■「アクロス重信」で夏も技磨く

スイスで10月31日に行われたスノーボードのワールドカップ(W杯)ハーフパイプ(HP)今季第2戦で、19歳の渡部耕大(アクロス重信ク)が自身初の表彰台となる2位に入った。渡部は愛媛県東温市にある通年型屋内スノーボード施設「アクロス重信」で技を磨いてきた1人。同施設からはW杯通算5勝の青野令(18)=スノーフレンズク、今年2月にW杯初勝利を飾った藤田一海(18)=西条ク=を輩出している。温暖な愛媛が「スノボ王国」となった背景には全日本スキー連盟公認の施設があった。

3選手が練習する「アクロス重信」は松山市中心部から東南へ15キロほど。みかん畑が目前に広がる施設前の駐車場には、全国各地から訪れた車が並び、人気のほどがうかがえる。秋晴れの休日、外はポカポカ陽気でも施設内はジャンパーを羽織らないと立っていられない寒さ。この温度管理のおかげで、夏でも実戦ができる。

「雪質を保つため、室内は氷点下3度を維持しています。年間を通じて使うので、利用時間が終わってから整備のメンテナンスに力を入れ、毎日パイプ(半円筒状のコース)をしっかり作り直しています」とテクニカルスタッフの阿部幹博さん。国内最大級の室内コースは長さ100メートル、幅13メートルあるが、横にはフラットなゲレンデがあり、経験のない子供が遊べる工夫も施されている。

料金は1カ月間滑り放題で初回3万1500円、継続なら2万5200円。強化選手には特別割引も用意されており、南国でありながら寒冷地の選手に負けない練習量をこなせる理由がある。

1999年に県内のスキー場やゴルフ場を経営する「久万総合開発」が、用地買収を含めると約23億円を投じてオープン。スノーボードの将来性を見越して作ったものだが、年間来場者は約6万人。W杯に勝った中国女子選手が夏場の練習拠点とするなど、日本国内だけでなく海外選手の利用も増えているという。スタートから10年近くがたち、ここで育った選手が世界へ旅立っている。

その先駆的役割を果たしたのが渡部だった。小学3年生で競技を始め、2004年に中学3年生で初出場したW杯は7位。その後、06年11月に左ひざ靭帯(じんたい)を負傷して長期離脱するなど不本意なシーズンが続いたが、カナダ留学を1年経験してたくましさを増した。「ケガをしてトレーニングの大事さがわかった。今季は自分の滑りを最大限に発揮したい」と話し、後輩2人に続くW杯制覇も夢ではなくなった。同施設を運営する田村信介さん(全日本スキー連盟スノーボード副部長)は「メンタルの強さが出た」と成長を実感している。

2010年バンクーバー五輪で南国・愛媛が生んだスノーボーダーがどんな活躍をするのか。注目は増すばかりだ。
(産経新聞)