【長野県】愛知大の学生ら7人をのみ込み、大木亜紀さん(20)、大竹麻友さん(20)の命を奪った小谷村の栂池高原スキー場で起きた雪崩事故。発生から一夜明けた4日、合宿仲間の学生たちは沈痛な面持ちでゲレンデを去り、事故を知ったスキー客は痛ましそうに現場を見つめた。

「なぜ指導者が制止できなかったのか」。この日、普段通りに営業した栂池高原スキー場では、ゲレンデでスキーを楽しんでいたスキーヤーたちが、今回の事故について引率者の行動や判断に疑問の声を上げた。

三重県伊賀市の女性スキーヤー(54)は「事故はいつ起こるか分からない。スキーを楽しむには決まりは守らなくては」と、立ち入り禁止を知りながら危険なコースに進入した行動を非難。奈良県天理市の丸野宗弘さん(42)は「雪崩が起きたのは不運。かわいそうだ」と同情的だった。

富山県黒部市の男性(29)は、同スキー場によくスノーボードに訪れると言う。パトロールや放送での注意喚起はしっかりしているという印象で、「ルールを守っていれば楽しいはずなのに」と事故を残念がった。

スノーボードをしていた金沢市の川口良平さん(26)は、日ごろから危険な区域で滑走する無謀なボーダーらの行動が目についていたといい「今回のケースはよく分からないが、新雪の性質や雪崩のおき方をよく知らないまま入るのは危険」と苦言を呈していた。

事故のあった栂池高原スキー場では、ゲレンデの安全確保のため12人のパトロール隊員が常駐し、2時間ごとに各コースを巡回。危険が認められればロープやネットを張って進入を防ぐほか、「立入禁止」の看板を立てたり、場内アナウンスで周知している。

「それでも立ち入り禁止を無視して入るスキーヤーが後を絶たない」と後藤俊文副隊長は明かす。ロープなどの対策は徹底していく方針だが「あとは、お客さんのモラルを信じるしかない」と首を振った。

同スキー場など近隣3スキー場に安全対策などを指導する小谷村スキー場安全管理連絡協議会(山田光美事務局長)も、こうしたスキーヤーについては「やりようがない」とお手上げ状態だ。

雪崩事故については「危険個所は、客が入る前に花火を使い(わざと)雪崩を起こし、巻き込まれるのを予防するなどの対策は日ごろから伝えている」と説明。5日にも消防やスキー場の関係者を集めた会議を設ける予定で「再発防止対策を話し合いたい」としている。

雪崩は3日午後4時ごろ発生。指導者2人を先頭に9人が列になって滑っていたグループの左側から雪が押し寄せてきた。7人が巻き込まれたが5人は自力で脱出。指導者が宿泊先を通じてスキー場に救助を求めた。

最初に駆けつけたパトロール隊員の中島浩一さん(46)は「(立ち入り禁止なのに)なぜ入ったのか」という疑問が一瞬、頭をよぎった。2人の女子学生は雪に埋まったままで、スキー板を雪に刺して探すとすぐにブーツにあたった。雪をかき出し、深さ約50センチにあおむけに倒れていた大木さんを発見。「助かってほしい」という一心で人工呼吸を繰り返した。

後を追うように到着した同隊総括主任の岡田隆さん(47)は、大竹さんを探しながら「なんで入ったんだ」と指導者に正したが、はっきりした答えはなかったという。

中島さんらは命を落とした学生らを思い、やるせなさを感じている。一方で、立ち入り禁止のコースに入った引率者の、危険に対する認識の甘さにいら立ちを覚える。中島さんは「自然は恐ろしいものだという認識を持ってスキーに来てほしい」と話した。

亡くなった2人は雪崩発生から約20分後に雪の中から救出された。ただ、付近は「雪崩危険区域」で、救助に向かった雪上車は迂回(うかい)するなど、救急車が待機していたふもとのパトロール本部に2人が収容されたのは、発生からおよそ2時間後だった。
(愛知大生スキー事故取材班)