経営難のため今年4月に廃止された山形市の蔵王温泉クリニックが23日、冬季間限定の診療所として再開した。冬の蔵王観光にとって、診療所の有無は観光客の入りに直接響く大きな存在。引退した81歳の医師が、診療所復活を切望する地元の熱意に応えた。

クリニックは蔵王温泉地区で唯一の医療機関。山形市健康福祉医療事業団が1997年から、一度廃業した診療所を引き継いで運営した。

ピークには年間約4500人が来院したが、地元住民の診療所離れや、スキー人気の衰えで利用者は年々減少。昨年は維持費を賄いきれず、夏季診療(4月〜11月)を休止した。今年4月になり、事業団は「地域医療の役割は終わった」として廃止を決めた。

この判断に悲鳴を上げたのが観光業界。昨冬、観光客の受診者は、前年より237人多い1049人。患者全体(1307人)の8割を占めた。重傷率が高いといわれるスノーボード愛好者の急増で、医療機関の存在感はむしろ増している。

小中学校の宿泊のスキー教室や、パックツアー誘致の面でも、医療機関不在は、大きなマイナス材料になるという。

市観光物産課は「日本有数のスキー場を抱える蔵王温泉の安全・安心確保に、診療所は不可欠」として、蔵王温泉観光協会と対応を検討。「観光医療」の視点から、医療機関復活を決めた。

医師探しは難航したが、2003年から昨年まで、同クリニックで冬季診療を担った山口博三医師(81)が「地元の人が困っているなら」と、承諾した。山口医師は山形市内で30年以上、整形外科医院を開業。閉院後は「冬季間だけ」という条件で、03年から昨冬までクリニックに勤めてきた。

再開したクリニックは、山口医師の個人医院の形で運営する。市と観光協会が、500万円ずつ補助。クリニックの事務長も観光協会内部から送り込んだ。月、水曜は休診。今後、休診日の診療システムをどう構築するか、市と観光協会が検討するという。

山口医師は「蔵王の診療所の必要性は、医師なら誰でも分かる。住民に頼りにされて医療ができるのは、医師として大きな生きがい」と話している。
(河北新報)