2014年2月11日、アイルランドのシーマス・オコナー(Seamus O'Connor)選手がスノーボード男子ハーフパイプの準決勝で転倒。 (GETTY)冬季オリンピックの選手たちは融雪による安全上の問題について相次いで懸念を表明し、アメリカのスノーボーダー、ショーン・ホワイト(Shaun White)氏とハンナ・テーター(Hannah Teter)氏はハーフパイプでの状況を例に挙げている。

先週「USA Today」紙のインタビューでテーター氏は、「ちょっと危険。今シーズン私が見た中で、今日は最も多くの人が転倒していた」と語った。
スキーの金メダリスト、ボード・ミラー(Bode Miller)氏は、彼とほか10人の選手が怪我を避けるため練習を放棄した9日のスロープの状態について不安を露わにした。

「もし完全に集中して注意を払わなければ、このコースは死の危険を伴う」と、英「BBC」に対しミラー氏は語った。実際、融雪を理由に今週いくつかの練習走行がキャンセルされている。

道沿いにヤシの木が立ち並ぶ黒海に面した亜熱帯のリゾート都市ソチでは、この時期、穏やかな天候は少しも予想外ではない。

組織委員会は、スノーボード、スキー、ボブスレーやそのほかの屋外競技が行われるソチの北東42キロに位置するクラースナヤ・ポリャーナ山岳エリアが寒くあり続けることを祈っていた。

しかし、母なる自然は別の計画でもって、人工雪の製造と維持の限界を際立たせた。「最初の週末、雪の会場は実に見事だった」と、今回400台の人工降雪機をソチに提供したアメリカ、ミシガン州のスノー・マシーンズ社(Snow Machines, Inc.)の社長、ジョー・バンダーケレン(Joe VanderKelen)氏は述べた。「青い空、冷たい空気、雪に覆われた山々がそびえ、素晴らしく見えた」。

「しかし、気温はこのところ摂氏10度近くまで上昇した。それは融雪が起こることを意味している」。

◆雪の備蓄

バンダーケレン氏が提供した人工降雪機は、外気温が摂氏マイナス1度よりも低い環境で1分間に最大45.4立方メートルもの雪を製造することができる。

ソチオリンピックの雪準備チームは昨年12月、人工降雪機を使ってスロープを雪で覆った。以来、降雪機は使用されていない。

「その後コース用に追加の雪を造る必要は無かった」と、ソチオリンピックで公認雪コンサルタントを務めるミッコ・マルティカイネン(Mikko Martikainen)氏は語った。

ただし、今週の気温上昇に伴って600立方メートルの雪が補足されたルスキエ・ゴルキ・ジャンピング・センター(RusSki Gorki Jumping Center)は例外だ。

「すべての会場に競技を行うだけの十分な雪があった。12月は寒かったので、必要な量の雪を製造することができた」と同氏は述べた。

もっと必要なら、マルティカイネン氏には71万立方メートルの雪の備蓄がある。その雪は山肌を覆うのに使用される予定で、2010年バンクーバー大会でのヘリコプターによる雪の空輸を想い出させる。

6日の時点で、雪準備チームはオリンピック開催前にベースとなる層を作るため、備蓄された雪を一度だけ使用したと同氏は説明。備蓄のより広範囲に及ぶ使用を指摘するメディアの報道に反論した。

「13日、スキージャンプとノルディックのトラックでは気温が14度あったが、非常に良い状態で管理され固められた雪で、完璧なトラックだった」と同氏は付け加えた。

ポーランドのスキージャンプ金メダリスト、カミル・ストッフ(Kamil Stoch)氏や、12日夜、ルスキエ・ゴルキ・ジャンピング・センターで転倒し負傷したロシアのミハイル・マクシモチキン(Mikhail Maksimochkin)氏から、スキージャンプのトラックに関する苦情があった。だた、彼らの転倒が融雪に関係があるかどうかは明確ではない。

◆雪のメンテナンス

温かい気候で雪を造ることは、戦いの前半戦にしか過ぎない。斜面を人工雪で覆った後、コース準備チームは融雪を防ぐための水と化学薬品を施さなければならない。

冬季オリンピックでは雪を準備する専門家たちが長い間起用され、クラースナヤ・ポリャーナやエストサドク、ロザ・フトル・アルパイン・センター、ラウラ・クロスカントリースキー&バイアスロン・センターを含むソチ周辺の複数のイベント会場を管理する様々なチームが割り当てられている。

コースを準備するチームは、雪をベースとした競技すべてのスロープやトラックを含む各会場の技術的な問題を担当している。今週、男子スノーボード競技の決勝前、彼らがハーフパイプに水を撒いている姿がテレビに映し出された。

「決勝の前からかなり雨が降っていたが、競技を行うには十分安全と判断した」と、マルティカイネン氏は述べた。「その際、コース準備チームは水と塩をベースにした化学薬品を撒いた」。

化学薬品は濡れた雪を固めるのに利用される。過剰に撒布されると、雪が乾いて砕けやすくなる。もし十分でない場合、スロープは半解けの状態となる。

(ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト)