スキー場外滑走者に注意を促す看板。スノーボーダーは「場外を滑るのはフワフワな浮遊感が楽しい」=野沢温泉スキー場<br>
新雪の上を思いっきり滑ってみたい――。そんなスキーヤーやスノーボーダーたちの遭難事故が今季、相次いだ。「自己責任」とする滑走者に対して、各スキー場は口をそろえて危険性を指摘する。一方で、新雪の滑走を売りにするスキー場も出てきている。

全国で唯一の「スキー場安全条例」がある野沢温泉村。野沢温泉スキー場には、至る所に目立った赤色の字で書かれた「コース外滑走禁止」の看板が立つ。しかし、看板を目にしながらも、新雪に入っていく滑走者も少なくない。

神奈川県から来たスノーボーダーの男性(30)もその1人。条例は知っているが「誰も滑っていない新雪を滑る。浮遊感や、木々の間をうまくすり抜けるのはスリルがあって気持ちいい。(場外滑走は)自己責任で」。さらに「天気のいい日には、コース内を滑る人とコース外を滑る人の比率は半々」と現状を話す。

しかし、その楽しさは危険と隣り合わせだ。
先月2日、このスキー場近くで東京都や埼玉県のスノーボーダー3人が遭難した。命は無事だったが、スキー場の救助隊員などが捜索に出動した。条例に基づき、3人には、救助に携わった人件費など約80万円が請求される。

コース外の滑走について、「自己責任では済まされない」とするのは、条例の発起人の一人、野沢温泉スキー場の河野博明社長(60)。たとえ、スキー場外であっても、遭難の連絡が入れば、人道上、救助に行かざるを得ない。場合によっては二次遭難の可能性もある。「本当の『自己責任』とは、誰にも救助されず死ぬということ」と厳しい。

雪崩の危険性を指摘するのは白馬村観光局だ。

同村では先月28日、スキー場外を滑っていた奈良県の男性スキーヤー(51)が雪崩に巻き込まれて死亡した。同局によると、整備されていない雪山を滑ることで雪崩が起きる可能性がある。場合によっては、その雪崩がスキー場内にまで及ぶ危険性があるという。

同局の担当者は「昔から自然の冬山を滑るバックカントリースキー(山スキー)はある。だが、それは冬山登山ができる人が、きちんとした装備を持っていくもの。スキー場に遊びに来た、リスクを知らない人が場外に出るのは危険過ぎる」と話す。

このため村内のスキー場では、場外滑走者はリフト券没収というローカルルールを設けている。

場外滑走者が後を絶たない中で、手軽にバックカントリーを楽しめることを売りにしているスキー場もある。

高山村の「YAMABOKUワイルドスノーパーク」は非圧雪の新雪地帯を約70%にし、「ゲレンデにいながらにして山スキー感覚が楽しめる」とうたう。

元々、牧場を利用したスキー場で造成したコースがない。ゲレンデ内には立ち木があり、あえて圧雪をしないことで、バックカントリー感覚が味わえる。

新雪用の浮力の大きな太めのスキー板をレンタル用にそろえ、ガイドもつく。スキー場を経営する南志賀開発の関谷小一郎社長(47)は「安全に滑られる範囲でバックカントリー気分を楽しめる『チョイ冒険』がコンセプト」。利用者からは「自然の中を自由に滑られ、ストレス発散になった」という声も聞かれ、経営改善にもつながったという。

ただし、こちらも「コース内を滑るのは最低限のルール」と、関谷社長は釘を刺す。
(asahi.com)