北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は17日、金正恩第1書記が今月上旬、江原道の馬息嶺スキー場造成を急ぐよう指示する「アピール文」を発表したことを受け「銃弾、砲弾を作って前線に送る心情で鋼材やセメントなどの資材生産を進め、馬息嶺地区に優先的に送るべきだ」とする社説を掲載した。

ラヂオプレス(RP)が朝鮮中央放送の報道を伝えた。なぜそこまでレジャー施設のスキー場建設に執着するのかを調べると、若きリーダーの意外な野望が浮き彫りになった。

北朝鮮メディアは最近、難事業を急いで成し遂げるとの意味で「馬息嶺速度」との標語を盛んに宣伝。同スキー場建設は正恩氏が指導する国家建設事業の象徴のように扱われている。

先軍政治の北朝鮮なのに、なぜ娯楽施設のスキー場建設が国家的事業なのか。
東アジア情勢に詳しいジャーナリストの南郷大氏は「うがった見方をすれば金正恩は、スキー場を利用して韓国との関係改善を狙っているのかもしれません」と意外な推測をする。

韓国では5年後に平昌で冬季五輪が開催されることになっている。韓国は1988年にもソウル五輪を開いており、ライバル北朝鮮としては、二重にメンツを潰された格好になっている。ところが、ここにきて平昌五輪の開催が危ぶまれているという。

「平昌は本来、韓国の中ではウインタースポーツの盛んな土地だったのですが、地球温暖化の影響で近年、冬場の積雪量が激減しているのです」と南郷氏。

肝心の雪が降らなければ、確かに冬季五輪開催はピンチだ。どこからか運ぼうにも、雪の豊富な北は、いがみ合っている敵国。こんな事態を正恩氏は想定しているという見方だ。

「雪がなければ冬の競技ができませんから。そこで北朝鮮は馬息嶺に建設するスキー場を提供することを条件に、韓国へ五輪の共同開催を持ちかけるつもりなのでしょう」(南郷氏)

実際、北朝鮮はソウル五輪の際も韓国に共同開催を申し入れた過去がある。しかし実現せず、平昌五輪の共催を韓国側が認めても、五輪を主催する国際オリンピック委員会(IOC)の承認が必要となる。一方で、平昌五輪が開かれる5年後は、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の任期が切れる年でもある。朴大統領が最後を飾って、北朝鮮との和解のセレモニー実現に動く可能性は高いかもしれない。

南郷氏は「そこまで考えた上でのスキー場建設だとすると、金正恩は案外と食えない人物だと言えるだろう」と指摘している。

冬のスポーツの祭典と雪によって、冷え切っていた「南北関係」が氷解すれば、それはそれでドラマチックな歴史的出来事になることは間違いない。ただ、スイスに留学経験のある正恩氏が、「スキーの技量に自信があり、設備の整ったゲレンデでさっそうと滑る様子を見せれば、国民の間でイメージが向上すると考えているのかも」(南郷氏)という見方もできるだけに、現時点ではまだ何ともいえないが…。
(東スポweb)