ソチ五輪に出発する直前、平野歩夢選手は高橋恒行さん(左)に五輪の公式服を着て出場報告した=山形県小国町の横根スキー場で2014年1月30日午前11時1分、山本愛撮影◇コース整備・高橋さん、5メートル雪壁で応援 4歳で出会い「この子は天才」

ソチ冬季五輪で11日、日本人最年少メダルをかけてスノーボードの男子ハーフパイプ(HP)に挑んだ新潟県村上市の中学3年生、平野歩夢(あゆむ)選手(15)=バートン。4歳から県境を挟んで隣り合う山形県小国町の「横根スキー場」に通い、高さ6メートルを超える最大の武器のエア(空中技)に磨きをかけてきた。

横根スキー場でコース整備を担当し、長年、平野選手の良き相談相手となってきたのは、孫と祖父ほど年齢の離れた高橋恒行さん(62)だ。あどけなさを残しつつも、大舞台にものおじしない平野選手に「やっぱり、この子は天才」と目を細めた。
横根スキー場は、1990年にハーフパイプコースが設けられ、「日本初の常設公式パイプ」として知られる。平野選手は、サーフショップを経営する父、英功さん(42)に勧められ、スノーボードを始めた。練習環境の良さから当初から車で片道約50分かかる横根スキー場に通い、週末には午前10時〜午後5時の営業時間いっぱい練習を続けていたという。

約25年前から横根スキー場に従業員として勤務する高橋さんは、訪れた最初のころから黙々と練習に励む平野選手を覚えている。自分でもスノーボードをする高橋さんは「最初は自分より下手だったけれど、あっという間に追い抜かれた」と笑う。小学4年ごろには周囲のどの選手よりもコースから高々と飛び上がる姿を見て、「この子は天才。五輪にも行けるかも」と思ったという。

持ち前の高さのあるエアが生み出された理由の一つには、横根スキー場特有の事情もある。同スキー場のパイプ幅は約15メートルと、現在、海外の大会で使用されているものと比べて約4メートル狭い。「その分、飛ぶのは忙しいが、大きなパイプに対応できるテクニックを磨くことができたと思う」と高橋さんは話す。

日々のコース整備には平野選手の意見を取り入れた。特にパイプの端の「リップ」と呼ばれる部分の角度は、1度でも違わないように気を使い、夜遅くまで整備した。2年前にはジャンプの練習のため「クオーター」と呼ばれる約5メートルの雪壁も作った。そこで完成させたのが、平野選手の得意技で、体の軸をずらしながら横に3回転、縦に2回転する「ダブルコーク1080」という大技だ。

昨季はトッププロが集まる大会で、五輪2連覇中のショーン・ホワイト選手=米国=に次ぐ2位になり、一躍脚光を浴びた。今季はワールドカップ(W杯)に初出場し、1勝を挙げた。

3日、東京都内であった壮行会で、「五輪は夢の舞台。やっぱり足が震える」と中学生らしい素直な思いを口にした平野選手。初出場にも堂々とした滑りで、大きく羽ばたいた。
(毎日新聞)