「アイスモンスター」と呼ばれる山形の冬の風物詩「樹氷」=2010年2月8日、山形市の蔵王温泉スキー場スキー場や温泉で有名な山形・蔵王。とりわけ、全国屈指の美しさとされる樹氷は、厳冬期の観光客を楽しませている。ところが、その樹氷が、40年後には消滅するかもしれない−という危機にさらされているのだという。

山形大学理学部の柳沢文孝教授(地球化学)に、そのメカニズムを聞いてみた。

柳沢教授は、100年ほど前から現代までの論文や新聞記事などの文献、山形県の気温の変化、蔵王の樹氷の推移から、環境汚染などを研究している。

樹氷ができるのは、アオモリトドマツなどの常緑の針葉樹だけで、落葉広葉樹にはできない。また、着氷と着雪のもとになる、過冷却水滴と雪片が多くあり、常に一定の方向からの風が必要だ。

気温が高すぎても低すぎても、雪が多すぎてもできにくいという気象上の要因が複合的に重なり、神秘的な風景が作られる。蔵王では現在、標高1550〜1600メートル付近で見られる。
柳沢教授によると、樹氷は1914年2月3日のスキーによる熊野岳初登頂の際に、1400メートル付近で発見されたという。当時は「雪の坊」「雪コブ」と呼ばれて次第に有名になり、16年には日曜ごとに探検が行われたという記録が残っている。

現在の樹氷は通常、2月初めに見頃となるが、39年の記録には12月9日に出現したとの記録が残っていた。「1930年代後半から45年にかけて平均気温が低くなった時期がある」(柳沢教授)。

だが、戦後の47年から平均気温は再び上昇に転じており、100年間で約2度上がっているという。

気温の上昇は樹氷の標高も押し上げ、80年代には1500メートル地点、90年代には1550メートル地点まで上がってきている。

「樹氷は現在、1550〜1600メートル地点で見られる。1700メートル以上になると、樹氷のできる樹木がないので、このまま温暖化が進んでさらに1度上昇すれば、単純計算で約40年後には蔵王で樹氷が見られなくなる」

樹氷は環境を知るバロメーターにもなるという。

「最近は酸性雨(雪)が多くなっている。中国から流れてきた硫酸が原因と思われる。見た目は真っ白の蔵王の雪が、水になると黒っぽいのはそのためです」

酸性雪が溶けて一気に硫酸が流れ出せば、湖や川の魚が死に絶える「アシッドショック」を引き起こす要因にもなるという。

「日本は土壌が厚いので急にはないでしょうが、土壌が酸性化して植物が弱っていくことにもなる」

人間の知らないところで、確実に温暖化の弊害は起きている。
(産経新聞)