◇運行会社の4人、有罪判決
「人命より利益を優先した」――。事故発生から4年半を経て、15日に判決が下った「御岳ロープウェイ」裁判。地裁松本支部(荒川英明裁判長)の判決は、運行会社のずさんな整備や利益優先の経営体質を厳しく指弾した。遺族らは「二度と繰り返さないで」と再発防止を切実に訴えた。
裁判長が判決文を2時間余りかけて読み上げる間、谷本勉被告ら4人は終始うつむいていた。判決は「経費削減のため、部品交換が先延ばしされるなど、整備・点検が不十分と認識しながら運行を継続させた」と指摘。「人命よりも利益優先の経営体質を改善しなかった」などと厳しく批判した。
「2人が亡くなったことに思いを致し、冥福を祈り、できることをしてもらいたい」。裁判長の言葉に4被告は深々と頭を下げた。
一方、遺族の心境は複雑だった。犠牲となった長崎県佐世保市の峯仁義さん(当時70歳)、幸子さん(同62歳)夫婦の次男宇志夫さん(43)は「マニュアル通りしていれば事故は起きなかった」と怒りをにじませた。長女の下野布由紀さん(39)は「他の(ロープウエー運行)会社も同じ事故を繰り返してほしくない」と訴えた。
幸子さんの妹の飯島弘子さん(65)は事故当日、幸子さんから長野行きの電話をもらったという。新婚旅行以来の夫婦二人旅に弾ませた声を思い出し、飯島さんは「客は『安全』を疑っていない。その思いを裏切らないで」と声を詰まらせていた。

判決に対し、高森高徳・長野地検次席検事は「各被告の過失を的確に認定した極めて適正な判決」との談話を発表。一方、谷本被告の弁護人、宮沢明雄弁護士は「事実を抽象化し認定した残念な判決」と不満を述べた。

■解説
◇ずさんな管理に警鐘
15日の地裁松本支部判決は、ロープウエー運行会社に安全管理の徹底を求め、県内外の同業者に警鐘を鳴らす内容となった。
「御岳ロープウェイ」社が安全より経費節減を優先し、必要な整備点検を怠ったと認定。4被告も認識していたと断じた。「事故は予測できない」との弁護側の主張については、荒川英明裁判長は「基準に沿った整備をしていないと認識していれば、重大な結果が発生すると予見できる」と退けた。
昨年5月の死傷者20人を出したエキスポランド(大阪府吹田市)のジェットコースター脱線事故では、同社の元役員らが業務上過失致死傷容疑で書類送検された。安全管理の徹底が求められており、今回の判断はその流れに拍車をかけるものといえよう。
事故から4年半。被告はずさんな整備体制を一部認めつつも、責任回避の言動などを繰り返し主張、判決に対し控訴する方針だ。「同じ事故を繰り返してほしくない」。すべての公判を傍聴した遺族の切なる思いだ。人命を預かる企業として、改めて肝に銘じるべきだ。

◆判決骨子◆
▽握索装置の部品の摩耗などが事故の原因
▽4被告はロープウエーの設備・装置を適切に整備していないと認識。事故の発生は予見できた
▽4被告が人命より利益優先の経営体質を抜本的に改善しなかった点は厳しく非難されるべきだ
▽遺族との間で示談が成立し和解金は全額支払われている。(ワイヤロープの)握索が不完全状態であることの予見は、専門家でも困難。事故後、点検整備は一定程度改善された

◇御岳ロープウェイ事故の経過◇
03年10月15日 「御岳ロープウェイスキー場」で、運行中のゴンドラから長崎県佐世保市の夫婦が転落して死亡
  同12月 5日 事故調査検討委が調査報告書で「握索装置の部品の摩耗などが事故につながった」と指摘
  同12月16日 国交省が「御岳ロープウェイ」に事業改善命令を出す。
05年 7月11日 木曽署が事故当時の常務や運行担当者ら計4人を、業務上過失致死容疑で書類送検
  同12月28日 地検松本支部が被告4人を業務上過失致死罪で在宅起訴
06年10月 2日 地裁松本支部で初公判。4被告全員が無罪を主張
07年10月22日 論告で、検察側は4被告に禁固3年〜2年6月を求刑
  同12月25日 最終弁論で弁護側は無罪を主張し結審
08年 4月15日 被告全員に執行猶予付き有罪判決

(毎日新聞)