選手たちの熱い戦いが連日続くバンクーバーはまた、世界から集まった五輪関係者によるきらびやかな社交の舞台でもある。

米水泳界のスーパースター、マイケル・フェルプスが五輪の世界スポンサーであるオメガの招待でバンクーバーにやってきた。名門ホテルの最上階にしつらえられたパーティー・ルームにあらわれるというので、のぞいてみた。

フェルプス登場までの間、スーツやドレスをピシッと着こなした関係者がリラックスした様子でグラス片手に会話に興じている。体の露出度が極めて高い若い女性もあちこちにいる。

それでも、いや、だからこそ、ここは重要なビジネスの場である。リオ五輪を控えるブラジルの五輪委関係者がいた。「こういうところで人脈ができる。顔を出すのは大切な仕事さ」。理屈だけでは割り切れない世界。会場を見渡しても、アジア系や黒人はほとんど見かけなかった。

一昔前までは、野球やフットボールなど給与のかたちで報酬が得られるプロスポーツとそれ以外の競技の選手とでは、収入レベルに乗り越えようのない格差があった。だが、いまや五輪を頂点とするスポーツ・マーケティングの隆盛で、高額収入を得られるスポーツの分野は大きく広がった。

フェルプスの生涯総収入は1億ドル(約91億円)ともされる。バンクーバー五輪出場選手中トップは韓国の金妍児(フィギュア)と米国のショーン・ホワイト(スノーボード)。ともに昨年度800万ドルを稼いだという。

嬌声(きょうせい)がはじける華やかなパーティーの場で、請われるままにこやかに「記念撮影」に応じていたフェルプスの姿は、勝利が回り回ってカネとなる現代スポーツの複雑さの象徴でもある。

五輪をめぐるビジネスの現場で競技に劣らぬ激しい戦いが繰り広げられていることを示すニュースが最近、もうひとつあった。これにもフェルプスがからんでいる。

米ファストフード大手サブウェイが、契約していたフェルプスを起用したCMを始めた。バンクーバー五輪への直接的な言及はないが、イメージ的にはそのものズバリだ。五輪スポンサーであるライバルのマクドナルドは怒った。

返答がふるっている。ニューヨーク・タイムズによると、「そんなことされたら困るじゃないか」と抗議を受けたサブウェイは、マクドナルドのキャッチフレーズを使ってこう答えた。「I’m lovin’it(それ、いいね)」
(産経新聞)