<農(みのり)と輝(ひかり)の未来へ>
27日に投開票された八幡平市長選で、現職の田村正彦氏(61)が再選した。八幡平市の初代市長として二大産業である農業と観光の振興施策や行財政改革の成果を強調するが、一方で農家の後継者不足や観光客の減少など問題や、新庁舎建設の必要性を問う声も挙がる。市が掲げる「農(みのり)と輝(ひかり)の大地」のキャッチフレーズ通り、輝く未来は見えるのか。田村市政2期目の課題を追った。

◇就農希望者に支援金 助成や新事業で客誘致
青々と育ったホウレンソウを見つめながら、八幡平市大更北村のホウレンソウ農家、工藤康子さん(49)は言った。「前は1箱(約5キロ)で収入が500円なんて時もあった。最低価格が保証されて本当に助かっている」。ビニールハウスで年間約10トンを農協や産直に出荷している。「西根ほうれん草」1束500円でも売れた約25年前とは違い、価格は下がる一方だ。連作により土壌が疲弊し、肥料や農薬散布の費用も増した。

農業は、05年の就業人口が1万6523人中3970人を占める主産業だ。他の作物も同様に厳しい状況がある。農業の衰退に歯止めをかけたい市は08年、主産品のホウレンソウの最低価格保証を始めた。市の助成と農協、農家の積立金で補てんするものだ。農家には歓迎され、田村市長は今後、対象作物を広げる考えでいる。

だが、「後継者不足」という重要課題が残る。JA新いわて西部営農経済センターの田村正センター長は「若者は働き口を求めて出ていってしまう」と話す。市の人口は減少が進み、65歳以上が08年10月現在で31・2%に達した。市は10年度、市内外から就農希望の若者に月額10万〜13万円の支援金を助成し、農家での研修をあっせんする事業を実施する。田村センター長は「後継者不足の解消につながれば良い」と期待を込める。

もう一つの主要産業、観光も苦戦が続く。県北自動車や市などが出資した第三セクター「八幡平観光」が経営していた八幡平スキー場は、07年冬に営業不振で休業した。今はすぐ脇を通る八幡平アスピーテラインの道沿いに廃虚と化したホテルや温泉施設が残り、車が猛スピードで通り過ぎていく。

隣にある八幡平ユースホステルの佐々木繁人マネジャー(58)は「観光客のことは全く考えないで、観光振興なんて無理だ」と憤る。盛岡と結ぶ路線バスは1日3往復で、時間も昼前後に集中し、観光客に不都合なダイヤだった。八幡平山頂で秋田県側のバスと接続もできない。

八幡平スキー場は新たな受け入れ企業を探しているが、再開のめどはついていない。こうした中、田村市長は在任中、市観光協会へ年間約3000万円の助成を行い、選挙中は新たなイベント事業の支援、玄関口であるJR大更駅の改築計画を強調した。佐々木さんは言う。「それが、観光客誘致につながるのかどうか」。静かに首を振った。
(毎日新聞)