◇企業出資めど立たず
松本市などが出資する第三セクター「乗鞍観光」が運営する乗鞍高原温泉スキー場(松本市安曇)は、今シーズンからの民営化を先送りした。地元大手企業が「スキー産業を取り巻く環境は厳しい」などとして出資を見合わせ、他の企業も相次いで出資を渋ったためだ。同市などは来シーズンからの民営化を模索するが、めどは立っていない。

◆大きな誤算
今年7月に設立し、同スキー場を運営する予定だった新会社「まつもとリゾートサービス」(坂倉海彦社長)や同市が出資を期待したのが、“地元企業の顔”である松本電鉄を中核とした「アルピコグループ」だった。同グループは乗鞍・上高地地域でバスやタクシーを運行。「公共交通機関を運営する同グループの利害関係は大きい」(同市関係者)ことから、出資への期待は高かった。

ところが、同グループは「経営再建のため、経営資源の選択と集中」(松本電鉄営業企画室)の過程にある。今月に入って運営してきた白樺湖ロイヤルヒルスキー場(茅野市)の運営会社を東京のスキー場運営会社に売却。「現時点ではスキー場運営からは完全に撤退する方針」(同室)で、「まつもとリゾートサービス」への出資は見込めない。松本市内の10社以上の企業から、1億円を目標に出資を募るという計画は大きくつまずき、新しい出資社はない。

◆悪循環
企業が出資を渋る背景には県内スキー産業の厳しい現状がある。全日本スキー連盟のまとめでは、全国のスキー人口はピーク時の80年代には約1400万人にもなったが、現在では700万人程度。長野経済研究所(長野市)によると、06年度の県内主要スキー場(24カ所)の利用客は557万人にとどまり、ピーク時(92年の1447万人)の4割程度だった。にもかかわらず、県内のスキー場数は92年度106カ所から06年度100カ所とほとんど減っていない。同研究所の飯塚徹主任研究員は「スキー場が多すぎるのに客数が増えないため、設備投資やサービスに資金が回らず、スキー場としての魅力が落ちるという悪循環に陥っている」と分析する。

◆生き残りを懸けて
坂倉社長は「スキー場と温泉施設を地域観光産業の核とし、周辺の商圏を活性化したい」との構想を抱く。そのためには地元の理解と協力が欠かせないが、出資社も得られない現況では“特効薬”は見つからない。飯塚主任研究員は「今後、少ないパイを巡って、スキー場の統廃合が進むのは避けられない。スキーだけでなく、プラスアルファの強みを示せるかがポイントとなる」と指摘している。
(毎日新聞)