「滑りの良いワックスで、ぜひ金メダルを」と期待する佐藤純一・ガリウム営業部長=仙台市で、斎藤有香撮影ソチ冬季五輪に出場するスキーやスノーボードの日本代表チームに、仙台市にある従業員11人の会社のワックスが提供されている。これまで欧州製のワックスが主流だったが、独自の配合で滑りの良さを実現した。従業員の小さな「失敗」から生まれ、五輪開催地のロシアなども使い始めた性能の秘密は−−。

ワックスを開発したのは、仙台市青葉区の「ガリウム」(結城谷行社長)。通常のワックスは、ろうそくの成分のパラフィンに、水をはじきやすいフッ素を混ぜて作るが、同社はさらに、半導体などに使われる金属のガリウム粉末を配合する。
この配合は「失敗」がきっかけとなった偶然の産物だ。約30年前、製錬会社の従業員が材料試験をしている時、ガリウム粉末を机の上にこぼしてしまった。慌ててふき取ったが、その表面が水をはじき、伸びがよく張り付く性質があることに気付いた。「これをワックスに混ぜてみては」。アイデアは製品化され、1994年にワックス会社として独立、社名にもなった。

クロスカントリースキー全日本チームの元コーチだったという同社の佐藤純一営業部長(49)は「上位の選手は技術や体力の差があまりなく、勝敗はワックス次第とも言われる」と話す。

滑りの良さの秘密は、ガリウム粉末が持つ静電気を逃がす働きだ。板や雪面に発生する静電気を逃がすことによって、ごみなどが付きにくくなり、滑りも良くなるという。試験では、スキーで70メートル滑降した時のタイムが、最大約0.1秒縮み、ガリウム効果が認められた。日本チームからも「板にしっかり浸透し、効果が長持ちする。低温の時ほど有効だ」と好評を得ている。

佐藤さんらは2月にソチ入りし、現地の雪質に合った配合を模索する。佐藤さんは「これまでも選手の努力を最大限に生かすワックスを作ってきた。ぜひ金メダルを取ってほしい」とエールを送る。
(毎日新聞)