アクロス重信◇夏の練習に一流選手、国内唯一の公認ハーフパイプ
トリノ冬季五輪で注目を集めたスノーボード・ハーフパイプ競技。五輪代表選手のうち成田童夢(どうむ)、今井メロ両選手を含む数人は東温市西岡にある日本最大級の屋内スノーボード場「アクロス重信」で練習を重ねてきた。夏でもウインタースポーツを楽しめるユニークな施設だ。なぜ雪の少ない県内にあり、国内の第一人者らが集るのか。人気の秘密を探った。

■国内最大級のゲレンデも
アクロス重信は99年にオープン。県内でスキー場やゴルフ場を運営する「久万総合開発」(久万高原町東明神)が経営している。国内唯一の全日本スキー連盟公認の屋内ハーフパイプ(全長100メートル、幅13メートル)がある。そのため、夏場の練習場を求めて国内外から一流選手が集まる。成田、今井両選手も父親に連れられて、夜遅くまでジャンプの練習をしてきた。

屋内施設としては国内最大級のゲレンデ(全長90メートル、幅45メートル)もある。室内を氷点下5〜10度に冷やして霧状の水をまき、良質の雪を維持している。05年の1年間にはレジャー客ら約6万人が利用した。

■魅力の格安料金、全国から若者
ひしめき合う20個のテント。洗濯ロープにぶら下がるスノーボードウエア。カレーのにおい。夏になるとアクロス重信の敷地内はまるでキャンプ場。シーズンオフに少しでも上達しようと全国各地から若者らが集まる。パイプには100人以上が列を作り、20分以上も順番を待つこともあった。

国内ではハーフパイプの知名度はまだ低く、競技収入だけで生活できる選手はほとんどいない。夏場に雪を求めてカナダやアルプスへ合宿するのには相当の経費がかかる。アクロス重信は1カ月3万5000円で滑り放題。4カ月ずっと利用すれば総額7万円とさらに格安となり、選手には魅力的だ。県外から東温市に引っ越し、アルバイトをしながら遠征費をためる人もいるという。

■北国に負けぬ練習場所を
「愛媛のどこでスキーをするの?」。ハーフパイプ設置を発案した同社専務の田村信介さん(48)はアルペンスキーの選手だったころ、そう聞かれたことがある。愛媛県チームの監督として冬季国体に4回出場したが、北海道・東北の選手の強さを思い知らされた。「練習場所の豊富な北国に負けたくない」という思いが募った。

田村さんは故郷の久万高原町に戻り、同社に就職。アクロス重信の建設計画についての会議で「スノーボードはまだ知名度はないが将来性がある」とハーフパイプ設置を提案。高野宗城社長が「面白そうだ。やってみよう」と決断した。

■次の五輪では県出身選手を
「おまえ、もうテン(空中3回転)できるな」。飲み物を片手に中高生5人の会話が弾んでいた。全員が幼いころからアクロス重信で練習を積んでいる。ハーフパイプからは、県内出身の有力選手が育ちつつある。高校生以下を対象にした国内最高レベルの大会「全日本ジュニア選手権」では、過去4回のうち、県出身者が3回も優勝している。渡部耕大選手(17)と青野令選手(15)はナショナルチームに入った。

「アメリカは強い」。トリノ五輪をテレビ観戦した彼らの率直な感想だ。4年後のバンクーバー冬季五輪で愛媛出身選手のジャンプが世界を驚かせるシーンがあるかもしれない。
(毎日新聞)