雪崩から救出され、現地対策本部に無事下山したツアー客ら(中央)=青森市の銅像茶屋付近雪煙を吹き上げ白い津波が次々とスキー客らをのみ込んだ。青森・八甲田山系の前嶽山頂付近で14日起きた雪崩は24人を巻き込み、2人の命を奪った。熟練者がスリルを楽しむ山岳スキーは自然の猛威で暗転した。計画に無理はなかったのか、雪崩は予想できなかったのか−−。吹雪の中、消防隊員らに救助され下山したスキー客らは雪崩の恐怖におびえた。

24人は山頂付近から半日かけて北に下りる「銅像ルート」と呼ばれる約2キロの中級者用のコースを滑っていた。一行を率いたガイドの其田忠佳さん(55)は「斜面に木があったので雪崩はないと判断した。まさか上から来るとは」と振り返った。死亡した東京都北区豊島5、会社員、近藤昭広さん(39)と同世田谷区経堂4、小菅知之さん(44)は雪崩の勢いで立ち木に激突したという。「意識のない2人の体を起こし人工呼吸したのだが……」

救助された男性スキー客は「列の前の方で滑っていて背後から巻き込まれた。前のめりに倒れ雪に埋もれた」と恐怖を語った。「手で雪をかいたら頭だけが出た。救出されるまで30分ほど雪に埋もれたままだった」

救助には偶然近くで滑っていた豪州人7人と米国人ガイド1人の計8人も加わった。豪州でスキーパトロールを務めるロス・マクスウィニーさん(44)らは「助けようと夢中だった。みんな1カ所に集まり、埋まった人を掘り起こそうと手で雪を掘っている人もいた。寒いので大きな穴を掘り、助かった人たちを入れた」と振り返った。救助作業をした地元スキーガイドの平井義隆さん(27)は「雪崩は幅約25メートル、長さ200〜300メートル程度」と推測する。「今回北側斜面で発生したが、先週末に東側の斜面が表層雪崩を起こしていた」

青森地方気象台によると、11日午前7時22分〜13日午前4時36分、県内全域に雪崩注意報が出され、14日も雪崩直後の午前11時10分に同注意報が発令された。同日は銅像ルートでスノーボードツアーも予定されていたが常設コースに変更された。山頂付近では90年3月にも表層雪崩でスキー客1人が死亡している。

スキーの判断は適切だったのか。スキー客を募集しガイド5人が所属する酸ケ湯温泉(青森市荒川)の関係者は「スキーを実施するかどうかはガイドの判断で、スキーの腕前は相当なものだ。朝の時点では少し風が強い程度で厳しい天候だとは思わなかった」と話した。

◇健康志向ブームで、冬山登山やスキー愛好家増える
登山の専門家によると、ここ10年ほどの健康志向ブームで、中高年を中心とした冬山登山やスキー愛好家が増えているという。東京と九州に支部がある「鵬翔山岳会」の安達重輝代表(63)は「冬山の怖さを知らず、山スキーを安易に考える人も多い」と話し、「今年は日によって寒暖の差が激しく、特に雪崩が起きやすい状況になっており、十分な注意が必要だ」と指摘する。

「月刊スキージャーナル」を発行するスキージャーナル社の編集局長、加藤雅明さん(48)は「八甲田山は普段安全で、山スキーでは入門的な場所。雪崩が起こることは極めて珍しい。風が強かったことはあったようだが、予測は難しかったと思う」と言う。
(毎日新聞)