◇山歴20年2人「大丈夫と思った」
富山県立山町の北アルプス・雷鳥沢で18日発生した大規模雪崩は、犠牲者1人を出す惨事となった。九死に一生を得たものの2人がけがをし、このうち右ひざ骨折の堀井興平さん(65)が、収容先の富山県立中央病院(富山市西長江)で記者会見。車いすに乗って疲れ切った表情ながらも、しっかりとした口調で当時の模様を生々しく語った。

滑降途中、左側から雪崩が発生したのを発見。堀井さんは「ヤバイと思い反対側に逃げようとしたが、10〜20メートルの上方から表層雪崩が起きて足元をすくわれた」という。雪に埋もれていたのは30分ほどで、右手が雪の上で自由だったため、口の前の雪を取り除いて呼吸を確保。周囲に多くの人がいたので、「必ず助けてもらえると信じて」手を振ったり声を出しながら救助を待った。

もう1人のけが人、上田理喜雄さん(65)とは、高岡ハイキングクラブの山仲間で、ともに山歴約20年。この日は午前9時過ぎに室堂を出発。同11時過ぎに剱御前小舎に到着した。現地は風が強くて寒く、前にいた4、5人のスノーボーダーに続いて降りていった。雪崩に気付いた時は上田さんは巻き込まれた後だったが、亡くなった幸山信也さん(34)については、分からなかったという。

堀井さんらは毎年この季節に山に入っているが、「雷鳥沢で雪崩に遭遇したことはなかった。前夜には雪が降ったが、たくさんのボーダーが降りていっていたので、大丈夫だろうと思った」と語った。

◇雪質、例年と違ったのか−−周辺のスキーヤーら恐怖
この雪崩を周辺にいた多くのスキーヤー、スノーボーダーたちが目撃し、恐怖も味わった。

北アルプス・立山周辺で10年以上スノーボードを楽しんでいる富山市赤田の会社員、小林弘幸さん(33)は、現場の模様を詳しく証言した。午前10時過ぎ、立山の登り口・室堂から、雪崩の発生現場付近でスキーヤーら数グループ約20人が見えた。現地は春スキーを楽しむ人たちには、よく知られた場所だという。

この日は、新雪が降った後で、視界も良好。小林さんは滑走前に雪崩の危険を判断するため、50センチほど雪を掘る弱層テストを行い、30度以上の急斜面は危険と分かった。雪崩現場と谷をはさんで向かい側の国見岳側から弥陀ケ原まで滑走した。

雪崩の音などは聞こえなかったが、山の中腹に大きめの跡が見えた。「雪崩は小さくても大変怖い。暖冬で例年と雪質がちがっていたのかもしれない」とも推測する。

このほか、現場近くでスキーをしていた20歳代男性は「20メートルぐらい下からゴーッという音とともに雪崩が起きた。沢全体が崩れたような感じだった」と語った。

大阪府高石、枚方両市と兵庫県芦屋市から訪れたスノーボード仲間の男女3人は天狗(てんぐ)平周辺で、ゴーッという音を聞き、「雪崩にしては長く感じたので、最初は飛行機が飛んでいるのかと思った」という。
(毎日新聞)