新作ウエアのインナー。部分的に素材の締め付け力を変え、安定した姿勢補助を可能にした(デサント提供)■デサント 過酷な競技「鍛錬」の場

急な斜面を一気に滑り降りるダウンヒル(滑降)やスラローム(回転)などのアルペンスキー。ときにスピードが時速100キロを超え、100分の1秒差で勝敗が決まることも珍しくないこの競技は、選手に超人的なテクニックや強靭(きょうじん)な精神力を求める一方、選手に用具を提供するスポーツ用品メーカーにとっても「鍛錬」の場となってきた。

今年2月のカナダ・バンクーバー五輪。日本代表の皆川賢太郎選手は、デサントが総力を挙げて開発したウエアを身にまとってスラローム競技に臨んだ。このウエアは従来と全く異なる発想の下で開発されたものだった。

従来ウエアは、「空気抵抗をいかに減らすか」を最大の開発ポイントとしてきた。これに対して、デサントはそれに加えて選手のパフォーマンスを最大限に引き出すことを重視した。競技中の筋肉の動きや姿勢制御を効果的にサポートするウエアを目指したのだ。
従来のウエアがワンピースだったのに対し、動きやすさを考え、上からジャケットを羽織るツーピースとした(デサント提供)その結果として生まれたのが、「e−ライナー」と呼ぶインナーウエアだ。このインナーは、部分的に締め付ける力を変えることで、姿勢を安定させるように設計されている。デサントはこれをスキーウエアのインナーとして採用。さらに動きやすさを考え、上下一体のワンピースだった以前のスーツと違い、袖のないランニングシャツとパンツを一体化したスーツに、薄いジャケットを上から羽織るツーピースタイプとした。

「これによってワンピースの欠点だった突っ張り感がなくなり、下半身の安定性と上半身の運動性が両立できた」

開発にあたった企画開発部R&Dセンターの板垣良彦さんは胸を張る。

さらにこのウエアはもうひと工夫、加えてある。イルカの皮膚をヒントに開発した素材を使っているのだ。

今年のバンクーバー五輪に日本代表として臨んだ皆川賢太郎選手。着用するウェアはデサントだ(同社提供)普段はつるつるしているイルカの皮膚は、速いスピードで泳ぐときだけ、表面に凸凹ができる。体の周辺にできる水の流れを整えて、抵抗を減らすためだ。

そこでイルカの皮膚を参考に、一定以上のスピードが出て、しかも生地が伸びた場合にだけ表面に凸凹ができる新素材を開発。空気抵抗を減らすのに成功した。

デサントは、ほかにもトカゲの皮膚やゴルフボールのくぼみに似た凸凹ができる素材を開発。バンクーバー五輪では、ウエアを提供したスイスチームから金メダリストも出た。

過酷な競技が生み出すウエア技術は今も進化を続けている。
(MSN産経ニュース)



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