除雪が済んだ月山・姥沢から眺める姥ケ岳=4月7日、山形県西川町(八並朋昌撮影)(写真:産経新聞)(Copyright 2009 SANKEI DIGITAL INC.)汗ばむ日が増える中で、夏スキーのメッカ、山形・月山(がっさん)では、大型連休に合わせてスキーシーズン本番を迎えた。冬場のスキーは、昨年から今年にかけても雪不足が続き、存分に滑ることができなかったスキー、スノーボード愛好者が多いようだ。月山では、こんな不満を吹き飛ばすように、真っ青な空の下でTシャツになって、初夏の風を切りながら白銀のゲレンデを滑走する人たちでにぎわう。近くには自然体験施設や日帰り温泉、即身仏の寺院などもあり、“非日常体験”を存分に楽しめそうだ。

■積雪1メートル
「今年はさすがに月山も例年より雪が少ないが、それでも28日現在のゲレンデの積雪量は8・9メートルあるんですよ」と、ゲレンデ直下の姥沢地区でロッジを営む遠藤真智子さん(54)。

「23日の吹雪に続いて、27日も猛吹雪となり、ふもとから姥沢まで通じる山岳道路が通行止めになったほどで、うちの周りも数十センチの積雪で真っ白。ゲレンデは場所によって1メートルの積雪があったといい、大型連休中は新雪の滑走を楽しめます。冬場に雪不足で存分に滑ることができなかったお客さんにとっては天国ですよ」という。

山形・月山は、本格スキー場としては珍しく7月まで滑走可能な「夏スキーのメッカ」で、4月10日にスキー場開きをしたばかり。3月末に姥沢地区へ通じる県道の除雪が完了後、何度も大雪に見舞われ、地元の宿泊施設などは除雪作業に追われたという。

■眼下に広がる大パノラマ
初夏の陽気の中で厳冬期並みの積雪のゲレンデを滑る楽しみは格別だ。今年も京都から訪れた60代男性は「ブナの原生林がちょうど芽吹きのころで、雪原の上空を真っ赤に染める。もう少しすると、雪解けの水の中でミズバショウなどが咲き乱れる。夏スキーならでは。宿の山菜料理も楽しみ」と、日焼けと雪焼けで真っ黒な顔をほころばせる。

地元、山形からスノーボードをしに訪れた20代男性は「姥ケ岳の大ゲレンデからは足元より下にも青空が広がっている感じ。眼下には月山湖、そのはるか向こうに朝日連峰がパノラマのように見渡せて最高の気分。空中を滑走している気分になる。今日は天気がよかったので、上半身は半袖のTシャツで滑った」。

宇都宮市から訪れた30代女性は「真っ青な空に初夏の太陽がきらめいて、真っ白なゲレンデを全身で薫風を受けながら滑るなんて、もう最高です。夏の陽気の中でウインタースポーツをするという不思議な感じが大好き」と話す。

■サングラスは必需品
月山スキー場は、姥沢地区からペアリフト(全長約1000メートル)が姥ケ岳の大ゲレンデ上部まで延びているほか、Tバーリフトなどが数基あるので、「初級から上級まで、さまざまなコースを楽しめます」(月山朝日観光協会事務局)。「姥沢から山麓(さんろく)の志津温泉まで、ブナの原生林を縫って下る全長5キロの清水コースも人気」とか。姥沢地区にはスキースクールやレンタルスキーもあるので、初心者でも安心して手軽に楽しめそうだ。

ただ、「夏スキーは日差しが強いので目の保護のためにサングラスは必ずかけてください。半面、山の天候は急変するので、くれぐれも防寒装備を忘れないで」と遠藤さんは呼びかける。

5月8、9の両日には中学生からシニアまで12クラスに分かれて大回転などを競う第51回月山スキー競技大会(募集締め切り)が開かれる。また、17日には全国不整地スノーボード選手権大会もあり、こちらは参加者受け付け中(同観光協会ホームページからリンク)だ。

■自然観察や日本一の噴水
周辺の観光スポットも充実している。

姥沢地区から山岳道路を下ったところにある県立自然博物館は、ネーチャーセンターを中心にブナ原生林に遊歩道が延びる。自然観察の広場や体験ゾーン、展望台、野鳥観察小屋などもあり、希望すれば午前と午後の2回、野外案内もしてくれる。

志津温泉から月山湖に向けて下った弓張平は、月山の全容を一望できるなだらかな丘陵地。ここにある弓張平運動公園は総面積114ヘクタールという広大さで、陸上トラックや会議室もある体育館、テニスコート、野球場、パターゴルフなどのスポーツ施設区、ハーブ園や花畑、子供広場もある植物園区、さらにオートキャンプ場もある。

月山湖では、湖岸を走る国道112号にちなんで高さ112メートルと日本一を誇る大噴水が、平日は午前10時から午後4時まで、土日休日は午前11時から午後5時までの毎正時に10分間、吹き上げられる。

月山湖をせき止める寒河江ダム下流の本道寺地区には、寒河江川本道寺釣り道場があり、「誰でも気軽に渓流釣りの醍醐味(だいごみ)を味わえる管理釣り場です」といい、子供連れなどでにぎわっている。

■日帰り温泉が充実
この近くの水沢温泉館は、大浴場とサウナを備えた日帰り温泉施設。泉質はナトリウム塩化物泉で、入浴料300円と手ごろ。全市町村に温泉がある山形県ならではだ。隣接する道の駅にしかわ月山銘水館では、地ビールや食事を楽しむことができる。

国道112号を山形方面に10分ほど車で走った海味(かいしゅう)地区には西川町老人福祉センター内に海味温泉がある。泉質はぬるぬるする単純硫黄泉含食塩で、入浴料は大人200円、小学生100円。

月山湖から朝日連峰に向かって県道を進んだ大井沢地区にある大井沢温泉も日帰り温泉施設で、泉質はナトリウム塩化物・硫酸塩温泉。入浴料は大人300円、小学生100円。周囲はのどかな山村地帯で、ゆったりと“日本の原風景”を楽しむことができる。

月山の志津温泉には日帰り温泉施設はないが、旅館や民宿で立ち寄り入浴できる。泉質はナトリウム塩化物泉で、入浴料は500〜800円。また、姥沢地区のロッジなどは温泉ではないが、月山7合目付近から湧(わ)く雪解け伏流水を沸かしているので、「やわらかくて、体がよく温まる湯です」(遠藤さん)。

■即身仏を拝観する
月山(1984メートル)は山形県の中央にある出羽三山の主峰で、山頂に天照大神の弟の月読命(つきよみのみこと)を祭る月山神社が鎮座する。磐梯朝日国立公園にあり、夏から秋は登山者でにぎわう。

月山、湯殿山、羽黒山の出羽三山は、古くから修験の地として知られ、特に湯殿山は即身仏が多いことで知られる。

国道112号を日本海側に進んだ鶴岡市大網地区には、この即身仏をまつる2つの古刹(こさつ)がある。一つは鉄門海上人をまつる注連寺。映画「おくりびと」で月山が登場する場面は、「注連寺門前の坂道を少し下ったところから撮影したもので、電柱の案内板に注連寺の文字も見えるんですよ」と住職の佐藤弘明さん(48)。今年は6年に1度の秘仏本尊開帳の年で、大日如来像を直接拝むことができる。

もう一つは、注連寺から車で5分ほどの大日坊で、こちらの即身仏は真如海上人。2人とも現代では信じられないほどの苦行を積んだうえで、空海にならって入定したという。間近に拝めば、その厳粛さを肌で感じることができる。

■高速道1000円で身近に
休日の高速道路地方区間がETCで乗り放題1000円になったことで、月山へのアクセスもグッと身近になった。

例えば、東京からだと東北自動車道の浦和インターチェンジ(IC)から山形自動車道の月山ICまで、平日料金は8400円だが、ETC休日料金なら大都市近郊区間(700円)を加えて1700円で済む。所要時間は4時間20分ほど。月山インターから姥沢までは15分ほど。

鉄道利用なら、山形新幹線で東京から山形まで2時間半。山形から山形道経由で月山口まで50分ほど。月山口から姥沢までシャトルバスで20余りだ。

6月下旬には山形名産のサクランボ狩りを寒河江市などで楽しめる。佐藤錦など高級品種を食べ放題で、おみやげ用にも格安で購入できる。姥沢や志津の宿泊施設では、契約農園を紹介するところもあるので、宿泊の際は尋ねてみたい。
(産経新聞)