◇04年閉鎖から手つかず、来春にも撤去開始

経営不振で閉鎖した比良山スキー場(大津市北比良)の跡地が土砂崩れし、大量のごみが露出している問題で、京阪電鉄は年内にもごみ撤去の計画書をまとめ、来春をめどに着手する方針を決めた。比良山系のふもとから山中を歩いて片道3時間半かかる現地は人目に触れにくく、登山者による初確認から2年を経てようやく事態が動き出した。雪に閉ざされる前に、登山者に同行して現場に入った。

■険しい山中に残るリフト跡

息が上がり、濡れた岩で足元が揺らぐ。聞こえるのはチンチンというクマ鈴の音だけ。かつてあったリフトやロープウエーが20分ほどでまたいだ山中は、ブナなどの自然林や曲がりくねったスギの巨木が続く急斜面だ。中腹に転々と残るコンクリートのリフト跡が半ば恨めしい。一帯は県が管理する国定公園だが、ふもと以外にトイレもなく、行き先を示す立て札が落ちた場所もある。

スキー場は1961年、ロープウエーをかけた「比良索道」(解散)が山系で最も高い武奈ケ岳(標高1214メートル)近くで開業。高層湿原の広がる八雲ケ原の一部約2500平方メートルを埋め立ててゲレンデ化したが、利用減から04年3月末に閉鎖された。各施設も同社の親会社・江若鉄道を買収した京阪が07年11月までに撤去した。
「コンクリート化された部分をすべて撤去したら土砂崩れが起こる。この場所の開発の歴史として受け止めるしかない」。同行してくれた滋賀山友会の金原敏幸さん(61)=草津市=が言う。

■地層のようなごみ

ゲレンデ跡に近づくと、意外にも多くの登山者とすれ違った。今は更地となったロッジの玄関先にあたる松の木の木陰には、大きなリュックを背負ったカップルの姿もある。

だがそんな光景と対照的に、ロッジ裏には深さ3メートル、長さ15メートルほどの大穴ができていた。周囲は山を削って造成した白砂で、斜面を踏みつけると簡単に崩れていく。崩れた穴の下に回ると、まるで地層のように大量の酒瓶や空き缶、割れた皿などが埋まっていた。食器には「HiraLodge」のロゴ。宿泊施設でもあったロッジの廃棄物らしい。8割ほどは酒の容器で、缶のプルタブの形やビールの銘柄から、遅くとも80年代から捨てられていたとみられる。崩れた先は急斜面で、ごみが砂ごと流れていった様子がうかがえた。

■油の浮く高層湿原

ススキの白い穂が揺れるゲレンデ跡の八雲ケ原には、京阪が造成した池が広がり、登山者らの休憩場所になっている。あちこちにイモリが浮かび、まるで自然公園のようだ。

しかし、朽ちかけた桟橋が架かる湿原に踏み込むと、風景が一変した。水面はどこからかわいた油でギトギトと光り、斜面から流れ込んだ白い砂に茶色いさび色がにじむ。生き物の姿は見えず、底に見えた白い物体はどんぶりの破片。せせらぎだったと思われる場所は白砂で埋まり、一升瓶の破片や古い空き缶が転がる。

「ここに来るたびに風景がひどくなる。強い雨が降るたび、崩れた砂が流れ込んでいるんだ」と金原さん。流れ込む砂をたどって上ると、人が踏み込めない険しい場所まで、せせらぎに沿って絶え間なくガラス片や缶が転がっていた。いずれも原因はロッジ裏のごみのようだった。



険しい山中に広がった大量のごみを完全に撤去するのは至難の業だ。自然環境に誰もが無頓着だった時代があったのは否定できないが、今を生きる私たちには、少しずつでも当時の過ちを清算していく覚悟が求められる。
(毎日新聞)