たったひと言のツイートが、世界中を駆け巡るスキャンダルに――。多くの選手にとって、五輪出場の栄光はそんな危険と隣り合わせだ。国際オリンピック委員会(IOC)からは選手たちに、交流サイト(SNS)利用の心得を示すハンドブックが配られた。

米国の女子ハードル五輪代表、ロロ・ジョーンズが、雑誌のインタビューで「処女を守る大変さ」を語った。英国の競泳選手、レベッカ・アドリントンは、容姿を批判するコメントがストレスになるとしてツイッターをやめた。――少し前ならそれほど騒がれることもなかった情報が、SNSで大々的に流れてしまう。

五輪のような大会の前には、従来のメディアも出場選手の素顔を紹介する記事や番組を流してきた。家族とのドラマや乗り越えてきた試練、食事制限や訓練メニューなどが明かされた。だがこの数年、大衆誌や市民ジャーナリズム、さらにSNSの急速な広がりとともに、伝えられる情報の内容は変化している。

西シドニー大学のデービッド・ロウ教授によると、こうした変化の結果、近年の選手には品行方正を求める強いプレッシャーがかかるようになった。

SNSへの投稿が思わぬトラブルを招いたケースは珍しくない。
オーストラリアの競泳選手、ステファニー・ライスは最近、24歳の誕生日にデザイナーの友人からビキニをプレゼントされ、それを着た写真をツイッターに掲載した。露出度の高いビキニ姿は即座に批判を呼び、五輪代表チームから外すべきだというコメントまで飛び出した。
ライスは2008年にもフェイスブックで婦人警官のコスチューム姿を披露し、10年には同性愛者への差別表現を使ったツイートで物議を醸していた。

同じオーストラリアの男子競泳選手2人が先月、銃を構えた写真を掲載して批判を浴びたこともあり、同国の水泳連盟は「選手たちによるフェイスブック、ツイッターなどのソーシャルメディアへの不適切な書き込み」を容認しないとの声明を発表した。

08年の北京五輪で8個の金メダルを獲得した米国の競泳選手、マイケル・フェルプスは同年、大麻を吸っているとみられる写真を英大衆誌に掲載され、「不適切な行動だった」と謝罪した。

10年バンクーバー冬季五輪のスノーボード男子ハーフパイプで銅メダルを取った米国のスコット・ラゴは、現地のバーでメダルを腰に巻き付け、女性にくわえさせている写真がネット上に流出。非難を浴びて緊急帰国した。

五輪選手150人と契約した実績を持つスポーツエージェント、エヴァン・モーゲンスタイン氏は「何気ないひと言やプライベートな瞬間が、一瞬でスキャンダルになってしまう。後始末をどうするかが重要だ」と話す。

選手たちが不必要な騒ぎに巻き込まれることなく競技に集中できるよう、国際オリンピック委員会(IOC)は昨年末、SNSに関するハンドブックを配布した。
競技の映像を公開しないこと、選手村からの書き込みはしないこと、企業のスポンサーや宣伝にはIOCの許可なく言及しないこと、五輪のマークや「オリンピック」という言葉は使わないこと――といった心得がIOCのハンドブックには列挙されている。

西シドニー大のロウ教授は「かつてのようにスポーツ選手が自分自身でイメージを管理するのではなく、SNSや大衆誌がイメージを決める時代になった」と指摘する。

同教授によれば、五輪ファンの中には、競技より選手のプライバシーに興味を示す人もいる。一部の人々に、栄光の座から転落する選手を見て楽しむ習性がみられるのも事実だ。

五輪はもともとアマチュアの祭典と呼ばれ、出場しても金持ちや有名人になるものではなかった。「だが10年ほど前から、選手がスターとなるケースが出てきた。一気に祭り上げられたかと思うと、同じ勢いで突き落とされるのが、スターの宿命だ」と、ロウ教授は話している。
(CNN)