ハッチョウトンボ◇保護図り野辺地の宝に 住民の熱意に町動く
日本一小さなトンボを町の宝に−−。野辺地町のまかど温泉スキー場で、ハッチョウトンボを守る取り組みが地元の人々の手で進んでいる。スキー場の水はけを調節して生息環境を整えており、個体数は増えているという。後押しされる形で、町も今月、看板を立てて生息地であることを公開した。

7月中旬、スキー場の湿地帯脇で開かれた初めての観察会に参加した。湿地帯にはひざ丈ほどの草が茂り、遠くから見るとアブのような小さな昆虫が無数に飛んでいる。

近付いてみて驚いた。小さな昆虫は全部トンボだ。体長2センチ、わずか1円玉ほどの大きさ。特に雄は鮮やかな赤色で、「ミニチュアの赤トンボ」のようで可愛らしい。

観察会を開いたのは、町内に住む森林管理署職員、高沢岩男さん(55)。06年6月、この場所を通りかかって見つけた。自然観察や写真が趣味で、すぐにハッチョウトンボと分かったという。

「戦闘機のようにすばしっこく、観察すればするほど魅力的でした」。県内のトンボ愛好家が集まる県トンボ研究会に相談。生息数が数十匹と少なかったため、関係者で内々に保護すると決めた。

しかし07年5月、湿地が干上がった。スキー場に排水溝ができたためだ。水はけが悪いと冬に雪が積もりにくくなるため、スキー場を実質的に管理するクラブが作った。

それまではスキー場に沢の水が染み出し、トンボが好む湿地帯ができていた。浅くて草丈も短く、天敵の少ない環境が偶然整っていたのだ。

「ハッチョウトンボが消えてしまう」。高沢さんらはクラブと話し合いを重ねた。春には沢から湿地帯に水を引き、冬には排水溝に水が流れるように切り変える−−水はけを調整することで合意した。

今ではクラブ側も全面協力し、毎年水の流れを変える作業などを手伝っている。

トンボは順調に増えた。今年はこれまでで最も多いという。「1000匹はいるのではないか。貴重なトンボを多くの人に見てもらいたい」

生息地を公にすると、乱獲されたり、踏み荒らされかねない。だが町ぐるみで保護する姿勢を見せれば、その心配もなくなるのでは……。高沢さんらは町に働きかけた。

町は当初慎重だったが、8月までに生息地を知らせる看板や立ち入りを制限するロープを設置。町が動き始めたため、高沢さんは7月、観察会を開くことができた。

県トンボ研究会の奈良岡弘治会長は「県内最大規模の生息地ではないか。立ち入りやすい場所で数も多く、一般の人が気軽に観察できる」と評価する。高沢さんも「やっと増えたトンボ。町の財産として認知されればうれしい」と期待している。


◇ハッチョウトンボ
本州から九州まで分布。成虫は体長20ミリ前後で6〜8月に現れる。雄は赤色、雌は褐色。県のレッドデータブックでAランク(最重要希少野生生物)に分類。県内では青森市や深浦町、野辺地町の北部海岸などにも生息。
(毎日新聞)