◇英国と日本似ている−−ダン・マットさん(33)
◇美しい山里後世に…来日10年の外国人区長「夢は古民家の改修」

白馬村和田野地区に雪化粧したナラの木が生い茂る。105軒のロッジや別荘が建ち並び、4分の1は外国人が所有・運営する国際リゾートだ。その一角にたたずむ「Morino Lodge(森のロッジ)」の主人でスコットランド出身のダン・マットさん(33)は来日して1月で丸10年になる。信頼と仕事を手に入れたIターン成功者の一人だ。

木々に囲まれた森のロッジの玄関からはブロンドをなびかせた子供たちが駆け出してきた。窓から白銀がのぞくラウンジでは、外国人のスキー客らが、インターネットやおしゃべりを楽しんでいた。

マットさんは06年12月、カナダ人の友人との共同経営で全10室のロッジを開業した。スキー人気低迷と世界不況で年々、国内から白馬村への観光客は減っているが、マットさんのロッジは豪州、香港、シンガポールなどから客を集めている。

広い客室やしゃれたラウンジ。だがマットさんが一番に挙げたロッジの「売り」はサービスだ。慣れない日本に戸惑う外国人に観光地の紹介や送迎、旅の相談まできめこまやかな対応で、ライバルに差をつける。ここから口コミで次の客を呼び込むという。ロッジ街の外国人経営者は白馬に来て平均で3年ほどと短いという。来日10年のマットさんは「長年居るから日本のことを知っている」と自負する。

大学時代、地球物理学を学びながら世界各地を旅した。卒業後、旅行と仕事ができる国として選んだのが日本。京都の町並みや雄大な山々にも興味があった。

00年1月に初来日して、2年半は県内で英会話講師、中学の外国語指導助手。そして冬にスノーボードを楽しんでいた白馬村へ移った。外国人スキー客の急増で、日本人のペンション経営者らが英会話を習いに来ていた。この1年で村内の人脈が広がったという。

その後いったん千葉県のインターナショナルスクールで開業資金を稼ぎ、06年12月、白馬の中古ロッジで開業した。現在は、他にロッジ1軒、レンタルコテージ5軒も手がけており、経営は順調だ。

昨年4月、古くからの住民や他の外国人に推され、村では初、県内でも異例の外国人区長に就任した。英国は日本と同じ島国。故郷は人口数千人の田舎町で、清掃や催しなど住民の付き合いも深い。「英国人は隣人を気遣い、自分を抑えて皆のために動く。考え方は米国人より日本人に近い」。白馬でも抵抗なく、イベントなどに積極的に携わっている。日本独特の「本音と建前」にも慣れた。

今は区長としてナラ枯れ対策から、ごみの分別収集まで取り組んでいる。分別は昨夏、自ら提唱した。美しい四季の自然が残る白馬を後世に残したいからだ。目下の夢は日本の古民家の改修。わらぶき屋根と土壁が、南イングランドの古民家に似ているという。「どこでも10年住んだら、自分の生活の場。白馬は自分の古里のようなもの」。流ちょうな日本語と笑みがこぼれた。


◇白馬村
白馬村は人口9152人(09年12月1日現在)で、主要産業は観光。北アルプスに面した豪雪地帯にあり、スキーやスノーボードのメッカとして全国に知られる。戦後、若者らが都市部に流出したために、人口は70年代半ばまで減少傾向にあったが、スキー場の開発などで逆に都市部からのI、Uターンが増え人口は増加に転じた。長野五輪の開催なども後押しして、ピーク時の92年は観光客387万人を集めたが、近年、スキー人気の低迷や長期不況で観光客数が激減している。ただ、外国人観光客は急増中で、08年の宿泊者数は豪州を中心に約5万人に上った。

(毎日新聞)