向と、「臭いもの(不都合なもの)には蓋をする」傾向がある。
さて、「臭いものには蓋」といえば、3度のオリンピックで大活躍したヌルミは一時は陸上競技の関係者から絶賛され、「走る人間機械」という文章にまとめられて『五年生の国語 中』に掲載されていたが(前回参照)、驚くことに、ヌルミ自身が晩年、「世界記録を樹立し、オリンピックで金メダルを得る目的で、薬物を常用していた……」などという意味の発言をしたととり沙汰されている。

当時はドーピング(危険薬物)に対する規制が緩かったものとみられているが、オリンピックで金メダル9個という驚異的な強さの秘密は、薬物だったのであろうか。事実とすれば嘆かわしいという他はない。

少し脱線するが、嘆かわしいといえば昭和時代にオリンピックに出場した日本のある元女子体操選手に関しては、まるで年中行事のように覚醒剤や大麻使用による逮捕、有罪、収監がテレビ、新聞などで報じられている。逮捕の回数は7回に及んでいるというから、「あいた口が塞がらない」とはこのことをいうのであろう。

なお、ドーピングなどというのは遠い外国の話と思いがちである。幸いなことに、これまで日本人のオリンピック選手がドーピングでメダルを剥奪されたなどという事例はないが、2004年のアテネ大会(ギリシャ)・男子砲丸投げでは第1位のハンガリー選手がドーピングで失格し(※)、日本の室伏広治が繰り上げで金メダルとなった。

これより先、1998年の長野大会(冬季)では、スノーボード男子大回転で金メダルを獲得したカナダ選手が大麻を使用していたことが判明したものの、メダルは?奪されていない(※※)。

いずれも、実に後味の悪い事件だが、真偽不明のDNA注射等の噂もとり沙汰されており、この種の問題は確実にオリンピックを蝕んでいるといっても過言ではあるまい。

いずれにしても、教科書は「勝ち馬に乗る」のを戒めつつ、スポーツのドーピング問題、あるいは昨年わが国で大問題となったスポーツにおける体罰問題に関して「臭いもの(不都合なもの)には蓋をする」ことなく、頁を割いて貰いたいものである。


※ドーピングで失格し=正確には検査の際に他人の尿を提出したことを咎められ、失格、金メダルはく奪となった。
※※金メダルははく奪されていない=IOCは金メダルを?奪する方針を表明したが、何と母国のカナダが大麻を禁止していないという理由で、結局、金メダルははく奪されなかった。

(歴史人)