◇家族に最高の滑りを−−スノーボード・ハーフパイプ、村上大輔選手(26)
不調に苦しみ挫折を味わった8年間が、自ら「奇跡としか言いようがない」という2大会ぶりの五輪出場につながっていた。村上大輔選手は、7日にオーストリアで開かれたワールドカップ(W杯)で初優勝を果たし、代表に滑り込んだ。村上選手を支えたのは、妻美津子さん(34)と、間もなく1歳になる長女美凛(みりん)ちゃんの存在だった。

五輪には悔しい記憶しか残っていない。02年のソルトレークシティーでは、18歳で五輪代表に選ばれた。高校生プロボーダーとして注目を集めたが、極度の緊張で「滑ったときのことを覚えていない」。予選落ちの惨敗という結果で終わった。06年トリノでは、弟史行選手(24)との代表争いに敗れて出場権を逃す。「出られると思っていたのにだめだった。落ち込んだが、次は絶対に出たいと思った」と振り返る。

しかし、その後の4年間も挫折の連続だった。青野令(りょう)選手(19)ら若手選手が台頭。「自分の方が上と思っていたのに、ものすごい勢いで抜かれていった」。06年10月以来、W杯の表彰台からも遠ざかり、競技生活からの引退が頭をよぎった。だが、そのたびに美津子さんから励まされ、「妻子をバンクーバーに連れて行くんだ」と自らを奮い立たせた。

長かった低迷時代は今月7日のW杯で終わりを告げた。五輪代表権がかかった一戦。最低でも表彰台に乗らなければ出場はない。半ばあきらめていたものの、試合当日は極度の重圧から午前3時に目が覚めた。「緊張してやばい」。オーストリアから美津子さんに電話すると、「これで最後だから楽しんで滑って」と言われて吹っ切れた。自分の最高の滑りをしよう。結果は後からついてくる。そんな思いで飛んだエアは誰よりも高かった。

8年前のソルトレークシティーで心の中を支配していた「結果へのこだわり」は今はない。「子供に『父ちゃん格好いい』と思ってもらえる滑りを見せたい」。バンクーバーでは、妻子の前で最高のパフォーマンスをみせるつもりだ。

◇むらかみ・だいすけ
小学3年からボードを始め、16歳でW杯2位入賞。08年10月に結婚。クルーズ所属。166センチ、63キロ。札幌市出身。
(毎日新聞)