◇利用客減少、重い負担
森吉山を中核にした観光を推進する北秋田市。その目玉となる森吉山阿仁スキー場に暗雲がたちこめている。運営する米シティグループ「ウインターガーデン・リゾーツ」(本社・東京)が赤字を理由に市側に無償譲渡を打診。市は8月上旬に議会と運営方向を相談するが、スキー客が減少するなかで移管されても重い負担が予想される一方、廃止されれば地域活性化の痛手となり、市は厳しい選択を迫られている。【村川幸夫】

■客足遠のく
阿仁スキー場は、森吉スキー場(07年3月廃止)と共に西武系のプリンスホテル(本社・埼玉県)が87年12月にオープンさせた。
最盛期には森吉に年間15万〜21万人、阿仁には約5万〜8万人が訪れた。
だがスキー客の減少で経営が悪化。プリンスホテルは森吉スキー場の売却先を募ったが不調となり廃止された。阿仁スキー場はウインター社が運営を引き継いだものの、昨冬の利用客は約4万4000人とピーク時(96年)の半分。同社は約5600万円の赤字を出した。
今年3月、同社は北秋田市に撤退の方針を伝えた。営業継続を求める市はゴンドラ運行費用の一部約390万円の補助を決め、ようやく高山植物や紅葉観賞の3カ月限定での暫定営業が決まった経緯がある。

■新たな提案
ウインター社はその後、「市側が経営するなら事業譲渡を無償で考えている」と事務レベルで打診した。
ただ市産業部によると、すぐに譲渡されたとしてもスキー場運営には多くの法律上の手続きがあり、最短でも約4カ月を要するため今季の営業は微妙になる。そこで暫定措置として、今季に限ってウインター社から委託を受ける形で市が直営し、その後譲渡を受けて市が指定管理者を決め運営する策などが模索されている。
岸部陞(すすむ)市長は7月25日の定例会見で「リスクはあるが、阿仁スキー場は冬の樹氷と夏から秋の高山植物の名所として何としてでも続けたい」と継続に強い意欲を見せた。

■厳しい決断
だが同スキー場は国有地内にあり、経営が行き詰まった場合はリフトを撤去しゲレンデを緑化する「原状回復」が義務付けられている。
すでに廃止された森吉スキー場では、学識経験者やプリンス関係者からなる「森吉スキー場自然再生検討委員会」(委員長、佐藤慶一・前市商工観光課長)が原状回復に向け動き出している。
スキー客の低迷に加え冬季に多くの県外客を呼び込める立地ではなく、厳しい経営が続くのは避けられない状況。無償譲渡を受けた後で廃止という事態になれば、原状回復に3億円以上の費用を投じる必要があるという。
岸部市長は「(事業引き継ぎで)議会側との話し合いがつかなければ、断念をせざるを得ない」と述べており、観光産業の振興と財政負担をにらみながら重大な決断を迫られている。
(毎日新聞)