◇治安や景観、格差拡大
豪州人を中心に外国人スキーヤーらの人気が高まる後志管内倶知安町の通称ひらふ地区。道内の新たなリゾート地として脚光を浴びる半面、多くの課題が浮上している。突然、押し寄せた異文化と外国資本を前に、地元では解決へ向けた模索が続いている。

ひらふ地区では02年ごろから、ニセコのパウダースノーを目当てにした豪州人らのスキー客が増えてきた。町商工観光課によると、町内で昨年度、宿泊した外国人は延べ7万6067人(豪州人6万7240人)に達し、01年度の約18倍。今年度の数字はまだ出ないが、ニセコ・グラン・ヒラフスキー場を運営する東急リゾートサービスによると、今季(昨年12月1日〜2月末)のリフト利用人数は延べ413万6324人で、昨季より7%伸びている。

一方、同地区では3年ほど前から外国人によるトラブルが相次ぐようになった。飲食店で深夜まで大声で騒ぐほか、けんかをしたり、日本人に絡んだりすることもある。ほとんどが警察に通報する必要のないもめ事ばかりだが、コンドミニアムなどに長期滞在する外国人が増す中、ごみを分別せずに出すなどの迷惑行為も絶えないという。

見かねた地元のペンション経営者ら35人は昨年11月、倶知安署と協力して「ニセコひらふパトロール隊」を結成。酒を提供する飲食店約40軒と宿泊施設約100軒を回り、マナー向上を呼び掛けたり、青色回転灯がついた車で地区内の見回りなどを行った。

隊長の木皿茂樹さん(65)によると、昨季数十件あったトラブルは今季は約3分の1にまで減ったという。木皿さんは「防犯活動をすることで一定の成果が表れる。彼らはお客さんなので、お互いに気持ちよく共存したい」と話す。

同地区は昨年、基準地価上昇率が全国一の33・3%に達した。今も豪州資本などによるコンドミニアムやペンション建設はやむ気配がない。

町建築係によると、同地区の今年度の建築確認申請数は前年度比34件増の60件。03年に進出し、今年1月に総工費10億円のコンドミニアム(地下1階地上5階建て、36戸)を建設した北海道トラックス(豪州資本の日本法人)の大久保実・サービスマネジャー(33)は「需要はまだまだある。雪が解けたら戸建て6棟、マンションタイプ1棟を建設する予定。豪州からの問い合わせも多く、この先何年かはこのペースを続ける」という。

だが、同地区の面積は1平方キロメートルしかない。建物を高層化させれば羊蹄山を望む景観は乱れ、土地いっぱいに床面積を広げれば屋根に積もった雪が隣家や道路に落下する恐れがある。このため、町はリゾート会社を含む住民側と協議し、昨年4月、宿泊施設が密集する一部を「倶知安の美しい風景を守り育てる要綱」に基づく「景観形成地区」に指定。今年4月にはさらに別の2区画を指定する予定だ。

景観形成地区は▽建ぺい率40%以下▽建物の高さ16メートル以下▽敷地内に除排雪のスペースを設ける――などの内容だが、罰則規定はない。倶知安観光協会は「建築のスピードに(規制をかける)手続きのスピードが追いつけない。とりあえずルールを作ることに意義がある」と説明。町企画振興課は「将来的には条例による規制も考えている。利害関係のために後回しにしたら投資家に荒らされ、国際リゾート地を目指すことはできなくなる」と懸念する。

ひらふ地区と、約10キロ離れた町中心部の商店街との“格差”も深刻な課題だ。倶知安商店連合会(約100団体)は、町全体を網羅した商店街マップ4000枚を作製。同地区の飲食店などに配布したり、英語の話せる職員を雇って商店街の案内センターを設けてきた。だが、商店街でクレジットカードが使える飲食店は1割に満たず、買い物の不便さが解消できていない。

同連合会の稲村幸彦理事長(52)は「外国人投資家を招いて研修会を開いたり、店の看板に英語を増やすなど、努力はしている。だが、各店舗によって温度差が大きい。せっかく客が来ているのだから、商店街が一体となって呼び込みをしないと効果は上がらない」と嘆く。

◇ポリシー持った街づくり着手を−−札幌国際大・成澤教授
環境が激変するひらふ地区で、将来に向けて今、何が必要なのか、札幌国際大観光学部の成澤義親教授(観光マーケティング)に聞いた。

ひらふ地区では、豪州だけでなく、シンガポールや香港などアジアの英語圏地域や欧米から足を運ぶ人も増えてきた。スキー場の集客増は今後もしばらく続くだろう。持続可能な国際リゾート地にするため、ポリシーを持った街づくりの着手が早急に求められる。

地価の上がり方や土地の狭さを考えると、不動産ビジネスはそろそろ限界がくる。規制をかけずに短期間で乱開発が進むと、世界のリゾート地に遅れを取る。既に建設されたものは仕方ないが、罰則のない要綱だけでなく、家のタイプや色、立地などについて、できれば法的拘束力のあるルールを整備した方がいい。それが難しければ、景観に合わない建物に対する課税も考えられる。他国のリゾート地ではそうしているところもある。

また、外国人は長期滞在する人が多く、スキーだけではなく、ディスコやブティック、映画館など別のニーズを発掘することが必要だ。受け入れる側が今のうちに積極的に手を打たなければ、他のリゾート地にシフトされる可能性もある。景観などのハード、スキー以外のオプション開発などのソフトの両面を整備できるかが、勝負の分かれ目だ。
(毎日新聞)