各地からスキー場開きの知らせが届き、本格的なウインタースポーツの開幕も間近だ。白銀のゲレンデにシュプールを描く爽快(そうかい)感はスキーヤー、スノーボーダーならではの醍醐(だいご)味だが、長野県白馬村では今シーズン、スキーヤーらの安全を確保するための「白馬ローカルルール」を定めた。スキー場の「滑走禁止エリア」外を滑走した違反者に対し、リフト券の没収と退場を求めるなど、厳しい内容を含むが、その背景は−。

北アルプスの麓に位置する白馬村は、10年前の長野冬季五輪の競技会場となった国内ウインタースポーツのメッカだ。しかし、スキー人口の減少とともに村内スキー場への来場者は減り続けている。村観光局によると、平成4年に約278万人だったスキー客は19年には約110万人まで減少した。ライフスタイルやレジャー観の変化、長引いた景気の低迷などさまざまな理由が挙げられるが、村では16年に冬季と雪のないグリーンシーズンの観光客数が逆転。現在さらに差が広がりつつある。

こうした中で最近、目立つのは韓国や豪州を中心とした外国人観光客。宿泊客の統計を取り始めた14年には約2900人だったが、ウォン高や豪ドル高もあった19年には4万1000人を数えた。しかも1〜3月と12月の冬季は計約3万6600人で、通期の9割近くを占める。

一方で険しい地形が多い日本のスキー場では雪崩の危険とも隣り合わせ。今年2月には白馬に隣接の小谷村で大学生らが立ち入り禁止のコースで雪崩に遭い、2人が死亡した事故があった。平成12年2月には白馬村内の立ち入り禁止の沢を滑っていたニュージーランド人ボーダー3人が雪崩で死亡し、国情の違いから捜索のあり方などをめぐりトラブルも起きた。「特に外国人客は日本の地形や山域の状況、慣習、ルールなどをよく理解しないまま訪れる」と白馬村観光局の郷津寛課長は指摘する。

こうした事故や外国人客の増加を背景に白馬村観光局と村索道事業者協議会は、利用者の安全確保に向けて統一したルールを設けることで一致。すでにローカルルールを設けて安全対策の強化を図っている北海道ニセコのスキー場への視察や、村内各スキー場が行っている安全対策などを参考に「白馬ローカルルール」を策定した。ルールを日本語と英語で表記したチラシは1万5000枚を印刷。冬季情報ガイド10万部にも白馬ローカルルールを掲載し、周知を図る。

「今季のルールはまだ初段階。すべての人に対してスキー場での安全を、十分な理解をしてもらうための6項目に絞ってある」と郷津課長。「来季は国際レベルで理解いただけるような規制方法なども考えていきたい」とする。特に雪崩の危険性判定などに独自のノウハウを持つ村内のNPO法人「ACT」(元村幸時理事長)と連携し、ACTが逐次発信する雪崩情報を携帯電話で見ることができる二次元バーコードのチラシへの掲載も検討する。元村理事長も「雪崩のリスクに対して地域全体で取り組むことが必要。ACTが持つ情報を活用し、遭難が減れば何よりだ」と話す。

「これまでは素晴らしい自然景観とスキー場に頼って客を呼び込むことに、観光施策のウエートを置いてきた」と郷津課長。しかし国内スキー人口の減少が続く中での生き残りに向け、「『国際山岳リゾート地・白馬』となるには、内外からの客を受け入れる地域基盤、質の向上を図ることが欠かせない。ローカルルール策定は、その一つだ。事故や遭難への予防的な啓蒙(けいもう)活動が、お客さまにきちんと理解してもらえない状況では質の高い国際観光エリアとは言えない、と受け止めている」と語り、安全を軸にした白馬エリア全体の飛躍を目指していると強調した。

≪白馬ローカルルール(要旨)≫
(1)スキー場内「滑走禁止エリア」での滑走はゲレンデ内の雪崩流入事故につながり、いかなる理由でも滑走禁止。違反があった場合はリフト券を没収し退場。

(2)閉鎖のコース・エリアには絶対立ち入らない。看板・標識・警告・設置物に従う。

(3)北アルプス後立山連峰山麓のスキー場エリア外は国有林、村有林、国立公園。スキー場によって管理されていない。

(4)エリア外で発生した事故での捜索救助活動は、当事者に関係機関が定めた実費を請求する。

(5)スキー場エリアの内外を問わず、すべての利用者がパトロールと関係機関の指示に従うことを求める。

(6)滑走者に対し常に安全への配慮と十分な理解を求める。

(産経新聞)