lecca女性シンガーのleccaが、自身がパーソナリティーを務める北海道のラジオ番組でリスナーとともに作り上げた楽曲「For You」(3月4日リリース)。この曲が、3月28日付けのUSENリクエストチャートで1位を獲得した。

“チャート1位”という字面には、何も目新しさは感じない。しかし、この曲が北海道から生まれ、そして全国へと広がっていくまでの過程を追っていくと、巷のヒット曲とは少し異なった、この曲の裏側にある人と人とのつながり、曲がひとり歩きを始めるまでのドラマが見えてくる。

「For You」が生まれたのは、2008年の夏前までさかのぼる。きっかけは、北海道のFM局「FM NORTH WAVE」で放送されているleccaのレギュラー番組『Yah Man! Writers』。同プログラムの人気コーナー「Writersの宴」内でリスナーと曲を作るという企画が持ち上がり、“大切な人への想い”というテーマでリスナーから寄せられた体験談を募集。それをもとにleccaが曲を作り、番組内で曲を初披露したのが2008年9月末のこと。

“自分たちが作った曲”“自分たちの気持ちが込められた歌”…。この曲の歌詞に共感する番組リスナーを中心に、楽曲が初披露された放送の直後から、CDショップや有線に問い合わせが入りはじめるといった反響が発生する。しかし当時はリリース予定はおろか、楽曲タイトルすらない状態。「大切な人への想い(仮)」という仮タイトルで彼女の番組内でのみ聴くことができる曲でしかなかった。

ところが、この曲が北海道のスキー場「キロロリゾート」のTVCMソングとして採用されることが決まった2008年12月頃より事態は急展開することになる。タイトルを「For You」に決定したことが番組で発表されると、有線への問い合わせが殺到。リクエストが可能になった2009年1月中旬からは、有線でも頻繁に流れるようになり、結果、瞬く間に2月7日付けの北海道USENリクエストチャートで1位を獲得。以後、6週にわたり、同地区リクエストチャート1位という現象が起こる。

ここから、北海道地区で火がついた「For You」が全国へと波及していく。北海道での現象がメディアなどに取り上げられたことにより、曲の認知度が上昇。2月4日からスタートしたレコチョクの着うた(R)配信も、2月10日付けの総合チャートでデイリー2位。また、2月度のレコチョク クラブ・うた月間チャートでは1位を獲得。着うたフル(R)は、配信日のデイリーチャートで3位を記録する。

さらに、3月4日のCDリリース日を境に、再び着うた(R)やUSENチャートが上昇。加えて、iTunesのレゲエ部門のトップソングチャートとトップアルバムチャートでも1位を獲得(3月21日付け)。

そして、冒頭に挙げた、3月28日付けのUSENリクエストチャートで1位という結果へとつながる。

一方、若者に人気の歌詞閲覧・検索サイト『デジ歌詞』でも面白い現象が起こっていた。「For You」が、歌詞の配信日から5日間連続1位を獲得していたのだ。

これらを総合して考えると、今回のUSEN総合チャート1位というのは、北海道のラジオ番組から生まれた「For You」が、地方から全国へと波及していく中で、実際に企画に参加した番組リスナーや、歌詞に共感を覚えた中高生などが、自分のブログや日記で歌詞や曲を紹介し、その書き込みから興味を持った人たちが、新たに曲や歌詞を求め、そして自分たちのブログなどで紹介し、さらにそれを目にした人が…といった、「For You」への共感・共振がまるで水紋のように広がっていったことがわかるだろう。leccaとラジオのリスナー、もしくはリスナー同士、その友人同士、さらに、たまたま「For You」を目や耳にした人たち(もちろんこの中には、3月20日放送の『とくダネ!』内「小倉智昭の週刊!エンタ☆マイスター」でleccaが紹介されたのを見た、という人も含まれるだろう)といった、人と人とのつながりの中で、楽曲がひとり歩きを始めていったのだ。

USENへのリクエスト方法は、今も昔も変わらない。USENを導入している店舗や家庭から専用の番号に電話をかけ、オペレーターに曲名を伝え、リクエスト曲が流れるのを待つ。デジタル配信が主流となり、24時間いつでもどこでも音楽を手軽に楽しめるようになった現代の音楽シーンにあって、USENへのリクエストという方法は、いささかパワーを必要とするのは否めない。

そんなパワーや手間を通して波及した「For You」。“どうしても聴きたい”という気持ちもさることながら、“この素敵な曲をわかって欲しい”、“より多くの人に聞いてもらいたい”と願う、共有を求めるファン心理がエネルギーとなっているのは間違いない。これこそが人の心を渡り歩いていく口コミヒットの根源パワーなのだ。

そんな「For You」、あなたの耳に届くのも時間の問題だ。
(BARKS)