◇頼らず、知恵も汗も出し−−中島昭彦さん(40)
◇「黒部市宇奈月温泉スキー場」公設民営化し再スタートへ

富山県で最も歴史のあるスキー場「黒部市宇奈月温泉スキー場」が来年度、市営から公設民営となって再スタートを切る。経営不振と施設の老朽化で廃止も検討されたが、地元の要望が強く、存続が決まった。今夏にも指定管理者として運営を引き継ぐ市民団体「宇奈月大原台」の中島昭彦理事長(40)に活性化策や展望を聞いた。

◇半世紀余の歴史、客離れが深刻に

――宇奈月温泉スキー場の歴史を教えて下さい。
中島さん この地域は昔から雪が豊富で、大正時代からスキーが盛んだったと言われています。1954年にリフトが整備され、56年に正式なスキー場としてオープンしました。95年には宇奈月町(現・黒部市)が町営化しました。宇奈月は、温泉街とスキー場の発展と共に歩んできたと言えます。

――近年は客離れが深刻化し、廃止も検討されました。
中島さん 95年度には2万5000人以上あった来場者が、05年度には6700人にまで激減しました。経営を引き継いだ黒部市からの繰入金は累計で6000万円以上に達し、市は外部識者らによる検討委員会を設置。廃止も含めて検討されましたが、検討委は「地域の貴重な観光資源になっている」として、08年8月に民営移管するよう答申しました。

――なぜ客足が離れたのでしょうか。
中島さん 近年の雪不足に加え、若者の来場減が大きな要因です。シーズン中、滑走できない日が多くなり、06年度は1日も営業できませんでした。スノーボード客の増加にも対応できていませんでしたしね。
また、北陸道や東海北陸道も整備され、より大規模で設備が新しい新潟や長野のスキー場に短時間で行けるようになりました。娯楽が多様化したためか、スキーをしない若者も増えています。

――活性化への方策は。
中島さん 運営を引き継ぐ「宇奈月大原台」は、他のロッジや旅館経営者、市の職員ら約20人で結成し、社団法人化を目指しています。スノーボード専用コースや、そり遊びができるエリアを整備しています。草花を植えることで、シーズンオフの夏季にも集客したい。将来的には、安全で乗り降りも簡単なベルトコンベヤー式のリフトなども導入できればと思っています。

――子どもたちも重要なターゲットになっています。
中島さん 小さな子どもたちにも楽しんでもらえるように、滑り台や雪遊びが楽しめる「キッズパーク」を新設し、宝探しなどのゲームが楽しめるイベントも新しく行っています。宇奈月で雪に親しみ、夢中で雪原を駆け回って育った私たち同様、雪や古里を好きになる子どもが増えてほしいですね。

――不振にあえぐスキー場が全国に数多くあります。
中島さん 今までは、「誰かがやってくれる、行政が作ってくれる」という意識でした。これからは違います。お金も奇策もないので、自分たちでできることからやります。シャベルで雪を積み、のこぎりで丸太を切る。「自分がやらないと何も変わらない、自分たちで作るスキー場なんだ」という意識を皆が持たないといけない。かつてのにぎわいを取り戻し、地元住民による再生のモデルケースになれればと思います。

■人物略歴
◇なかしま・あきひこ
富山県宇奈月町(現・黒部市)出身。幼いころからスキーに親しみ、地元の中学・高校ではスキー部で活躍した。米国の大学を卒業後、家業を継ぐため帰郷。現在は、黒部市宇奈月温泉スキー場周辺で土産物店や飲食店を経営している。

(毎日新聞)